81:ウサギの王様が復活しました。
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はっと気が付けば、姫川は卯月の会社の北の出入口の前にいた。
「姫川!!」
「やっときたか!!」
「姫ちゃん!!」
神崎、城山、夏目が駆け寄ってくる。
鮫島が転送した先は、北口に集中していた。
先に転送された、フユマ、男鹿とベル坊、ユキもそこにいる。
「遅かったじゃねえか!! 何してたんだ!?」
自分が転送されてすぐに来ると思っていたのだろう。
心配していた神崎は姫川に詰め寄る。
「……………」
「おい、あの赤髪どこ行った。勝手に断りもなく次元転送しやがって」
鮫島の独断に腹を立てた男鹿は辺りを見回すが、鮫島はいない。
続いて先に転送されたフユマが歩み寄った。
「そうだ。あいつどこ行ったんだ」
「……………」
「………鮫島はどうした…?」
押し黙る姫川に、神崎達の不安が募った。
「……黙ってねぇで答えろよ…。おい!! 鮫島はどこだって聞いてんだよ!!」
両手で姫川の胸倉をつかんだフユマは、焦燥のままに姫川に問い詰める。
「……察しろよ」
「―――っ!!!」
姫川は軽い力でフユマの手をどかした。
フユマはガクリと両膝をつき、虚ろな瞳になる。
「……んだよ…。どいつもこいつも…、オレ様を孤独死させる気かよ…!! これ以上オレ様から大事なモン奪ってくんじゃねえよ!!!」
高層ビルを仰ぎ、涙を浮かべながら訴える。
誰も声をかけられず、ユキもうつむいて静かに泣くしかなかった。
「…おまえらに話がある。とにかく今はここを離れ……」
フユマに一瞥した時だ。
フユマの真上から何かが降ってきた。
「おい!!」
「!? うわ!!」
間一髪で男鹿がフユマを抱えてそれを避ける。
地面に突き刺さったそれは、ジジの氷のイバラだった。
生き物のように蠢き、狙いを定めてユキへと伸びる。
「!!」
ユキに絡みつく前に、降ってきた人影が氷のイバラを切り落とす。
その姿に男鹿は人物の名を呼んだ。
「邦枝!!」
「連絡を受けて戻ってきたわよ!」
「せっかく上までのぼったっつーのによー」
文句を言うのは、巨大な獣と化したコマちゃんの背中に跨る東条だ。
屋上で邦枝と合流し、コマちゃんに乗って高層ビルの壁を駆け下りてきたところだった。
「なんで背中に跨ってくれへんのやろー」とコマちゃんは愚痴をこぼしている。
「しかも重いしこいつ」
「邦枝、おまえのペットすげーな」
「ペットじゃないけどね」
「なんかやらしい響きやな。葵ちゃんのペット…むふふ」
「黙りなさい」
冷たい一声で一蹴する邦枝。
「ぎゃあ!!」
「ひぃぃ!!」
「うわあああ!!」
次々とどこからか悲鳴が上がる。
男鹿達が高層ビルを見上げると、屋上から徐々に高層ビルが凍りついていた。
ビルの壁を這う無数のイバラは、不気味に蠢きながら蜂の巣をつついたように逃げ惑う卯月の者をとらえては氷漬けにして塵と化す。
塵は上空を舞い、屋上へと集まった。
ジジに取り込まれているのだろう。
まさに惨状だ。
「!!」
氷のイバラは男鹿達にも襲いかかる。
「こっちにも目ぇつけやがった!」
「触れるなよ!! 今度は石像どころじゃ済まされねーぞ!!」
“人間は特に注意した方がいいよ。魔力持ってないからイバラのトゲに触れたらそのまま氏ぬぜ”
「だ、そうだ!! 人間は特に…ん?」
どこからか声が聞こえた。
姫川は疑問に感じたが、構っているヒマはない。
それよりも問題は、人間の命を奪うという事実だ。
男鹿ははっとする。
「他のメンツは!!?」
東西南北にはまだ石矢魔のメンバーが残っている。
石矢魔のほとんどは人間だ。
「男鹿!!」
東条が叫ぶと同時に、男鹿の目前に氷のイバラが迫る。
「まずい…っ」
「とーたん!!」
トゲが眉間に当たる寸前、横から氷のイバラが蹴飛ばされた。
現れたのは、鷹宮と奈須だ。
「他に気ぃとられてやられそうになってんじゃんよ、男鹿っちゃん」
「おまえら…!!」
「他の連中なら気にするな」
ここは北口。
他の出入口では殺六縁起たちが石矢魔の生徒を守っていた。
「林檎!?」
「ぼさっとしてんじゃないよ!! 早く逃げな!! こいつばかりはアンタ達の手におえないよ!!」
東口では林檎が烈怒帝留を、
「陽動は十分じゃ。このままここにおれば、卯月の奴らみたいになるぞ」
「…どうやらそのようだね。引き上げるよ」と稲荷。
「因幡はどうなったんだ…」と豊川。
西口では市川が黒狐を、
「家族を助けたいのはわかるが、巻き込まれたくなきゃ早く行け」
「く…っ」
「親父、神崎さん達が帰還したなら桃姉と桜姉も…」
南口では赤星が因幡親子を避難させる。
王臣達は援護しながら誘導した。
卯月達だけでなく、東西南北を守っていた『バッドフラグメント』まで氷漬けにされてしまった。
目の当たりにした夏目達は疑問を浮かべる。
「あいつらまで…」
高層ビル全体がイバラで覆われると、地震のような揺れに襲われた。
「今度は何だ!?」
屋上から太い氷のイバラが何千本も生えた。
それらは絡み合い、形を成していく。
「あれは…!!」と邦枝。
「マジかよ…」と神崎。
誰もが大口を開けて屋上を見上げた。
卯月達の魔力を集めて成長した無数の氷のイバラは、『うさぎ小屋』を包み込んで大きな城をつくりあげた。
「城…。…王様気取りやがって…!!」
男鹿はビルの上にそびえ立つイバラの城を見上げた。
自ら作り上げた新たな玉座に腰を下ろして足を組んだジジは高らかに笑い、赤黒い瞳で前を見据える。
「貴様は来るはずだ。ベルゼバブ…。必ず…―――」
.To be continued