81:ウサギの王様が復活しました。
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自身の新たな手のひらを見つめ、因幡の顔でジジは口元を歪ませる。
「……ふふ…ははは…、ハハハハハハハハハ!!!」
口から発せられた高笑いは、因幡の声でも、なごりの声でもなかった。
「待ちわびたぞ、この時を!! ようやく取り戻したぞ、我の身体!!!」
一歩踏み出せば、踏み込んだ足を中心に床が凍りつく。
ジジの身体から漏れだす冷たい魔力が徐々に空間に広がった。
「……逃げろ…」
こぼしたのは鮫島だ。
ジジから目を逸らさず、体を震わせている。
「うまく言えないほど…ヤバいぞ」
ジジを覆う魔力が不気味に笑っているように見えたからだ。
「おお!」
「ついに…!」
「ついにジジ様が復活なされた…!!」
「ジジ様! 我らとの契約を…!!」
大広間の壁際でずっと傍観していた卯月の者達が騒ぎ立てる。
これでジジが出した条件をすべてそろえたことになるからだ。
その先に待っているのは、自分達に対する褒美。
ジジは妖しく笑った。
「よかろう…。契約通り、我は貴様ら卯月の願いを叶えるとしよう」
歓喜の声が上がった。
だが、ジジが両腕を広げた次の瞬間、腕から伸びた細長い氷のイバラが卯月達に絡みついたからだ。
「!?」
「ひ!?」
「な、何を…!!?」
「うわあああ!!」
氷のイバラのトゲが肌に食い込んだ個所から、卯月達の身体が氷面に覆われ、やがて完全に氷漬けとなって塵となって砕けた。
「「「「「!!!??」」」」」
男鹿達は目を見開いた。
砕け散った氷の塵は、誘われるようにジジの身体に入り込む。
「我とともに、叶えようぞ」
「あいつ…!! 魔力を吸収してるよ…!!」
膨れ上がったジジの魔力にユキは声を上げた。
「我らだけの世界を創造する時がきた…!! 人間界と、魔界の頂点に立つぞ!!! さあ、貴様の魔力もよこせ、ベルゼバブ!!!」
“コキュートスソーニパス(蝕み滅す茨道)”
背中から飛び出した無数の氷のイバラは地面と壁を這い、這った場所を凍りつかせながらスピードを上げて男鹿達に迫る。
「男鹿!! 狙いはてめーだ!!」
姫川は怒鳴るが、男鹿はベル坊の魔力をコブシに集めて“ゼブルブラスト”を放とうとしていた。
「ベル坊!!」
「ダッ!!」
電撃がコブシに纏う。
「“ゼブル…―――”」
しかし、放つ前に鮫島はその手首を右手で強くつかんで止める。
「!?」
「待て!! 相手は魔力を吸い取って物にしているんだぞ!! 魔王の魔力なんて与えたら…!!」
ジジは舌を打った。
「余計なことを」と苛立ちを見せる。
男鹿はジジを一瞥してから鮫島を睨んだ。
「じゃあどうしろっつーんだ!? あいつブッ倒さねーと、因幡も取り戻せねえんだぞ!!」
相手が融合したのなら、意識を奪うことで引き剥がせるはずだ。
それでも鮫島は力強く握りしめた手を放さない。
「だからそうすれば相手の思うつぼだ!! 蝿の王の契約者のくせに鈍いんじゃないのか!?」
「ああ!?」
馬鹿にされた男鹿は鮫島の胸倉をつかむが、ユキが割って入る。
「仲間割れしないでよこんな時に!!」
「おい!! イバラが来るぞ!!」
姫川が声をかけると、全員の視線がそちらに移る。
氷のイバラは量を増し、うねうねとヘビのようにうねり地面を這いながら男鹿達の足下まで迫った。
「今は逃げろ…!! おそらくあの氷のイバラに触れたら終わりだ!!」
「あ、待」
止める前に男鹿とベル坊は鮫島の右手によって外へと次元転送された。
「走れ!!!」
鮫島はなごりのスマホを拾って神崎達に叫び、共に走り出す。
「因幡…!!」
神崎は一度立ち止まってジジに振り返ったが、姫川はその手をつかんで引っ張った。
「必ず助け出すぞ!! ここでつかまっちまうわけにはいかねえだろ!!」
「…くそっ!!」
姫川が一喝し、神崎の足が逃走を目標に速くなる。
大広間を飛び出し、神崎達は真っ直ぐに人間界へと通じるドアへと猛進した。
大広間から、不吉な高笑いが響き渡る。
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