75:それでは殴りこみましょう。
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薄暗い檻の中、ユキは退屈そうにベッドに仰向けに寝転がり、茫然と天井を見上げていた。
傍には、ベッドの脇に背をもたせ掛けて眠っている鮫島の膝枕で熟睡しているフユマもいる。
なごりに能力を封印されてしまい、もう暴れることはないだろうと手首に手かせをつけられたまま一緒の檻の中に入れられたのだった。
もうどれくらい監禁されたままなのか、数えるのも面倒になっていた。
それでも、ユキはなごりと再会することを諦めずに望み続けている。
たとえもうなごりに見放されていたとしても。
共に日々を過ごした中で培ってきた想いを消すことは簡単にはできない。
キィ…、と静かにドアが開く音が聞こえた。
見張りの交代だろうか。
それとも…。
一抹の期待はすぐに裏切られた。
顔を横に向けると、ニヤニヤと笑ったダッチが視界に映る。
他の『バッドパーツ』の姿はない。
「……なに?」
「いやぁ。元気してるかと思ってなー。…あと…、いい情報やるよ」
「……………」
視線を逸らさず返事を待つ。
ダッチはくつくつと笑って口を開いた。
「今日だぜ。シロトとクロトの結婚式」
「―――っ!!!」
瞬間、ユキの心が雷に打たれたような衝撃に襲われた。
愕然とするユキの顔を見て、ダッチは「ひゃひゃひゃ」と腹を抱えて笑う。
「思った以上の反応だなっ。マジでショック受けてるよ。キッモ―――ッ!」
「ぅうううっ!!」
ベッドから飛び降りたユキは、鉄格子をつかんで唸りながらダッチを睨みつける。
怯むどころか、動物園の猿でも見るかのようにダッチは嘲笑の笑みを浮かべ、ベッ、と舌を出した。
「悦べよ。これでおまえら卯月財閥は一生安泰なんだぜ? そんな××みたいに興奮してねーで…」
「卯月なんてどうてもいい!! なごちゃんが…っ、そんな……」
今にも涙がこぼれそうな瞳だ。
ダッチの嗜虐心が煽られる。
「22代目シロトも望んだことだ。自分に関する記憶を仲間から消し去って、ココに来た。残念だったな…。卯月の幸せを願わねえなら、てめぇは一生幸せにはなれねぇ。22代目クロトにずっと叶わない儚い儚い片想いをし続けて絶望してろ」
「…っっ」
ボロボロとユキの瞳から悔し涙がこぼれ落ちる。
「!!」
ダッチは反射的に仰け反り、格子の間から突き出されたものを避けた。
夕食の際に隠し持っていた、フォークだ。
それをつかんでいるのは鮫島だった。
「お知らせどーも。…用件済んだならとっとと帰れ」
そう言って凄むのはフユマだ。
騒ぎで2人とも起きてしまった様子だ。
「…妻どころか、息子にまで見放された××男が」
チッ、と舌打ちしたダッチは今にも攻撃を仕掛けてきそうな雰囲気を纏っている。
たとえ普通の人間の身体となってしまっても、フユマはそれに応えようとした。
鮫島も武器を構える。
「フユマ…、鮫島…」
おおおおおおおおっ!!!
「「「「!!?」」」」
外から、大勢の叫び声が聞こえた。
「なんだ!?」
ダッチは何事かと急いでリーダーのもとへ向かう。
残されたフユマ達は互いの顔を見合わせた。最初に小さく笑ったのは、鮫島だ。
「人間の想いは、バカにできないということか…。彼らが、来たようですよ」
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