06:病院ではお静かに。
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翌日、登校して初めに、因幡は愕然とした。
校舎が一部大きく欠損している。
「…なにがあった? 男鹿か?」
今のところ思い当たる人物がそれしか浮かばず、校舎を見上げながら、青りんご味のポップキャンディーを咥えた。
校舎に入り、いつもの石矢魔と違うことに気付く。
いや、話には聞いていたが、普通に廊下に女子2人が並んで歩いているのが見える。
しかしやはり石矢魔女子。
少し見つめていただけで「なに見てんだコラ」と喧嘩腰になってくる。
男子なら蹴りあげるところだ。
いずれは慣れるかもしれないが、やはり居づらい。
帰ろうかと思ったが、そう何度も休んでは母親がそろそろ口を出してくるだろう。
仕方なく、自分の教室に向かった。
「!」
窓際の席には3人の女子がいて、目が合った。
弁当を食べ終わらせたところなのか、包みを結んでいる。
ひとりは小柄の女子、ひとりは泣きホクロが特徴の女子、もうひとりは特攻服を着た腰まで伸びた長い髪の女子。
教室を見回すが、今のところその3人しかいなかった。
ここは素直に出直すべきか、と考えたが、3人のうちのひとりの特徴を見て、東邦神姫の邦枝の特徴と一致していることに気付き、踵を返しかけた足を止め、声をかけた。
「もしかして、邦枝?」
馴れなれしく声をかけてきた因幡に、邦枝以外の2人―――谷村と大森が席を立ち、すごんでくる。
「なんだてめー」
「そういや初めましてだな。オレは因幡桃矢。あんたらが遠征行ってる間に転校してきた。ちなみにこのクラス」
ずっと3年の教室に遊びに行って今更なことだ。
実はここに来る前、自分の教室がどこだったか忘れかけていた。
「目標が石矢魔統一って言ったら…、用件はわかるよな?」
言いたいことを察した邦枝は席から立ち上がり、大森と谷村の間を通過し、因幡と向かい合う。
「喧嘩売りに来たんでしょ?」
「やっぱりアンタがクイーンか。話が早くて助かる」
邦枝は腰から木刀を抜き、先端を因幡に向けた。
「だったら、こっちも早く終わらせましょう」
「ナメるのは、アメだけにしとけよ」
口から舐め終わったアメの棒を足下にプッと落とし、同時に目の前の机を邦枝目掛けて蹴り飛ばした。
邦枝は木刀を振り下ろして机を真っ二つに割り、因幡に詰め寄る。
「おいおい、木刀で一刀両断かよ!」
邦枝の技に驚かされつつ、突きだされた木刀をジャンプで避け、刀身に着地した。
「!」
「普通の喧嘩じゃつまらねーもんなぁ」
すぐに振り払われ、因幡は床に着地し、すぐ傍にあった机と椅子を近くにある分だけ蹴りあげ、タイミングを見計らって邦枝に飛ばす。
邦枝がかわし、外れたうちは窓ガラスを割って外へ飛びだした。
邦枝はそれを目の端で見、続けて蹴り飛ばされた机を再び真っ二つにする。
だが、振り下ろしたところを狙った因幡がいつのまにか近距離までつめ、邦枝の腹を目掛けて蹴りを突き出した。
ガッ!
間一髪で邦枝が木刀でそれを防ぐ。
「惜っしい…!」
それでも因幡の口元から嗜虐的な笑みは消えなかった。
互いに後ろに飛んで距離をとる。
「葵姐さんと渡り合ってる…」
戦いを見ていた大森も驚いている。
「…!」
(邦枝の構えが変わった?)
同時に彼女の周りの空気も変わり、因幡は警戒する。
心月流抜刀術弐式「百華乱れ桜」!!
「!!」
ガシャアン!!
廊下側の窓ガラスがすべて割れ、割れたところから因幡が廊下に飛びだし、片膝をついて着地した。
「あっぶねー!」
直撃していたら怪我では済まされなかっただろう。
扉から邦枝が出てくる。
「よくかわせたわね…。無傷とまではいかなくても…」
頭の傷口から流れた血が、因幡の額から頬を伝った。
因幡は立ち上がり、足下のガラスの破片を踏む。
「オレもまさか、本気出すことになるとは…」
張り詰めた空気が廊下を支配した。
その時、
「あれ? おまえあの時の奴じゃねーか」
背後から聞こえた声に、邦枝は頬を真っ赤に染め、因幡は肩越しに振り返った。
見ると、ベル坊を肩にのせた男鹿がこちらにやってくる。
「あ、男鹿。今大事なところ…あれ!?」
邦枝を見ると、いつの間にか背を向けて逃げるように走っていた。
それを「姐さーん」と大森と谷村が追いかける。
「勝…負…;」
中途半端なところで終わってしまい、因幡は伸ばしかけた手を宙で彷徨わせる。
「男鹿が邪魔するから!」
男鹿が来たせいだと察し、直接本人に文句を言う。
「あ? なんだよ」
「ダーブ?」
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