07:傷より痛いものって?
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「皆さん、ごきげんよう」
これが小学校時代の因幡。
誰もが振り返る清楚な美少女だった。
小学5年までは。
「皆さん、ブッ転がします」
これが小学5年の因幡。
彼女が変貌してしまったきっかけは、些細な喧嘩だった。
友達が男子に泣かされたことを聞かされた因幡は、友達を泣かした男の子を注意するために、教室に赴いて教卓の前で向かい合う。
「武藤君! 今すぐ花子ちゃんに謝ってきて!」
「うるせぇ! いつまでもお高くとまってんじゃねーよ!」
「きゃっ!」
突き飛ばされ、因幡は尻餅をついた。
「やーい、パンツ見えてやーんのー!」
「…っ!」
恥をかこうとも因幡はその場で泣かず、立ち上がって同じく突き飛ばそうと両手で押した。
しかし、所詮は女の力。
体格の大きな武藤は倒れず、嘲笑し、再び因幡を突き飛ばした。
「よっわー! やっぱりお嬢様だな」
ガーン、とショックを受ける因幡。
武藤は手を伸ばし、その髪をつかんで引っ張った。
「っ! 痛い!」
「女で弱いクセに口出ししてんじゃねーよ!」
この一言が後に彼女の運命を変えようとは、武藤君自身も思っていなかった。
1週間後、ずっと引きこもっていた因幡が学校に姿を現せた。
その姿に、誰もが愕然とした。
腰まで長かった黒髪は肩まで切られ、指定のスカートではなく、ズボンをはいて登校してきた。
顔つきもたくましくなっている。
学校に着いた因幡はまず武藤の教室に向かった。
当然武藤も愕然となる。
「因幡…?」
「ごきげんよう、武藤君」
次の瞬間、武藤の顔面に因幡の右足がめり込んだ。
武藤の体はスピンしながら吹っ飛び、机が次々と倒れる。
教室内は騒ぎになり、因幡は冷ややかな目で伸びている武藤を見下ろし、笑みを浮かべた。
「まあ、なんて…、見事な転がりっぷり」
それを見た同級生達は、皆、戦慄した。
中には恐ろしさのあまり泣きだす生徒もいた。
1週間。
たったの1週間で因幡は喧嘩の才能を開花させてしまった。
ただひたすら不良ドラマを見続け、格闘系の雑誌を見ただけで。
元々、体育はいつもトップクラスだった。
特に脚力を使う競技はすべてダントツ。
ズボンをはくことにはなんの躊躇いもなかった。
3つ下の弟のズボンはぴったりだった。
髪は自分でムチャクチャに切り、母親に整えてもらった。
この事件以来、因幡は新たな自分に目覚め、日々喧嘩に没頭し、力をつけていった。
喧嘩にのめり込むほど友人は減り、気がつけば孤立していた。
小学校の卒業式は、本人の中では苦い思い出となっている。
それでも因幡は喧嘩をやめなかった。
昔の自分を否定するように、今の自分を見せつけるように、それを続けた。
そして、因幡桃、中学2年。
彼女を悪化させる事件は起きた。
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