79:誰の為のウェディングですか?
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「あ?」
うさぎ小屋に足を踏み入れた途端、男鹿は立ち止まった。
うさぎ小屋の中は、霧のような白いもやが立ちこもっていた。
「なんで屋敷ん中に霧が…」
「やられたな」
呟いたのはフユマだ。
面倒臭そうに頭を掻き、ため息をつく。
「とーたん!」
「!!」
ベル坊に声をかけられ、男鹿ははっと周りを見回す。
静かだと思えば、一緒にいたはずの、桜、神崎、姫川、鮫島、ユキの姿が見当たらないのだ。
しかも、エントランスに続く扉を潜ったはずなのに、いきなり廊下に立っていた。
入ってきた扉は、明らかに入口の扉ではない。
「あいつらもいねぇし…、ここ、どこなんだ、オッサン」
「オッサン言うな。館の中だが、2階だ。これは、なごりの魔言だな」
「…あ」
この状況に、男鹿はあることを思い出した。
因幡とともに棄見下町に行った時だ。
町には濃霧が漂い、古市とはぐれた男鹿は目的地にたどり着かず散々町の中を走り回っていたのだ。
(……あれ、あいつの能力だったのか)
そういえば『ノーネーム』にいたな、となごりの顔を思い出す。
「人間を彷徨わせるための魔言だ。ケガをすることはないと思うが、これはかなり時間をとられるぞ」
フユマは廊下の先を見据えて言った。
*****
神崎がドアを開けると、そこは書斎になっていた。
再び閉じて開けると、今度は食堂になっている。
ふぅ、と息をついてドアを閉め、後ろにいるユキに振り返った。
「ドアの先も、廊下の先もデタラメだな」
「これがなごちゃんの魔言だよ。すごいでしょ」
「あのな、おまえも罠にかかってんのに褒めてんじゃねえよ」
呆れて言い返すと、ユキはその場に両手両膝をついて目に見えるほど落ち込んだ。
「…おい、どうした?」
その様子にぎょっとしながらも神崎は声をかける。
「そんなにボクに来てほしくないのかな…。そんなにあの女と結婚したいのかな…。ボクがこんなに愛してるのになごちゃんっっ」
床をコブシで何度も叩くユキに、神崎は一歩下がった。
(なんなんだよこいつ)
わかりやすいほどなごりのことを好いていると見た。
しゃがみ、悔しげにしているユキに尋ねる。
「何、おまえ、なごのこと好きなのか?」
「好きじゃない。愛してる」
「わざわざ重いワードを持ってくるな;」
「ボクは、ある日、卯月にとっていらないものになった…。でも、なごちゃんだけは手を差し伸べてくれたんだ。こっちが辛くなるくらい大事にしてくれた…」
女から男になっても、なごりは突き放さずに傍にいてくれた。
ユキは涙ぐむが、手の甲で拭って神崎を見る。
「こっちが命を捨ててもいいくらい大好きな人、キミにはいるの?」
「……………」
その質問に心臓が大きく跳ね、脳裏をよぎったのは姫川の顔だ。
はっとした神崎は顔を赤らめ、浮かべたことを払うように首を横に振った。
「!!」
ユキがこちらを見つめ、ニヤリ、と笑っている。
「…いるの?」
「いねぇよ!!!」
立ち上がった神崎は足早に歩を進める。
「さっさと他の連中探すぞっ」
「えー、教えてくれたっていいじゃん。誰? 誰?」
「うるせぇ!! いねぇっつってんだろ!!」
「えー。その顔は「いる」って顔じゃない。こっそりボクに教えてよ。誰にも言わないから」
「うっとしい!! 女子かてめぇは!!」
「元、ね♪」
「?」
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