78:家族愛と友情を甘くみないよう。
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真っ逆さまに上空から降ってきた下川は、自身の頭がブトウの頭に直撃したあと、「グ…ッナイ……☆」と微笑みを浮かべたままそのまま地面に落ちて気絶した。
「痛っでえええええ!!」
ブトウは打った頭を抱えてしゃがみ込んだ。
命中したところから大きなコブが膨れる。
予想もしなかった事態に夏目達も驚きを隠せなかった。
「なんで上空から降ってきたんだ?」
城山は空を見上げて疑問を口にする。
「痛でぇよおおおおっ!!」
(打たれ弱いな。そしてうるさい…)
見た目によらず涙目で痛みを訴えるブトウに陣野は内心で呟いた。
「チャーンスッ!」
痛みに悶えるブトウを見逃すはずもなく、相沢は走り出し、サッカーボールを狙うように右足を振り上げた。
「!」
しかし、ブトウの右顔半分に氷が纏い、蹴りを防がれてしまう。
「~っ! あれれ…?」
鈍い痛みが相沢の足を襲う。
「おめぇら、不意打ちなんざ卑怯じゃねえか!!」
氷を纏ったコブシが相沢の胸を狙って突き出した。
両腕でガードした相沢だったが後ろに吹っ飛び、地面に倒れる前に手をついて受け身をとる。
「やれると思ったのに…」
足の痛みに耐えながら口元を引きつらせる。
陣野は疑問を感じた。
「…?」
(しかし、さっきは…。…………)
傍にいる相沢と、気持ち良く気絶している下川を見比べる。
「…夏目!」
「!」
ブトウの能力を考察した陣野は夏目を呼び戻す。
夏目は城山に肩を貸し、ついでに下川の足首をつかんで引きずり、一度ブトウと距離をとった。
一度受けたダメージが屈辱だったのか、ブトウは興奮気味に怒りを露わに騒ぐ。
「何をくっちゃべってんだクソ共!!! オラを怒らせやがって!! ひとりひとりスイカみたいに頭潰してやろうか!!!」
そろそろ殺しにかかってくるだろうブトウに焦りを覚えながらも、陣野は早口で夏目達に考察を伝えた。
当然、ブトウには聞こえない声で。
「……それ、ハズレだったら終わりじゃねーの? あっち、すごい殺気立ってるけど」と相沢。
「可能性にかけるしかないだろ…。このままだと全滅だ」と陣野。
「オレはやるぞ」と城山。
「…面白そうじゃない」と夏目。
陣野が導き出した考察から、ある作戦が立てられた。
4人がほぼ同時にブトウに振り向く。
ブトウはコブシを鳴らしながら夏目達に備えた。
「なんだその目は…!! ちょっと不意打ち食らわせたくらいで調子に乗ってんじゃねえだろうな!!? クソッ!! コブができてる!! 死ねっっ!!」
「鬱陶しいくらいデカい声だな」
相沢の言葉にブトウは「生まれつきだほっとけ!!!」と地面を蹴って向かってきた。
「きたぞ。さっき話した作戦通りに動け!」
陣野、相沢、城山が、ブトウを中心に三角形になるように囲んだ。
「んん!?」
ブトウは立ち止まり、3人を見回す。
「囲んでも無駄だ!! バカかおめぇら!!」
嘲笑うが、城山達は同時に攻撃に移った。
陣野はブトウの腹を肘鉄で狙い、城山は背中をコブシで狙い、相沢は右スネを右脚で狙った。
当たる寸前、狙った場所が氷で覆われる。
ガンッ、と3人の手足に痛みが走った。
「死ねよ!!」
まずは目の前にいる陣野の頭に食らわそうと右のコブシに氷を纏わせる。
本気で殺す気なのだろう、コブシに纏う氷の量が多い。
そして振り上げた瞬間、
「!!?」
ブトウの視界が黒で覆われた。
城山の背後から現れた夏目が、脱いだ自身の学ランをブトウの顔に被せたからだ。
すぐに外れないように袖同士を結んで縛る。
「いっちょあがり!」
「な!? なんだ!? 前が見えねぇ!!」
「いくぞ!!」
城山が声をかけると同時に、城山、夏目、相沢、陣野はコブシを振るい、ブトウの体を殴りつけた。
ゴッ!!!
「っっっが…!!!」
城山は背中に、陣野は腹に、相沢は脇腹に、夏目は右胸に当てる。
確かに肌にめり込んだ。
ブトウは両膝をつき、その痛みに耐えきれず「痛い痛い」と悶える。
陣野は、伝わった人間の感触に自身のコブシを見つめ、「やはり…」と口にする。
「こいつ…、相手が自分のどこに当てるのか予測してないとその部分をガードできないようだな」
痛みに悶えていたブトウが、ギクッ、と動きを止める。
わかりやすい。
「全身をガードすることも無理みたいだ」
続けて夏目が口にすると、また、ギクッ、と体を震わせた。
本当にわかりやすい。
「……違うし」
「声ちっさくなったぞ」
今までで聞いた声で一番小さな声量だ。
否定しても無駄だとわかったのか、ブトウは苛立ち混じりに唸り声を上げた。
「~~~っ!! そうだ!! オラの持つ魔力だと全身は難しいんだよ!! 顔なんて全部覆っちまったら窒息しかけるし!! だから!! これ以上の力を手に入れるためには22代目の力が必要なんだ!!」
学ランを被せられているので声がこもっていて聞こえづらい。
「そっちの都合でしょ?」
ブトウの前でしゃがんだ夏目は小首を傾げ、学ランごとブトウの頭をつかんで無理やり上を向かせた。
「いだだだ!! 痛い!! オラ痛いの嫌ぇなんだよ!!」
思う通りガードできなければ呆れるほどの弱腰だ。
「…これくらいなにさ…。誰も悲しませず、自分だけが傷つく道を選択した因幡ちゃんの痛み、わかる? つまんないことほざくなよ」
「っ!!」
視界が塞がれたというのに、目の前から伝わる殺気にブトウは委縮する。
「あ、次、腹に当てるよ」
「!!」
咄嗟に腹を氷で覆うブトウだったが、
「うそだよ」
ガンッ!!!
強烈な膝蹴りがブトウの顔面にめり込んだ。
ブトウはそのまま後ろに倒れ、ピクピクと痙攣しながら気を失った。
「あーあ、これ、洗わないとね」
ブトウの顔から血で汚れた学ランを取った夏目は、苦笑しながら城山に言った。
「おまえ…、えげつないな」
「えげつないことしたのは、こいつらだよ」
口元に笑みを浮かべながらも冷めた目でブトウを見下ろす。
「う~ん…。おや? ここは?」
背後の声に振り返ると、一時的に気絶していた下川が目覚めた。
何が起こったのかわからず、辺りを見回している。
「なんだかとても頭が痛い」
ブトウとぶつかった頭には大きなコブができていた。
「気が付くの早いな」と相沢。
「今回はお手柄だったな」と陣野。
「???」
わけがわからず、とりあえず「グッナイ☆」のポーズはとっておく。
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