76:それぞれの想い。
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作戦開始前、姫川は蓮井に頼んでおいた、本社の社内案内図を黒板に貼り付けた。
「どこから手に入れたんですか」と古市は尋ねたが、明かせないルートなのか、「そりゃ言えねえな」と邪悪な笑みを返されたのでそれ以上は質問しなかった。
「社内の卯月の人間は知っているだけで3000人以上。それに、常人より強い。オレ達全員が堂々と攻め込むのはいいが、時間がかかりすぎる」
姫川は説明しながら、スタンバトンの先端で案内図を軽く叩く。
「オレがビルごとブッ飛ばしてやろうか?」
「ダブ?」
男鹿とベル坊が挙手するが、姫川は首を横に振る。
「あのな、そんなことできりゃ、苦労しねーんだよ」
「中にいる因幡までブッ飛ばす気なの?;」
邦枝もつっこむが、姫川は「それもあるが」と言葉を続ける。
「オレが鷹宮側に潜入した時にたまたま見つけたことだが、卯月の奴らは陰でソロモン商会とも敵対していたそうだ。対応するための人材と、魔力耐性の強固な壁で作られてるから、簡単にブッ飛ばすのはムリだ。それと、因幡はおそらく、頂上に建てられた館にいる」
スタンバトンの先端が建物のてっぺんを指す。
内部にはエレベーターもあるが、使用できないだろう。
乗った瞬間にエレベーターを停止される方が面倒である。
確かに時間がかかりすぎる。
「それでどーすんだ、はっきり言えよ」
今にも釘バットを片手に本拠地に乗り込んでしまいかねない日向が催促する。
「……集めた人数の大半を、陽動役にする」
姫川のスタンバトンが建物の出入口付近を丸で描く。
「陽動…!?」
古市が驚いて声を上げた。
「ああ。できるだけ卯月の奴らを出入口に引きつけろ。オレ達が因幡のこと忘れてるって信じ切ってるあいつらも、突然の襲撃に泡を食って飛び出してくるはずだ」
「それで、残りはどうする気?」
夏目が尋ねると、スタンバトンは建物の地下を指す。
「建物を詳しく調べたところ、地下倉庫がある。その下には下水道があって、そこからオレ達が内部に侵入する…―――と、相手は考える」
誰もが不思議そうな顔をする。
姫川は悪巧みの笑みを浮かべ、スタンバトンで建物の頂上を指した。
「相手にも、冷静で頭の切れる奴はひとりやふたりはいるだろ。男鹿と東邦神姫がいなきゃ、陽動を疑うのは至極当然。それで、建物の唯一侵入できる部分に注目するはずだ。そこには第2の陽動に任せる。そしてメインのオレ達は、いきなり、空から攻め込む」
「空!?」
今度は邦枝が声を上げた。
「ああ。裏の裏をかいてやるんだよ」
「はっ…。面白そうじゃねえか」
ヨーグルッチを飲み干した神崎も、その作戦に乗っかった。
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