85:コブシの重さ。馬鹿の覚悟。
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時間が数秒と経過していくにつれ、左腕に張り付いた霜が徐々に拡がり、左肩まで覆ってきた。
東条は右手でそれを払おうとする。
だが、
「!?」
わずかにこびりついただけで右手にも霜が拡がった。
(払えねえ…!!)
タンは東条をの右腕を指さし、大口を開けて笑う。
「ははは!! 右手も奪ってやったぜ! そいつを払い落とすの゛はムリだ! 霜はどんどん増殖していく…! 身体を蝕む病原菌の゛ように゛!!」
「ぐっ!!」
両腕が床に叩きつけられる。
同時に額を床に打った。
「みっともね゛えカッコウだな゛。さぁ、どうする? 別に゛このままぺしゃんこに゛してやってもいいんだぜ!?」
「だったら…、てめーを先に沈めたら剥がれるのか!?」
額から血を流しながら、東条は気力で立ち上がって床を蹴り、右腕を振りかぶってタンの顔面目掛けコブシを振るった。
タンは余裕の表情を浮かべたまま、そこから微動だに動かず、代わりに小指を目前に立てる。
「!!?」
ピタリ、と小指にコブシが受け止められた。
東条は歯を食いしばって力を込めるが、タンの小指はまったく角度を変えない。
タンにとっては赤子より弱い力が小指にかかっているのだ。
「霜が張り付いている部分は、重くすることも、軽くすることもできる」
口元に笑みを浮かべて説明したタンは、小指を曲げる力だけで東条のコブシを払いのける。
風船のように抵抗力もなくなり、東条は後ろによろめいた。
「次はそこだな゛」
ゴッ!!
「っ!!!」
タンのコブシが東条の腹に打ち込まれた。
高く上がった東条の身体は天井に打ち付けられる。
腹を殴られ、付着した霜。
それはさらにタンに優勢を与えたことになる。
「ニ゛…ッ」
天井から落下してくる東条を見上げ、タンは突き立てた親指を下に向けた。
すると、床に引っ張られるように落下速度が上がり、
ドン!!!
東条の身体が床に叩きつけられた。
地盤は割れ、粉塵が舞い上がる。
「墓を立ててやるから怨むな゛。あの女゛を迎えに゛こようとした、おまえらが悪い」
せせら笑うタン。
うつ伏せに倒れた東条の指がぴくりと動いた。
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