71:オレは女です。
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サタンが倒されてから数日後、男鹿が再び石矢魔の頂点に君臨し、まとめ上げたおかげで石矢魔高校の雰囲気が少し変わった。
男鹿達に対する態度が改まったのだ。
「因幡さん、はよーございぁす!!」
「こちらに来るときお見かけしましたよ!! 今日はいいことがありそうでラッキーっス!!」
「因幡さん!! 最近また他の他校からも目ぇつけられてるって噂が…」
「…おう」
最初は襲撃してきた生徒も何人か混じっていた。
聖組に属していただけでこの待遇だ。
妙に馴れ馴れしい。
それでも、ガラスを割ったり、スプレーで落書きしたり、タバコや博打は相変わらずだ。
石矢魔らしさが完全に欠如しているわけでもなく、逆に安堵してしまう。
「はぁ…」
下駄箱で靴に履き替え、小さなため息をついてキャンディーを咥え、ポケットからスマホを取り出した。
石矢魔町がサタンに襲撃された際に壊れてしまったので、小遣いをすべて使って買い替えたのだ。
幸い、中のデータは壊れていなかったので、アドレスや写真は消えていなかった。
ヒビが入っているが、ちゅら玉のストラップもつけていた。
ある程度出席していれば留年せずに済む学校なので、出席確認を終えた因幡は同じクラスの邦枝と大森とともに聖組の教室である1-Aへと向かう。
3年組もいたが、神崎と姫川の姿はない。
「おはよー、因幡ちゃん」
「おはよ。…神崎と姫川は?」
「さぁ…。朝から見かけなくて。城ちゃんのあのテンション見てよ」
小さく笑う夏目が指さした方向を見ると、一番後ろの席にいる城山はあからさまにがっくりと肩を落とし、「神崎さん、いずこへ…」と机に伏せていた。
「大袈裟な奴だな」
「仕方ないよ。あと少しでオレ達卒業しちゃうんだし、時間は大事にしたいでしょ」
「……………」
城山を見つめる因幡の目が寂しくなる。
気持ちは同じだ。残り少ない時間を大事にしたい。
「ちなみに城ちゃんは、卒業間近ってことで神崎君と姫ちゃんがどこかで決闘してんじゃないかと思ってるみたい。あの2人、よくケンカしてるのに、まだどっちも軍配上がってないし」
確かにありえない話ではない。
2人らしくて因幡は、フ、と笑う。
「色んな意味でケリつけたいだろうな」
「そのまま朝チュンにGOよ!!」と頭の中でひょっこりと出てきてガッツポーズするコハル。
不意に頭上に浮かんだそれを手で払った。
「……そうだな…。オレも、自分にケリつけねーと」
「?」
首を傾げる夏目。
自分に言い聞かせるように呟いた因幡は席を立ち、ベル坊とともに机に伏して眠ろうとしている男鹿に近づいた。
「男鹿」
「んあ?」
「アイ?」
*****
朝から姿を見せなかった神崎と姫川は、屋上にいた。
柵に背をもたせかけた神崎は厳しい顔でヨーグルッチを飲む。
向かいに立つ姫川は、櫛でリーゼントを直して神崎が何か言い出すのを待つが、一向に口を開こうとしない。
「「……………………………」」
飲み終わっているのに、神崎はカラのパックに空気を吹き込んだり吸い込んだりとパコパコと音を立てる。
それからポケットに手を突っ込み、新しいヨーグルッチを取り出した時だ。
姫川は、「待てコラ」と手で制す。
「5本目に突入すんな。オレを呼びだしておいてそれはねーだろ」
「…っ、あ…、あわてんじゃねえよ…」
構わず、ストローをパックに刺そうとしたが、姫川の視線がそろそろ限界なので手を止めて顔を見合わせる。
「用件は、告白の返事か?」
なんとなく予想していたので口に出してみると、神崎は頬を紅潮させて頷いた。
「……そうだよ」
「てっきり、黙ったままかと思ってたぜ。スルーされるのも困るがな」
「バカヤロウ。逃げてたまるか」
ナメるな、と睨みつける。
姫川の事に関しては背中を向けたくないのだ。
「―――それで、返事は?」
姫川は平静を装い、神崎を促す。
柄にもなく緊張していたからだ。
これ以上焦らされるようならそろそろボロが出てしまうと変なプライドが働いた。
神崎もいざ口にするとなると緊張する。
「……姫川…、オレは…―――」
意を決した神崎が返事を返そうと口を開いた時、バンッ、と屋上のドアが勢いよく開かれた。
わかりやすいほどビクッと驚いた神崎と姫川はそちらに振り返る。
屋上にやってきたのは、夏目と城山だった。
酷く慌てた様子で、2人の姿を見るなり駆け寄る。
「2人ともこんなところにいた!!」
「大変です!! 因幡と男鹿が…―――!!」
城山が続けた言葉に、神崎と姫川は耳を疑うように目を大きく見開いて互いの顔を見合わせ、声をハモらせた。
「「―――タイマン!!?」」
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