82:もう一度、殴り込みましょう。
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男鹿と東条が座り込んで眠りだした頃、
“―――そして今、その計画の終盤に来たってわけだ”
なごシリが歴史を語り終えると、フユマはうつむいて歯ぎしりし、コブシを強く握りしめた。
「全部…、オレ達一族を騙してたってことか…!! 自分の子孫だぞ!?」
“だからこそ、器にぴったりなんだよ。自分の目と耳で一族の監視ができるし、親は女なら誰でもよかったんだ。子どもだって、自分と血さえ繋がっていればなんでもいい。日記の執筆者も、たまたま知って日記を残すことには成功したが、動き過ぎたようだ。そのまま後世に託した”
コハルとなごりはその日記を読み、別の選択を選んだ。
コハルはシロトを生涯をかけて自分の代で終わらせるために逃走を、なごりは完全に復活させるために自らの手でジジを殺すことを。
“まだ間に合うよ。契約者たちを救うのなら…”
「けど、中には入れないよ」
ユキが、触れたら氷漬けにしてしまう氷のイバラのことを指摘する。
“それなんだけど…”
「んあ?」
「アイ?」
男鹿とベル坊はその異変に起こされるように目を覚ます。
「!」
男鹿、東条、邦枝、神崎、姫川はほぼ同時に異変を覚えた。
男鹿のゼブルスペルと、神崎達の王臣紋が微かに温かく光っているからだ。
「コレは…」と男鹿。
「共鳴…してるの?」と邦枝。
“あっちも行動を起こしたようだな。心配してたけど、因幡桃はキミらを頼るみたいだ”
「「……………」」
神崎と姫川は顔を見合わせる。
“王臣紋で光ってるのは5人。蝿の王を入れて6人までが、あの氷城の奥に入れるようだ。因幡桃がジジの中で自分を保っていられる限りは……”
「…へっ、ようやくあいつ、オレらの手を借りるようになったか。素直にそうしろっつーの」
やれやれ、と神崎は肩をならす。
“ただし、あくまでジジが作り出した空間を微力ながら抑えるだけだ。奥にたどりつくまでイバラが襲ってくるよ”
なごシリは忠告する。
「イバラだろうがアバラだろうが、オレ達の通行の邪魔してきたら蹴散らしてやるだけだ」
「ダブ!」
男鹿とベル坊は怯まず、強気に出る。
東邦神姫も、立ち向かうために氷の城と向かい合った。
神崎は気合を入れるためにヨーグルッチを飲み、姫川はスタンバトンに異常がないか確認するように伸縮させ、邦枝は木刀を一振るいし、東条はコブシを鳴らした。
「私が奥まで導きましょう。あなた達には体力・魔力を温存してもらわないと」
「「「「「!!」」」」」
名乗り出る声に全員がそちらに振り返る。
「おふくろ…!!」
現れたコハルに春樹は声を上げた。
ジジの監視を警戒して動けずにいたコハルが駆けつけてきたのだ。
赤く腫れた目元が痛々しい。
名乗り出たコハルに、フユマはその両肩を強くつかむ。
「ダメだ、そんなの!! コハルちゃんもなごりと同じく日記を読んだならわかってんだろ!? 奥までこいつらを導いたとしてどうなるか!! 無事に帰れると思ってんのか!?」
「……フユマ」
コハルは真っ直ぐな目でフユマの必死な瞳を見据え、フユマの右手に手を添えて優しく微笑んだ。
「もう…、逃げたくないの」
逃げたことで、どれだけフユマを傷つけてしまったか、フユマの喉元の古傷に視線を移す。
「私に何かあっても大丈夫…。桃ちゃんのお友達がいる…」
「…それならオレ様も…!!」
「おねがい、ここで待ってて。卯月がこれ以上吸収されるわけにはいかないの」
「…おねがい」とコハルは懇願する。
「……………」
「…ちゃんと帰って来れる?」
そう尋ねたのは日向だ。
コハルはそちらに顔を向けて頷く。
「ええ。桃ちゃんを助けて、全部終わったら、必ず」
「……待ってるよ」
引き止めることなく日向は送り出そうとした。
春樹は慌てて日向の肩をつかんで責めて立てる。
「親父!! 話聞いてたのかよ!! おふくろがもしかしたら…」
「春樹」
「って!」
ゴツ、と手の甲で額を打たれた。
地味に痛いので、春樹は額を両手で押さえ、「なにすんだ」と睨む。
「妻を信じるのが夫、母親を信じるのが息子だろ。てめーの母親は信じる価値もない人間か?」
そう言われてしまえば返す言葉もない。
「オレ達も援護に回るっちゃ?」
「てめーらは他の役割にまわれ。七大罪クラスが取り込まれたら完全に詰むぞ」
「!!」
「禅さん…!!」
「禅さん!?」
早乙女の登場に、東条に続き、日向も声を上げた。
早乙女はタバコを吸いながら、氷の城を見上げる。
「殺六縁起は全員集合だ、クソッタレ。侵食を出来るだけ抑えるために、結界を作るぞ。…ヒュウ、ケガを負ってるとこ悪いが、おまえは他の連中をできるだけ離れた場所に避難させてくれ」
「…わかりました」
懐かしい呼び名に心を震わせながら、日向は避難させる前によろめく体で神崎と姫川に歩み寄り、その肩に手を置いた。
「オレじゃ何もしてやれねぇ。けどな…、勝手で悪いが、手ぶらで戻ってきたらてめぇら絶対許さねぇからな…!!」
まるで脅すような口調だ。
本当は力づくでもコハルを引き止めたいのだろう。
「当然だ」
「今度は逃げねぇよ」
「「絶対連れて帰ってくる」」
力強い言葉に日向は小さく笑う。
「…ついでに、てめぇらも無事に帰ってこい」
そして、バン、と励ますように強めに2人の背中を叩いて送り出した。
「行くぞてめぇら」
「「「「おう」」」」
「アイ、ダブリッシュ!」
コハルを先頭に、男鹿とベル坊、東邦神姫が氷の城と化した摩天楼に乗り込んだ。
.To be continued