78:家族愛と友情を甘くみないよう。
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北口では、夏目・城山・陣野・相沢が、北口の護衛であるブトウと交戦中だった。
衝撃を与えたとしても、肌が氷で覆われるブトウの能力の前では傷一つ負わせることもできない。
殴ればこちらがダメージを受けてしまう。
成す術はないものかと夏目達は考える。
「どうしたぁ!? 殴らせてやるからどんどんこい!!」
“クリスタルスキン(防ぎ壊す肌)”
ブトウはわざわざ手を動かしてガードする必要もないと強調するように両腕を広げた。
「っ…」
ぽたぽたと夏目のコブシから血が流れ落ちる。
(体の硬化…。わかりやすいけど厄介な力だ…。こういう奴らを相手にしてるわけか…、男鹿ちゃん達は…。オレは、柄じゃねーのに、ここにいる…)
苦笑を漏らし、ゆっくりと周りを見回した。
硬化されたコブシで殴られたり、体当たりされたり、城山、陣野、相沢の体は痣だらけでボロボロだ。
城山は腫れた右目で見えにくそうにブトウを見据え、相沢は頭から流れ出る血を手の甲で拭い、陣野は割れた眼鏡をついに足下に捨てた。
息も荒く、それでも諦めず立ち向かおうとブトウを睨みつけている。
夏目も殴られた頬の痛みに顔をわずかにしかめながらも、口角を上げ、ビルを見上げた。
(仲間の為だと思ったら、熱くなっちゃうよねぇ。オレ達も同じだよ、因幡ちゃん)
仲間である因幡の為―――石矢魔を突き動かすには十分な理由だ。
因幡と共に日々を過ごした夏目と城山はその思いで負けるわけにはいかない。
そんな思いを踏みにじるかのようにブトウは鼻で笑い、小声でも聞こえる距離だというのに声を張り上げた。
「まったくクセェ仲間ごっこに熱くなってんじゃねえよ! 何を誤解してるか知らねえがあの女は自分からこっちに来たんだぜ!? おめぇらがわざわざくるなんざ! 向こうにとっちゃぁありがた迷惑だろうよ!!」
「……………」
夏目は何も言い返さず、じっとブトウを見つめる。
「あの女も所詮はオラ達と同じ! 人間共を越えた存在を受け入れ! 金も名誉も世界も全部手に入れて未来永劫一族とともに遊んで暮らしたいのさ!! 価値のねぇおめぇらなんてな! とっくにお払い箱なんだよ!!」
瞬間、ブトウの横面目掛けコブシが突き出された。
「!」
ブトウの右頬を氷が覆う。
鈍い音が響き渡るが、ブトウはノーダメージだ。
それでもコブシの主は、流血しようともブトウの頬を殴ったままだ。
「貴様が…っ」
殴りつけたのは、城山だ。
怒りで震える声で言い放つ。
「何も知らない貴様が、因幡を低く語るなっっ!!! 撤回しろ!!!」
ズン、と氷に覆われた左膝が城山の腹を蹴り上げた。
「っっ!?」
前のめりになる城山に、容赦なくブトウは組んだ両手に氷を纏わせて硬度を強化し、城山の背中に振り下ろす。
ガンッ!!
「っぐあ!!」
「城ちゃん!!」
「城山!!」
衝撃に耐えきれず、地面にうつ伏せに倒れた城山。
「ハエがぶんぶんうるせぇぞ!!」
地面に唾を吐き捨てたブトウは右足に氷を纏わせ、城山の頭を踏みつける。
岩で殴られているような感覚だ。
「デカい図体は見かけだけかよ!! しょーもねぇ!!」
何度も背中を踏みつけるが、城山は立ち上がろうとする。
「撤回…しろ…」
「チッ! しつけぇな!!」
「っ…」
爪先で腹を蹴り上げられ、再び城山の巨体が崩れる。
だが、
「……因幡を……返せ……」
地面に手をつき、城山はゆっくりと身を起こして立ち上がった。
頭の流血が止まらず、シャツを汚す。
城山の諦めの悪さに、ブトウの顔にいくつもの青筋が浮き上がった。
「あの女の為だ!! おめぇらが2度とこっちに来れねえような場所に送ってやる!!」
コブシに氷を纏わせ、城山目掛け振るった。
立っているだけでもやっとの城山には避けることもままならない。
「!!」
ブトウのコブシは、間に割り込んだ夏目に蹴り上げられた。
「夏…目……」
「オレだって、因幡ちゃんのこと、こんな奴に安く見られたくないんだよね」
口元に笑みを浮かべるが、目は笑っていない。
「どいつもこいつも…!! まとめてあの世に」
「「あ」」
そこで城山と夏目はあることに気付いた。
遮られたブトウは怒りで目元を痙攣させ、「なんだ!?」と声を上げる。
夏目達が他のことに気を引こうとしていると思ったようだ。
「オラ相手にその手は」
ゴン!!!
「「っっっ!!??」」
東口からシュンロンにブッ飛ばされた下川が、ブトウの生身の後頭部に直撃した。
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