76:それぞれの想い。
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「―――ということで…」
古市は姫川が立てた作戦を簡単にダッチとライラックに説明した。
それを聞いて完全に沈黙した、ライラックとダッチ。
やがて、ダッチが「ぷはっ」と噴き出す。
「ぎゃははははっ!! 完っ全にしてやられたなぁ、ライラック!!」
そのまま腹を抱えて爆笑し、ライラックの背中を叩き、古市達を見ながらライラックを指さした。
「こいつさぁ、まんまとてめーらんとこの参謀にハメられたわけっ!? マジで!? うははっ。ウケるーっ! ××しちまいそーっ!」
ツボったダッチを、古市と花澤は引き気味で凝視している。
アランドロンは、「ま、お下品なっ」と両手で口元を隠し、恥ずかしげに頬を染めていた。
「聞いてくれよー。こいつ、したり顔でさぁ~…」
言いかけた時、パンッ、とライラックとダッチの真上の電灯のひとつが割れ、地下倉庫の一部が暗くなる。
「あ…」とダッチはようやく自分が調子に乗ったことに気付いた。
目を伏せていたライラックは、古市達を静かに見据える。
「ライラックも…、ナメられたものですね…」
浮かべられた笑みは思わず悪寒を覚えるほどの迫力を見せ、漂う殺気に肌がピリピリとする。
「ぜひとも、そちらの参謀殿にお会いしたいものです」
ライラックの様子は誰の目から見ても一目瞭然だった。
ブチ切れている。
「ひっ」とアランドロンは古市の背後に隠れ、花澤も顔を青くして恐怖で小刻みに震えていた。
古市も一歩引きそうになったが、キッ、と目つきを鋭くさせて頭をぐしゃぐしゃと掻き乱してリーゼントを解く。
「どーする? とりあえずリーダーに報告するか? こいつら始末して」
「悪いが…、報告はさせない」
色眼鏡を外した古市はそれを後ろに投げ捨てた。
「あ?」
「……………」
*****
この役を買って出たのは、古市だ。
自ら挙手をし、注目を集める。
「第2の陽動、オレにやらせてください、姫川先輩」
「…相手はオレ達だと思ってやってくるから、良くて中ボスクラスだ。だから、東条か邦枝に…」
ヘタをすれば、人の命を奪いかねない連中が出てくるかもしれない危険性があったからだ。
それでも古市は食い下がる。
「東邦神姫と男鹿が一緒の方が、因幡先輩を救出できる確率が高い…。だからこそ、やらせてください。相手をあっと驚かせるなら、オレが適役かと」
「古市…」
男鹿も意外そうな顔をしていた。
「あ…、危なくなったらちゃんと逃げますんで」
古市は苦笑まじりに言った。
「…ウチもやるっス」
続いて花澤も挙手する。
「由加!?」
「由加チー!」
邦枝含め烈怒帝留も驚いて花澤に振り返った。
「古市ばっかカッコつけられないっスよ」
「「「「「それならオレ達も!!!」」」」」
MK5も揃って挙手したが、
「いやおまえらは文字通り今度こそ瞬『殺』されるからやめとけ」
姫川に一蹴されてしまう。
「……本当に危なくなったら、すぐに逃げろよ。命の保証はまったくできねーからな」
決心が揺らぎそうにない古市と花澤に姫川は警告する。
*****
「22代目シロトのために、死ぬ気か? ガキ共…。あいつは自分からおまえらから記憶を消して去っちまったんだぜ? 放っておいてやるのが…」
「…お世話になった先輩なんで…。それに先輩だって、好きでオレ達から記憶を消したとは思えない…」
悪態をつかれたことは何度かあったが、それでも自分を見捨てるようなことは絶対にしなかった。
たとえ、因幡が男であっても自らこの役を志願しただろう。
「放っておくほど、恩知らずじゃねえんだよ、オレだってな…!!」
「へぇ。エラいですねぇ。この、命知らずさんは」
(せめて、時間稼ぎになればいいが…。こいつら、強そうだな…)
男鹿ほどではないが、悪魔との修羅場をくぐってきた古市には本能でわかった。
それでも、ベヘモット柱師団を呼び出すためのティッシュを取り出す。
「パー澤さんは下がって」
「やれやれ…。貴様だけでは不安だな」
「!?」
突然アランドロンが前に出た。
その声は、聞きなれた女の声だ。
凝視していると、パカァ、と開き、すでにサーベルを手にしているヒルダが出現した。
「ふむ。直接アランドロンが乗り込めば、あとは次元転送が可能なわけか」
「ヒルダさん!!」
「男鹿ヨメ!?」
「坊っちゃまが直々に出向いているのだ。私が何もしないわけにはいかんだろう」
肩越しに古市を見、小さな笑みを浮かべた。
「ヒルダさん!! そんなにオレを心配して!!」と嬉しさのあまり両腕を広げる古市だったが、かわされた挙句にブーツでその頭を踏みつけられる。
「男鹿に頼まれてだ。私も坊っちゃまのお傍にいたかったというのに…っ」
「わぁ。実はとっても不機嫌ですね…」
殺気を纏わせるヒルダに古市の顔が蒼白になった。
「4対2だぜ。オレ、パイオツでけぇ姉ちゃんがいいな、ライラック。あとそこの花飾りの嬢ちゃん。ひひっ」
「!」
下品な笑みを浮かべるダッチに目をつけられた花澤は、アランドロンを容赦なく盾にする。
ライラックは「ふぅ」とため息をついた。
「ならば、ライラックは坊やですか」
(いける…。オレと柱師団…、ヒルダさんなら…!!)
両者が足を一歩踏み出した時、ダッチとライラックの背後にあるエレベーターが、チーン、と鳴り、ドアが開かれる。
コツ、コツ、とハイヒールの音を鳴らし、そこからフロリダが出てきた。
後ろにはタンもいる。
「あら、待ちきれないから来てみれば…」
「盛り上がってるな゛」
(仲間…!? 超エロいな、あの人…っっ)
悩殺を狙っているかのようなボンテージ姿のフロリダをガン見する古市に、ヒルダと花澤は蔑んだ視線を向ける。
「いや見るでしょう!! 健全な男子高校生ですよこっちは!!」
視線に気づいて言い訳する古市。
アランドロンは悔しそうに「きーっ」とハンカチを噛んでいた。
「あら、文句なしに美形揃いじゃない?」
クス、と妖しく笑ったフロリダは、腰から皮鞭を取り出した。
そして、その周りに無数の白いチョウが飛ぶ。
「調教しちゃって、いいわよねぇ?」
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