77:昔の敵は今日のなんでしょう。
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「グッナーイ☆ 助太刀するよレディー達」
「「「「「おまえかいっっ!!!」」」」」
大森の前に現れたのは、いつもの決めポーズで登場した下川だ。
「……………」
“ヘイルズラスト”
ゴゴゴゴッ!!
「グッナナナナ゛―――ッイ!!!」
無言で刀身から雹を放つシュンロン。
氷の塊を食らった下川は遥か遠くへ飛ばされてしまう。
ギャグっぽくブッ飛ばされたので生きているだろう、と大森達は大して心配はしなかった。
それどころか空気の読めなさに呆れて言葉も出なかった。
(あいつも立派にMK5の一員ね)
「なんだったんだ、あの男は。思わずイラッとしてしまったが」
「さぁね。忘れてちょうだい」
関係者と思われたくなかった。
気を取り直して戦闘モードに戻る。
「余計な邪魔が入った」
再び刀身に氷が纏い始める。
この近距離で食らってしまえばひとたまりもないだろう。
「寧々さん! 鎖を離してくださいっ!」
飛鳥が叫ぶ。
鎖を離して逃げればダメージは少ないだろうが、大森は鎖を強く握りしめたままだ。
「……ここで逃げたら…、葵姐さんにも、由加にも顔向けできないからね…」
(男鹿にも…、古市にも…)
目を閉じ、キッ、と目つきを鋭くさせる。
「…!」
さらに力が込められ、シュンロンの顔つきが変わった。
「!」
大森も自分の異変に気付いた。
掌が熱い。
王臣紋が反応しているからだ。
それは谷村も同じだ。
掌を見つめ、淡く光る自身の王臣紋を見下ろし、強く握りしめた。
「寧々さん…、そのまま放さないでください!!」
谷村は両手のエアガンの銃口をシュンロンに向ける。
一度肩越しに振り返った大森は、谷村を信じて頷き、シュンロンに向き直った。
「無駄な…事を!!」
シュンロンは刀身を振るった。
無数の氷塊が大森に襲いかかる。
同時に、谷村は両手のエアガンを上に投げ、すぐにスカートの下に隠していたもう2丁のエアガンを取り出し、持ち替えながら目にも止まらない速さで巧みに乱れ撃つ。
王臣紋の影響で魔力が込められたBB弾は、飛ばされた氷塊にすべて当たり、木端微塵に砕いた。
「何…!!?」
シュンロンは目を見張る。
大森にはかすりもしていない。
「腕上げたね、千秋」
口角を上げた大森はすべての力を込めて鎖を引っ張った。
「ああああああ!!」
「っな…!!?」
力負けして空中に投げ出されたのは、シュンロンの方だ。
大森は勢いをつけて一回転し、
ドガッ!!
頑丈なビルの壁にシュンロンを叩きつけた。
「っっっ!!」
衝突と同時に壁は凹み、ヒビが刻まれる。
刀も手から放れてしまい、大森の傍に突き刺さった。
逆さまの大の字で壁に背中をめり込ませたシュンロンは今の現状を疑う。
「…っな…、バカ……な…っ」
人間相手に負けることはないと自負していたのだろう。
鎖を引き戻した大森は、壁にめり込んだままのシュンロンを見上げて言い放つ。
「『烈怒帝留』を、ナメんじゃないわよ」
「この……ワタ…シ……が……」
意識を失う瞬間も疑問しか浮かべることができず、シュンロンは力なく地面に落ちた。
*****
その光景を、本社から遠く離れたマンションの屋上から眺めている者がいた。
ふぅ、とタバコの煙を吐き出し、「フ…」と笑う。
「私が出張るほどじゃなかったね」
「なんだかんだで自分のチームが気になるっちゃ?」
「奈須っ!!?」
声をかけられてはっと振り返ると、いつの間にか奈須が胡坐をかいて座っていた。
「てめぇいつからそこに…!!」
「ん? 林檎っちゃんが、「なにやってんだいまったく、そろそろ行ってやろうかしら」ってタバコ噛みながらイライラしてるところから」
「死ねぃ!!!」
見られたくなかったシーンを目撃され、羞恥で顔を赤くしながら林檎は奈須の顔面目掛けて木刀を突き出したが、奈須はわずかに首を傾けてかわした。
「ツンデレだっちゃ♪」
「ブッ殺すぞ奈須!!」
「そこらへんにしておけ」
間に入って止めたのは、髪を下ろした鷹宮だ。
「こうして気にかかってきたんだ。同じ穴のムジナだろ」
「気になってないわよ!!」
林檎は顔を真っ赤にしながら否定するが、鷹宮は真顔でスルーして卯月財閥の本社を見据えた。
「…見下ろされているようで気分が悪い」
「藤で魔王争いが終わったかと思えば、まさか因幡が関わってくるとはな…」
次に現れたのは、市川と赤星だ。
共闘した縁がある以上、この件を無視するほど彼らは薄情ではなかった。
「んじゃ、いっちょ出張ってみますかっ」
奈須は屋上のパラペットに足をかけ、髪を掻き上げて言い放った。
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