06:病院ではお静かに。
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「ほれ」
「あー…」
病室を覗くと、神崎の口に姫川が食事を運ぼうとしているのが目に映った。
ピロリーン♪
どこかで聞いた写メの音に、神崎は口を開け、姫川は食事を運ぶ手を止めたまま出入口に顔を向けると、携帯をこちらに向ける因幡が立っていた。
携帯を閉じた因幡は頭を下げる。
「お邪魔しました」
そのまま帰ろうとする。
「待てやぁ!!」
「勘違いして去るな!!」
状況の理由が、神崎は利き手が使えないため、仕方なく(←ここ強調)姫川が食事を与えていたとのこと。
話を聞きながら、因幡は神崎のベッド脇にあるパイプ椅子に腰かける。
「メシの度にそんなことしてたのかよ」
なんという因幡母ホイホイ。
最近病院での2人のことを話すとイキイキして筆の進みも速くなっている。
「隣でナースにやってもらうのは見ててムカつくからよ」
「いつそんな状況になった!? スプーンやフォークだと扱いづらいんだっての!!」
怒鳴る神崎に、部屋の前を通過した看護師から「騒がないでください」と注意されてしまう。
「それより怪我してるじゃねーか。ケンカか?」
姫川は因幡の頭に巻かれた包帯に気付いて言う。
包帯のせいで髪も下ろされてしまっていた。
「ああ、これ? 喧嘩してる時、邦枝につけられた傷口が開いちまってさぁ。血まみれでここに入ったら、ごついナースに取り押さえられて包帯巻かれた」
目に浮かぶ2人。
「つーか、邦枝とやりあったのかよ!?」
神崎は驚きの声を上げ、因幡は苦笑した。
「決着はつかなかったけどな。また今度話す。…ほら、見舞い品」
籠にのせられていたのは、リンゴ3個とヨーグルッチとブラックコーヒーだ。
他のフルーツは全て「バルス」の犠牲になったとは言えない。
「リンゴだけ…」
リンゴを手にとって見つめる姫川。
「いや、ちゃんとヨーグルッチとコーヒーがついてるぜ」
神崎は取られてなるものかとヨーグルッチを手にとった。
「…おまえ、一体どんな喧嘩を…」
姫川は呆れながら因幡に聞こうとしたが、当の因幡は、
「すー…、すー…」
神崎のベッド脇に伏せて眠っていた。
「…疲れてたのかもな。やりきった顔してるぞ」
「こいつは…」
「…!」
そこで神崎は因幡の後ろ首に妙なものを見つけた。
火傷の痕だ。
それは背中まで伸びている。
「……………」
神崎は姫川と顔を合わせ、姫川は人差し指を自分の口に当てた。
「聞かない方がいい」
「……そうだな…」
神崎はその頭に手をのせ、軽く撫でた。
「起きたら…、うさぎリンゴ切ってもらわねーと…」
*****
そんななか、病院の向かい側の建物から双眼鏡を片手に、それを窺っている者の影があった。
東邦神姫の神崎と姫川。
そして、眠る因幡。
男は嗤う。
「随分と可愛くなったじゃん…。桃ちゃん」
神崎と姫川が退院するまで、あと数日。
波瀾まで、あとわずか。
.To be continued