79:誰の為のウェディングですか?
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待合室に迎えが来た。
ドアノブが回された瞬間、神崎達だと期待したが、ドアが開かれれば落胆がのしかかる。
本館にいる、卯月の男達だ。
黒のローブを身に纏い、椅子に座ったままの因幡に近づき、男達の中のひとりが手かせの鎖をつかんだ。
「間もなく婚礼の儀です。準備を」
「ぐあ!」
なごりに言いかけている途中、因幡は手かせの鎖をつかんだ男を蹴飛ばした。
威嚇するように睨むが、男達はじりじりと近づいてくる。
まるで追い詰められた獣のようだ。
「野蛮な…!」
「取り押さえろ!!」
男達が因幡に一斉に飛びかかった。
対抗する因幡だったが、力は制限され、相手は蹴っても蹴っても起き上がってくる。
その内、ひとりが因幡の手かせの鎖をつかみ、3人がかりで因幡の背中を押さえつけた。
「靴を脱がせ!!」
「シロト!!」
シロトの力が発揮できないよう無理やり右靴を脱がされてしまう。
(シロト…!!)
呼びかけても、シロトは答えない。
聞こえているはずなのに、無視されて背中を向けられているようだ。
「シロトはこっちで預かる」
なごりは手を差し出し、シロトの宿った右靴を受け取った。
シロトは嫌がる素振りを見せずに手の中におさまっている。
因幡は男達に起こされ、手かせの鎖を強く引っ張られて部屋の外へと連れて行かれそうになった。
「なご…! おまえ本気で…!!」
「……………」
すれ違う前に踏み止まり、因幡はなごりを責める。
なごりは口元に笑みを浮かべて因幡と目を合わせるだけだ。
「玉座へ。オレもあとで行く」
「なご!!」
「おとなしくしろ!!」
「暴れないように拘束の魔言を強めておけ!」
「ここで台無しにされては困るのだ!」
卯月が興味あるのは婚礼の儀の先だ。
無数の手が因幡をつかみ、ドアの外へと連れ出す。
扉が閉まり、部屋にはなごりひとりとなった。
廊下ではまだ騒ぎ声が聞こえる。
それに耳を澄ませ、再び椅子に腰を下ろし、足を投げ出した。
着慣れないスーツなのできつそうにネクタイを緩める。
「やれやれ。仲間さえ現れなきゃ、もっとうまく丸め込めたのに…。―――…シロト、おまえは何も悪くない。迷う必要なんてないんだ」
“……………桃…”
“これでいい。裏切者にならなくていいのだ。人間など、滅びてしまえばいい。我らの目的は変わらん”
なごりの内側からクロトが慰める。
「……オレ達の世代で、終わらせよう。何かを残すために」
なごりは目を伏せ、クロトの依代を入れた胸ポケットに触れた。
宙を見る眼差しに、迷いはなかった。
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