84:譲れない闘いなのです。
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「うらぁ!!」
「おっと」
顔面目掛け斜めに振るわれた神崎の回し蹴りを、ダッチは背を反らして避ける。
「避けんな!!」
「いや無茶言うなし」
先程から神崎の攻撃を避け続けてばかりだ。
体力を削られている神崎の額には汗が滲んでいる。
いくつもの青筋を浮かべた神崎はコブシを握りしめ、ダッチの顔面目掛け突き出した。
「うお!」
首を傾けてかわすダッチ。
「あっぶねあぶねー」
「避け続けてんじゃねーよ! てめーからも来いコラ!! からかわれてるようでムカつくんだよ!!」
指をさして怒鳴る神崎。
いつまでも一方的では終わりが見えない。
ダッチはヘラヘラと笑いながら返す。
「いやいやー、せっかくのバトルなんだし、もうちょっと遊ばせてくれよぉ」
「ふっざけんな遊びじゃねーんだぞこっちは!!」
時間がない。
神崎は焦っていた。
早くしなければ因幡の命が危ういのだ。
ここで時間を食っている場合ではない。
「うん、まー、焦るのもわかるぜ。早くしないとお友達が死んじゃうもんなぁ」
いつまでも茶化すような態度のダッチに、神崎は怒りが抑えられない。
「ならとっとと道譲れや!!!」
椅子を踏み台に、飛び蹴りを食らわせようとした。
ダッチは笑みを絶やさず、左腕で防ぎ、右手を伸ばして神崎の顔面をつかんで床に叩きつける。
「う゛っ!!」
その状態のまま、神崎に覆いかぶさった。
「譲れねえんだよ、こっちも。ジジ様に復活してもらわねえと、魔界と人間界が潰せねえだろ? オレはその瞬間が見たくてな…。××の世界がゴミみたいに散るさまを…ぐっ!!」
神崎の右膝がダッチの腹にめり込む。
押しあがってきた吐き気を堪え、腹を左腕で抱えて神崎から離れた。
「こっちだってなぁ…、譲る気なんて一切ねえよ…。あいつを守れないことが、世界が滅ぶより大変なことだからな」
その意志に応えるように、左肩の王臣紋が光った。
鼻血を手の甲で拭う神崎のこめかみから血が伝い落ちる。
睨み合い、ダッチは失笑した。
「陳腐だ。実に。×××な気分だ。…後悔するぜ!?」
冷めた目を向けられ、神崎は身構える。
ダッチはジャージのポケットに手を突っ込んだまま微動も動かない。
瞳は依然、赤いままだ。
「……!」
ダッチの影から、シャボン玉のような泡が浮かび上がった。
ふわふわと浮かぶその中は、無数の極小の氷の結晶がキラキラと舞っている。
まるで、オモチャのスノードームのようだ。
(シャボン玉…?)
思わず、違った意味でも目を奪われる。
「キレイだろ…? 見た目はな!」
「!!」
ダッチの視線が神崎の背後に向けられていることに気付き、はっと振り返ると、左肩のすぐ傍に、その泡が至近距離まで来ていた。
「くっ…」
パァン!!
避けようとしたが、引き寄せられるように動いた泡は、神崎の左肩に触れて割れた。
瞬間、泡に触れた個所が高熱に襲われる。
「があっ!!?」
左肩部分の服は破け、露出した左肩は火傷を負っていた。
「ぐ…!!」
右手で押さえ、ダッチを睨みつける。
ダッチは余裕の笑みを浮かべ、人差し指で神崎を指した。
「負わせる傷は酷いもんだ…。火傷かと思うだろうが、それ、凍傷だからな?」
泡を割る割らないはダッチの意思次第のようだ。
手のひらで転がして弄んでいる。
「人間界にも触れたら火傷するドライアイスってものがある…。これはその泡バージョンだと思えばいい。威力はドライアイスの比じゃねーけどな」
“フロストバブル(弾け焼く泡)”
「遊びの時間は終わり…。シナリオはこうだ。勇者パーティーは全滅。お姫様も儚く散り、天国でお仲間と再会しました。はい、おしまい。そんな幸せなハッピーエンドもありじゃね?」
「なしだ!!」
即答する神崎は、怖気づかずダッチと向かい合う。
「オレを月に送るか、てめーを天国に送るか…。面白すぎてオレが×××しちまいそうだよ…!」
「勝手に××してろ…!!」
泡の群れが神崎に飛んでくる。
それでも神崎は一歩も引かない。
因幡への扉はもう目の前なのだから。
.To be continued