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最初に中央の入口に入った男鹿は、ベル坊とともに1本道を進んでいた。
入口を塞がれて壁を壊そうとしたが、“ゼブルブラスト”で空けた時には他のメンバーの姿はなく、階段も消えていた。
前に進むしかないのだ。
「あいつらどこに…」
「ダブ…」
どれほど歩いたかはわからない。
辺りに気を配りながら歩を進める。
道は歩くほど徐々に扇形に広がっていく。
「!!」
すぐ隣の人影に気付き、コブシを構えた。
「誰だ!?」
振りかぶり、動きを止める。
壁に映っていたのは、自分自身だからだ。
驚いた顔をしている自身の視線とかち合う。
「か…、鏡…?」
まるで遊園地のミラーハウスだ。
上下左右の壁に、自身とベル坊の鏡像が映っている。
「アイー。アブー」
ベル坊は楽しんでいるのか、鏡の自分と睨めっこしていた。
「遊ぶなベル坊。…チッ。驚かせやがって…」
舌を打った男鹿は先を急ぐ。
通過した際、鏡の壁に映る男鹿の鏡像が、一度立ち止まる。
先を行く男鹿とベル坊の背中を見送り、不気味に笑う。
「あれがベルゼバブ…。拍子抜けであるな…。他の連中も接触した頃か…」
*****
進んだ先にあった扉を潜ると、そこは広いエントランスホールとなっていた。
東条は「む?」と目の前の人影に立ち止まる。
そこには、腕を組んで待ち構えているタンが立っていた。
「待ちくたびれたぞ」
「待たせた覚えなんてねーけどな。おまえ、敵か?」
「見てわからな゛いか?」
東条はニッと笑い、コブシを鳴らす。
「さぁな…。コブシ(こっち)に聞いてみるまでだ。急いでんだけどよ、ちょっとケンカしねーか?」
*****
「…扉?」
邦枝が道の先に見つけた木製の両開きのドア。
おそるおそるドアノブをまわし、中へと入る。
そこは、ダンスホールとなっていた。
「ここは…」
バタン、と力強くドアがひとりでに閉まる。
「見事なものでしょう?」
「!!」
ダンスホールの奥から現れたのは、フロリダだ。
コツ、コツ、とハイヒールの音を鳴らし、立ち止まると同時に腰から取り出した皮鞭で床を叩いた。
「ジジ様は、自らの本邸と『うさぎ小屋』を融合させたの。外見は『うさぎ小屋』だけど、中はそれ以上に広いわよ」
(敵…ね、どう見ても…)
邦枝は木刀を構え、切っ先をフロリダに向ける。
「…あら? ヤる気ぃ? お嬢ちゃん」
フロリダは鞭を握りしめた手の甲を舐めた。
「いいわよぉ。おねーさんが、イケナイこと…、調教(おし)えてあげる」
*****
姫川は辿り着いた空間を見回す。
「…図書室か」
壁や平行にずらりと並んだ本棚。
膨大な量の本だ。
タイトルは魔界の文字で書かれている。
あまり使われている形跡はなく、部屋の中はほこり臭い。
「シロト脱走事件はここがきっかけだとか言われています」
「!!」
本棚の間を通過すると、すぐ傍の本棚の上に人影が現れた。
「初めまして。お会いできて、ライラックはとても嬉しい」
ライラックが姫川を見下ろし、あざ笑うかのように笑う。
「……どちらさまだ?」
「薄々気づいているのでしょう?」
そう言われて確信にかわる。
(……古市が言ってた、『バッドパーツ』のやつか)
姫川はライラックから目を離さず、腰のスタンバトンに手を伸ばした。
「陽動作戦はあなたが考えたとか…」
「ああ…、のってくれてありがとよ」
姫川は口端をつり上げ、挑発的に返す。
ライラックは笑みを崩さない。
「ククッ。…そんな生意気な舌は、めった刺しにしてしまいましょうか」
取り出したのはナイフの柄。
それで油断する姫川ではない。
後ろにじりじりと下がり、ライラックから距離を置いてスタンバトンを取り出した。
「時間がねぇ。やるならやろうぜ」
*****
広い部屋の中心に置かれた長テーブル。
白いテーブルクロス。
食堂であることが窺える。
部屋の中心にはロウソクが点々と置かれ、席に座っていれば料理が運ばれてきそうだ。
神崎は奥のテーブルに腰掛けているダッチを見つける。
ダッチは行儀悪く椅子に足を投げ出し、青リンゴを食べていた。
食べながら待っていたのか、青リンゴは半分以上食べられている。
「おー、やっと来た来た」
目の端で神崎を見たダッチは、食べかけの青リンゴをテーブルに置き、背伸びをしてから椅子の上に立った。
首を傾けてゴキゴキとならし、手を開いたり閉じたりと運動する。
「待ちくたびれちまったぜ…」
「どう見ても、敵だよな、てめーは」
「そうそう。えー…、仲間のところに向かいたければ、オレを倒してゆけ! ってか? へへっ」
ふざけたように言ってひとりで笑っている。
苛立ちを覚えた神崎は一歩前に出た。
「望み通り、月の彼方までブッ飛ばしてやらぁ」
「オレ、月とか一度行ってみたかったからちょうどいいや。…月ってマジでウサギいるのかガキの頃から気になってたんだ」
先手必勝。
神崎はテーブルに飛び乗り、ダッチへと突進する。
「行儀の悪ぃ、××な兄ちゃんだ」
ダッチの瞳が赤く染まり、戦闘モードになった。
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