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「クソ!! 一度頂上にたどりついてる分、またのぼるのがスゲーメンドクセー!!」
男鹿は文句を言いながら頂上を目指して、神崎達とともに階段を駆け上がる。
一行はイバラをかわしながら高層ビルの半分以上を上がっていた。
奇襲当初はあれだけいた卯月の姿が一人も見当たらない。
建物内にいる者もジジのイバラによって全滅させられ、ジジの魔力として吸収されてしまったのだろう。
「どわぁ!!」
壁からいきなり飛び出してきたイバラに神崎は驚きの声を上げながらも前に飛んで避ける。
邦枝は木刀を腰から引き抜き、行く手を阻むイバラを一振りで輪切りにした。
「おい!! 後ろやべぇぞ!!」
背後の気配に気づいた姫川が叫び、足を止めずに振り返ると、後ろから氷のイバラが何百本も群れをなして押し寄せてきた。
追いつかれれば終わりだ。
相手をしてもキリがないだろう。
「走れ―――!!!」
東条が掛け声をあげ、さらに足を速めた。
ほとんど数段飛ばしだ。
「もっと急げ!!」
神崎は遅れているコハルの手首をつかんで引っ張った。
普段走り慣れていないコハルは、息を弾ませながら男鹿達についていこうと必死に走る。
「ダッ!!」
ベル坊は階段の先を指出した。屋上へと続く出口だ。
「もうすぐだぞ!!」
男鹿は肩越しに神崎達を励ました。
ドアを開け、氷漬けになったうさぎ小屋の前に到達する。
「早く出てこい!!」
男鹿が促すと、東条、邦枝、姫川の順番で屋上の出入口から屋上へと出てくる。
「神崎!!」
姫川はコハルを引っ張って遅れている神崎を促した。
イバラは2人のすぐ後ろまで迫っている。
「く…っ」
神崎はコハルの手首を放さず、歯を食いしばって出入口を目指す。
そんな後ろ姿を見つめ、コハルは微笑んだ。
「神崎君…」
「!!」
「これでいいのよ」
優しい声色で言ったコハルは、屋上への入口を前に、神崎の手を振りほどき、すぐに神崎の背中を突き飛ばした。
「な…!?」
神崎は肩越しに振り返ったまま、ドア付近にいた姫川に倒れる前に受け止められる。
「桃ちゃんをお願い」
「待―――」
神崎は手を伸ばしたが、コハルはカードを取り出し、発動させる。
“クライムカード-オブストラクション”
大きくて頑丈な分厚い氷塊が出現し、数ミリの隙間さえ許さず出入口を塞いだ。
押し寄せる氷のイバラを防ぐために。
コハルはひとり氷塊の向こう側だ。
逃げ道はどこにもない。
ズン、と内側から氷塊に氷のイバラの群れがぶつかり、氷塊や周りの壁に微かなヒビが刻まれたが、それ以上男鹿達を追ってこなかった。
新たな氷の塵が空へと舞い上がり、玉座へと風に乗るように流れていく。
「………うそだろ…」
神崎は目を疑うようにそれを見送った。
手を伸ばしても、もう塵の欠片すらつかめない。
怒りのあまり叫びたくなるのを、ぐっと堪える。
「…止まるんじゃねぇ」
「!」
姫川は両肩をつかんでしっかりと神崎を立たせた。
「簡単な話だ、神崎」
「オレ達が全部助けちまえばいいだけだ」
男鹿達は振り返らない。
すべてを奪おうとしている元凶の根城はすぐそこだ。
「ああ。超簡単だ」
神崎も後ろを振り返らず、前へと踏み出す。
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