85:コブシの重さ。馬鹿の覚悟。
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「迎えにこようとしたのが…悪いって?」
「!!」
割れた地盤から立ち上がろうとする東条に、タンは目を見開いた。
普通の人間ならばもう動けないはずだ。
思わず口が半開きになってしまう。
東条はゆっくりと立ち上がる。
体の前面は傷だらけで、出血も見当たった。
「悪かねぇ。悪いのはオレ達から勝手に因幡連れてったおまえらだ」
そう言ってタンを指さす。
「墓なんざいらねぇ。死ぬ予定は入れてねーからな」
体についた土埃を払い、タンを睨む。
恐れるものは何もない獣ような瞳に、タンは不意に一歩下がった。
「…おまえ本当に゛、に゛んげんか?」
人間というより、東条自身を理解しきれていなかった。
タンの額に冷たい汗が浮かぶ。
「あれを受けて立ってられるとは…」
自身と同じ悪魔を相手にしたこともあったが、立ち上がった者は少ない。
「いいから。続き、しようぜ。来な」
コブシを握りしめ、戦意喪失どころかやる気になっている。
挑発的に手招きすると、タンの額に青筋が浮き上がった。
「誰が行ってやるかよ…!!」
歯を噛み合わせたまま笑みを浮かべ、右腕を勢いよく振り下ろした。
「!!」
ズン、と霜が張り付いたところから重みが伝わる。
「う…!!」
東条は歯を食いしばって踏み止まり、圧し掛かる重力に耐えた。
ギシギシと骨が軋む音が内部から聞こえる。
「ムリするな゛。骨゛が外れそうだろ」
「てめ…っ!! こんな力に頼らずにかかってこいよ!!」
「いやだ。せっかくもらった力を使わずどうする。これさえあれば、オレは最強!! 最強!! 最強!!」
重力が増し、それでも東条は堪え続ける。
腕と腹の霜は両脇まで拡大していた。
傷口のから流れる血は体を伝わず、重力に負けてボタボタと床に落ちる。
「最強…? ただの…、見かけ倒しのビビりだろ」
つまらそうな視線と放たれた言葉に、ブチ、とタンの血管が切れた。
「……そろそろだな゛」
タンは軽く払うように右手のひらを上にあげた。
「?」
瞬間、身体が軽くなった。
霜は未だに張り付いたままだが、力が解放されたようだ。
浮くんじゃないかと思うくらい体が軽い。
そして、異変は起きた。
「…!? ガハッ!!」
だが、内部が締め付けられるような痛みを覚えたかと思えば、息苦しくなり、その場で喀血した。
「ゴホッ!! が…っ!」
膝と手をついた東条の口から吐き出された血が、床に飛散する。
「!? ごほっ、ごほっ」
「ちゃんと人で安心したぞ。精神や体は丈夫の゛ようだが、な゛かみはそうはいかな゛い。急激な゛変化に゛耐え切れず、臓器を破裂・損傷させる。プロの゛ダイバーも、深く深く水中に゛潜って地上に゛出た途端、ショック症状を引き起こす。似゛たような゛もの゛だ」
「何言ってっか…、ごほっ、わっかんねーよ…」
手の甲で血を拭う東条だったかが、視界が歪んで見える。
「わからね゛ーまま、死ね゛」
タンは再び能力を発動させた。
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