71:オレは女です。
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静かだった辺りは途端にざわめきに包まれる。
「因幡が女!?」
「女…だったのか?」
「なんで隠して…」
「どうなってんだよ…!?」
「オレ、今までてっきり……」
「意外とデカ…はぶっ!」
余計なひと言を言い切る前に邦枝の『撫子』を食らう古市。
「…知ってたのか?」
因幡のすぐ近くにいた神崎と姫川に問いかける東条。
神崎と姫川、夏目、城山は、うつむく因幡を見守るように見据えていた。
最早、隠しきれるはずもなく、素直に頷く。
「ああ」と神崎。
「あいつが転校してきて少ししてからな」と姫川。
「因幡桃…。因幡ちゃんの妹じゃなくて、因幡ちゃん本人だよ」と夏目。
「……………」と城山。
「おまえ……」
「―――見ての通り。そうだ、オレは…女だ」
開き直るように顔を上げた因幡は、ゆっくりと男鹿に歩み寄る。
歩くたびに地面に血が滴り落ちた。
「ただの女だよ。男鹿と東条みたいに素で悪魔と渡り合うほどのケンカの腕がいいわけじゃねぇし、邦枝みたいに女を名乗って誰かの上に立つ度胸もねぇし、神崎みたいに信頼を寄せるほど人望が厚いわけでもねぇし、姫川みたいに卑怯でずる賢くて成金なわけでもねぇ」
「おいコラ」
さすがにつっこむ姫川。
「それでもオレは、全部欲しいんだよ。こんなオレを、全部に認めさせたいんだよ…!! てっぺんの景色はどんなもんなのか、知りてぇ…。だから、男鹿、その特等席、オレに寄越しやがれ!!!」
ゴッ!!
カッ、と目を見開いた因幡は右脚を突き出し、男鹿の腹にめり込ませる。
男鹿は避けようとせずそれを受け、痛みに耐えるよう歯を食いしばり、コブシを突き出した。
ガッ!!
そのコブシは、因幡の右頬に打ち込まれた。
手加減を感じさせないコブシだった。
喰らった因幡は地面に倒れ、眩暈を覚えながらも驚きの表情を見せていた。
それは観戦している者も同じだ。
男鹿が初めて女を殴ったのを見たのだから。
「お…、男鹿…、さすがに顔は…、相手は女の子……」
フェミニストである古市が思わず手を伸ばして言ったが、男鹿は肩越しに軽く睨みつけ古市に言い返す。
「あ? 何言ってんだボケ市。こいつは、オレらが知ってる、『因幡桃矢』だ」
その言葉に、因幡ははっとした表情を浮かべた。
それから口元に小さな笑みを浮かべる。
(ああ…、なんで最初からこうしておかなかったんだろ…。そしたら…―――)
「立てよ、因幡。続きしようぜ。―――派手にめり込ませてやる」
口端の血を手の甲で拭った男鹿も口元に笑みを浮かべ、挑発的に手招きする。
再び立ち上がった因幡は、口に溜まった血を地面に吐き捨て、ニヤリとした。
「望むとこだ…。―――本気でブッ転がしてやるよ、男鹿」
「…因幡……」
名前を呟いたのは寿だ。
(おまえが何かを欲しがってるの、初めて見た。ここで…、見つけられたんだな…)
仲間から信頼を寄せられていても、『夜叉』の上にあえて自ら立とうしなかった昔の因幡とは違っていた。
男鹿はコブシを構え、因幡は右足を浮かせた。
2人は、ほぼ同時に地を蹴る。
「「おおおおおおおおっ!!!」」
ドガッ!!!
.To be continued