75:それでは殴りこみましょう。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
モニタールームで苦戦する石矢魔軍団を画面で眺めるダッチは、頭の後ろで手を組み、つまらなさそうに大きな欠伸をする。
「ふわぁ~。んだよ、気張れよ××侵入者共が。マジでオレ達の出番がねーだろーが」
「出番がないなら、戻るわよ?」
フロリダとタンも自分の持ち場に戻ろうとする。
「……………」
そんな中、シルバは真剣な面持ちで東西南北の出入口に設置された監視カメラからの映像と、社内の映像を何度も確認している。
それに気づいたライラックは不審に思い、声をかけた。
「どうかしましたか?」
「…気付かないか?」
そう言われ、ライラックは画面をひとつずつ慎重に目を凝らして確認していく。
そこであることに気が付いた。
「…………22代目シロトと親しかった者の姿が、一切見えませんね」
その言葉に、部屋を出ようとしたフロリダ達が足を止めて振り返る。
「石矢魔の東邦神姫、そして男鹿…。この5人がいない」
ライラックは画面を指さしながら言った。
ダッチ達もそれらしい姿を見つけ出そうとするが、かすりも映っていない。
不参加だなんて馬鹿な話はないだろう。
ライラックは含み笑いをする。
「なるほどなるほど。そういうことでしたか…。このライラック、危うく見落とすところでした。…そこの方、至急、社内の案内図をとってきてください」
「は、はいっ」
近くにいた卯月の者に声をかけ、案内図を取って来させる。
数分後、案内図がバッドパーツの中心にある台の上に広げられた。
ライラックはわずかに前屈みになり、人差し指で案内図をなぞる。
「外の連中は、陽動でしょう。我々に対する対策が甘すぎる。もっと早くに気付くべきでしたね」
「ひとり反省会はいいからどういうことか説明しろよ。蝿の王共はどこだ?」
もったいぶるライラックに苛立ちを覚えたダッチは催促する。
「陽動担当の連中は、社内の人間を外へと引きつけ、警備を手薄にさせます。それを見計らい、メインであるはずの彼らは…」
ライラックの指先が下降していく。
指し示された場所は、地下倉庫だ。
「地下…?」
タンが尋ね、ライラックは頷く。
「さらにその地下には下水道があります。そこから入り込めば、侵入は可能なはず…。相手は、あの蝿の王ですから。陽動のおかげで彼らも侵入しやすいでしょう」
ライラックの視線がダッチに移る。
目を合わせたダッチは、ライラックの言いたげなことを察し、口端をつり上げた。
「…表の護衛様は間抜けな陽動処理に忙しそうだしな…。相手はあの有名な蝿の王。誰か強ぇ奴が行かねえとなぁ?」
「わざとらしい言い方だな゛」
「ちょっとちょっと、ライラックとダッチだけで楽しもうとしないでくれる? 私だって美味しい思いしたいもの」
フロリダは疼くように体を震わせ、舌なめずりをする。
しかし、ライラックは勝手な行動をする前に呼び止めた。
「お待ちなさい、フロリダさん。順番です。まずはライラックとダッチだけで挑んでみましょう。相手の狙いは22代目シロト奪還。人数も必ず5人とは限りませんので、もしもの時の為に、タンと共に迎え撃ってください」
「うまいこと言っちゃって…」
腕を組んで拗ねるように頬を膨らませるフロリダ。タンは素直に「わかった」と頷いた。
ダッチは「悪いなぁ。出番ないかもなぁ」と意地悪く言う。
「それでよろしいですね、シルバさん」
「任せる。我輩はここで待機し、相手の動向を見張っていよう」
シルバは画面を凝視したまま振り返らずに答えた。
そして、ライラックとダッチはモニタールームを飛び出し、足早に地下へと向かう。
「何階で待機してればいいかしら」
「すぐ1階のほうがいいだろう。早めに止めるにこしたことはな゛い」
続いてタンとフロリダも遅れて部屋を出ていった。
「……………」
シルバは無言でひとり違和感を覚える。
*****
その頃、薄暗い下水道ではライラックの言う通り、地下から侵入しようとする人影があった。
すぐ横では悪臭漂う下水が流れ、懐中電灯を頼りに道を進み、時折曲がり角で立ち止まっては先の様子を窺う。
「…ここか」
懐中電灯で地図を照らし、梯子を見上げた。
蓮井の情報によれば、この上が地下倉庫になる。
「…―――行くぞ」
すべては、因幡を救出するために。
.