06:病院ではお静かに。
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大森は階段を駆け上がり、屋上へと向かっていた。
屋上が騒がしい。
もう戦いは始まっていた。
今ならまだ間に合うか。
もしあの2人を戦わせてしまえば、勝っても大森と谷村を襲った奴らの思うつぼになってしまう。
息せき切らしながら走り、屋上の出入口が見えてきたところで、そいつらはいた。
「MK5。行き止まりー」
若干ズレて喋っているが、MK5の4人が扉の前に立ちふさがっていた。
大森は憎々しげに睨み、唸る。
「ホント空気読めない連中ね…」
しかし、武器を持っていない今の状況では大森が不利だ。
「なるほどね。こんなムカつくことするのは…、美破ね!」
石矢魔の女王の座を狙おうと、以前からちょっかいを出してきた男を思い出す。
「ご名答」
やはりズレて喋るMK5。
今、ここでやられるわけにはいかない。
そう判断した大森は踵を返し、階段を下りようとした。
「フン、アンタ達の思い通りになんか…」
「おっと」
「逃がさねーよ」
しかし、MK5の嶋村と茶藤が飛び下りて大森の行く手を塞ぎ、挟み打ちにする。
どちらからも逃げられない。
しばらく攻防戦が続いたが、武器もなしに1対4では勝ち目がなかった。
踊り場の壁に追い込まれる大森。
すると、屋上から爆発音が聞こえた。
「姐さん…」
はっと顔を上げるが、ここからでは状況がわからない。
背後から聞こえた爆音に嶋村はほくそ笑む。
「ケリがついたかな…。こっちも終わりにするか!」
嶋村はコブシを振り上げてトドメを刺そうとする。
(すみません姐さん…。あたしが、勝手なことしたばっかりに…)
成す術のない大森は、振り下ろされる嶋村のコブシにギュッと目を瞑った。
だが、そのコブシが振り下ろされることはなかった。
「やっぱこういうことか」
夏目が嶋村の手首をつかみ、止めたからだ。
その握力に嶋村は顔をしかめた。
「行きな。あとはやっとくから」
いきなり割って入ってきた夏目に茶藤が怒鳴る。
「一体どういうつもりだ!?」
「だってさ、おまえら、全然面白くない」
振り向いて言った夏目の目は、笑っていなかった。
先に大森を行かせたあと、夏目は最初に嶋村の手を離し、その腹を蹴りあげた。
「ぐあっ!」
一撃で沈んだ嶋村を見下ろし、「次は…」と中田を見ると、背後から茶藤が襲いかかってきた。
「てめ…、おぐっ!!」
背後から横腹に蹴りを入れられた茶藤は壁に叩きつけられてこちらも一撃で沈んだ。
「はぁ…。なんだよ、もうすぐ終わるんだったら来るんじゃなかった」
「あ、因幡君」
現れたのは、ポップキャンディーを咥えた因幡だった。
「せっかく来たんだ。ひとり譲れよ、夏目」
「うん、いいよ」
夏目の視線は中田、因幡の視線は武宇に向けられ、2人は「ひっ」と怯えた。
数秒後、瞬殺。
「あー…、スッキリ。さてと、男鹿ちゃん達はどうなったかな? …あれ? 見て行かないの?」
因幡が階段を下りて行こうといたので声をかける。
「オレいいわ。なんとかなりそうな気がしてきたし…。覗きの趣味もねーし」
「あはは」
因幡はふと立ち止まり、肩越しに夏目に振り返る。
「…おまえ、そんなに強いのになんで神崎の下についてるわけ?」
「言ったでしょ。面白いからって」
(…何考えてんだ、ホントに…)
「…こっちには心配で来たの?」
「ロクなこと考えねぇのが多いからな。この学校。…ポケットに入ってるアメのどっちかがレモン味だったら関わるって気持ちで来ただけ」
「レモン味だったんだ?」
「……………」
ポケットに手を突っ込んだ因幡は、最後のキャンディーを夏目に投げ渡した。
「!」
レモン味と書かれてある。
「やる。どっちもレモンだったから」
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