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氷塊に包み込まれたうさぎ小屋。
庭には太い氷のイバラが生え、うさぎ小屋を持ち上げていた。
氷は城の形を成し、天高くそびえたっている。
鉄の柵の門を潜り抜けた男鹿達は、身動き一つすらしないイバラの中を進み続けた。
「王様がいるところは決まってんだ。さらに気ぃ引き締めてけよ」
姫川は城を見上げながら言った。
男鹿は「言われなくても」と返す。
「ここのイバラ、なんで動かないんだ?」
東条は疑問を口にする。
いつでも襲ってきても迎え撃てるように構えていた。
神崎も見回しながら「逆に気味が悪ぃな」と呟く。
「おい」
「「「「!」」」」
先頭を歩いていた男鹿は立ち止まり、東邦神姫に声をかけた。
氷のイバラの先には、ぽかりと大口を開けた氷の洞穴のようなものがあった。
城の真下にある、おどらく出入口だろう。
侵入されたくなければ閉ざしておくことも可能なはずだ。
男鹿達を誘っているようにしか見えない。
「…こうあからさまだとな…。入ってくれ、罠だから、って言われてるようにしか見えねえぞ」
姫川は小指で色眼鏡を上げ、呆れるように言った。
「…別ルートから入ったほうがいいんじゃない?」
「賛成だ。なんなら壁をよじ登っても…」
邦枝と神崎が言い出した時だ。
「おじゃましまーす」
「ダブー」
「勝手に入んぞー」
「「「おぉい!!!」」」
男鹿、ベル坊、東条が遠慮なく突き進んだのでつっこむ神崎達。
手を伸ばして引き止めようとしたが、すでに男鹿達は洞穴へと足を踏み入れている。
「敵さんが案内してくれてんだ。乗ってやろーぜ」
「ああ。こっちの方が近道だろ」
東条と男鹿が呑気に言い、神崎達は脱力感を覚える。
「ったく、うちのバカ共は…」
そう言いながらも、先に姫川が動き、神崎と邦枝もそれに続いた。
薄暗い洞穴の先には、氷の階段が存在した。
男鹿達は慎重に上へ上へと上がる。
螺旋階段となっていて、氷に滑って真ん中に落ちないように気を付けて進んだ。
前から、男鹿、東条、姫川、邦枝、神崎の順番だ。
「階段はもう飽きた」
最後尾の神崎が面倒臭そうに呟く。
その呟きは氷の壁に反響して男鹿達全員の耳に届いた。
「文句言わないの」
「もうちょっとでてっぺんだから我慢しろ」
「……そのてっぺんなんだけどよぉ…」
先に到達点を発見した男鹿。
視線の先には、5人分の入口が存在した。
人ひとり通れる穴だ。
「―――おまえら、どれだと思う?」
東邦神姫は思わず足を止めた。
“入口はひとりにひとつ”
5つの入口の上に刻まれた文字。
最初に入ってきた時より露骨だ。
「…ひとりにひとつって…」と神崎。
「オレ達を分断させる気だな」と姫川。
「……全員ひとつに入ることってできないの?」と邦枝。
そこで最初に動き出したのは男鹿だ。
ベル坊を肩にのせたまま、中央の入口に入る。
「わざわざしたがってやることもねぇ。おまえら、こういう時は真ん中が当たりだって…」
言いかけた瞬間、男鹿が入った入口が、入口の縁から飛び出した無数のイバラによって塞がれた。
「「「「!!」」」」
「男鹿!!!」
「ひとり通ると塞がれるのか!?」
邦枝と東条が驚きの声を上げる。
「おい!!」
戸惑っている余裕もなかった。
神崎が何かが連続して割れるような不吉な音に振り返ると、氷の階段が最初にのぼってきたところから徐々にスピードを上げて砕けていく。
「ほら見ろやっぱり罠じゃねーか!!」
「ちょっと! 押さないでよ!!」
後戻りもできない。
ここで落下してしまえばひとたまりもないだろう。
「冷静に考えてるヒマはなさそうだ…!!」
意を決し、姫川は東条を近くの穴に入れさせるために背中を押した。
「おっ!?」
東条は右端の穴に入れられる。
途端に氷のイバラに遮断された。
「姫川!!」
姫川の行動に神崎は声を上げる。
「行くしかねーんだ!! 必ず因幡んとこにたどりつけ!!」
そう言って右から2番目の穴へと自ら足を踏み入れる。
「そうするしかなさそうね…。神崎も気を付けて」
階段の崩壊はすぐそこまで迫っていた。
邦枝は急ぎ足で左から2番目の穴に入る。
「クソ!!」
神崎は塞がれた4つの入口を睨み、空いている最後の左端の穴へと飛び込んだ。
同時に、階段は完全に崩れ、砕け散った。
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