71:オレは女です。
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目覚ましが鳴りだす前に目が覚めた因幡は、ベッドから身を起こして「ん―――」と背伸びする。
ベッドからおりたあとはカーテンを全開し、朝日を浴びながら寝間着から学ランに着替えた。
シャツを着る前に胸にサラシを巻くことを忘れない。
「おはよー、桃姉」
自室を出れば、ちょうど部屋から出てきた春樹と顔を合わせた。
眠そうに欠伸をしている。
「おはよう、もう出来てるわよ」
ダイニングにおりると、エプロン姿の桜がテーブルに人数分の朝食を用意していた。
今日の朝食はパンとオムレツとサラダとフルーツヨーグルトだ。
日向とコハルはすでに席についている。
仕事疲れなのか、コハルは額に冷えピタを貼り、日向は心配そうに「大丈夫?;」と尋ねた。
これが因幡家のいつもの朝の風景だ。
食べ終わったあとはそれぞれが食器を洗い場に下げ、洗面所へと移動する。
因幡と春樹は並びながら歯磨きのあとは髪のセットを始めた。
春樹はワックスで髪を整え、因幡も前髪をあげてオールバックにする。
「どうだ?」
「今日も男前っスよ」
「よろしい」
この姉弟の会話もすっかり習慣となってしまった。
時間を確認し、先に日向が家を出て仕事先へ、続いて春樹も家を出て中学校へと行く。
桜も大学へ行く準備を始め、コハルは小さく呻きながら仕事部屋へと向かう。
玄関からその姿を見かけた因幡は靴を履いた。
「桃ちゃん、行ってらっしゃい」
振り返ると、仕事部屋のドアを開けたままコハルが小さく手を挙げて見送ってくれる。
「……うん。行ってきます」
脇に置いたカバンを持ち、因幡は玄関を出て学校へと向かう。
その足取りは軽く、家々を飛び移りながら石矢魔高校を目指した。
空は晴れ渡り、気分を良くしてくれる。
途中、足を止めて他人の庭にある桜の木を見下ろす。
どれもピンクをのぞかせた蕾ばかりだ。
もうすぐで開花するだろう。
学校の桜も。
「……………」
ザァッ、と春風が通り過ぎる。
その時、背後に気配を感じた。
「…なご」
「おおっ、よくオレだってわかったね! 愛で通じ合ってる!?」
現れたなごりは調子に乗って両手の人差し指で因幡を指さす。
因幡は振り返り、「朝から元気だな、おまえは;」と呆れていた。
何回か会っているうちに、なごりのウザいテンションに慣れてしまった。
「ハニーこそ、朝からスッキリした顔しちゃって…」
「……そうか?」
「結局、契約書は無駄になっちゃったし…、また納得してもらう方法考えないと…。まさか、オレの力まで破っちゃうなんてさすがオレのヨメ…」
「なご」
遮るように因幡は声をかけ、こちらに顔を向かせる。
「…どうしたの?」
なごりは小首を傾げ、何かを決意したような顔つきをしている因幡に笑いかけた。
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