68:災厄が襲来しました。
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石矢魔高校の正門を潜ると、そこには石矢魔の不良達が大量に石化していた。
「な…んだこれ……」
目の前の光景に因幡達は絶句する。
不良達は何かに立ち向かったかのように険しい表情をしていた。
武器を片手に石化した者もいれば、倒れ伏してそのまま石化した者もいる。
「ほとんど…、全滅してるじゃねえか…」
「みんな、何か強大なものを相手にして…やられたみたいだね」
神崎は万が一の逃走経路のためにヤスを車に待機させ、車から降りた因幡達は、石化した不良達を通過しながら辺りを警戒する。
目に見えるもので自分達以外に動いている者はいない。
ここは安全な場所ではない。
むしろ、元凶がいるかもしれないのだ。
見上げると、校舎の窓はすべて割れていた。
まるで廃校だ。
「姫川も…、あいつ、やられてねーだろな…。烈怒帝留も…、東条も…。……こんな圧倒的な力…、もうあいつしかいねぇだろうな…」
因幡と同じことを思い浮かべた神崎は口にする。
「藤、か」
「ああ。それしか考えれねーよ…。朝っぱらからやってくれるぜ…。絶対、こいつらを元に戻させてやる…!!」
因幡は鋭い目つきで憎々しげに宙を睨みつける。
「なら、先に男鹿辰巳呼んでこいよ」
「「!!」」
神崎と因幡が同時に背後に振り返ると、そこには、長身の男がポケットに手を突っ込みながらこちらを見下ろしていた。
(な…っ!! こいつ……!!)と神崎。
(いつの間に…!!?)と因幡。
気配はまったく感じなかった。
驚く2人をよそに、男は小首を傾げて笑いかける。
「―――話はそれからだろ?」
「なんだ貴様…!!」
急に目の前に現れた男に、城山はコブシを構えた。
「ああ、ようやく静かになったと思ったのに…」
男が城山に右手をかざし、
「うるさい」
城山は、コブシを構えた姿のまま一瞬で石化してしまった。
「城山ぁ―――っっ!!!」
「城ちゃん!!」
「―――っ…!! てめぇ…っっ!!!」
因幡達は怒りの隅で確信する。
この男が、石矢魔町の人間達を石化させた張本人―――藤だ、と。
「!」
藤は何かに気付き、振り返り際に手を払った。
地面に落ちたのは、エアガンの弾だ。
その方向を見ると、校舎の昇降口の傍でエアガンを構えた谷村がいた。
「谷村!?」
因幡は思わず叫ぶ。
「校舎まで走って逃げてください!! 姫川先輩が作戦を実行するそうです!!」
「作戦…!?」
瞬時に姫川が言っていた『切り札』を思い出す。
「神崎!! 夏目!!」
今はその切り札を当てにするしかない。
因幡に呼びかけられ、神崎は石化した城山を一瞥して舌を打ち、先に駈け出した因幡とともに校舎へと走る。
こちらに来た因幡達を見て、谷村は昇降口から校舎に入った。
「早く!!」
取り出したのは、スマホだ。
画面に表示されている時間と藤を交互に確認する。
「!! 夏目!?」
昇降口に入る手前で、異変に気付いた因幡はふと足を止めてしまう。
夏目が立ち止まっていたからだ。
「おい!! 早く…」
神崎もそれに気づいて同じく足を止める。
夏目は口元だけを笑わせ、諦めたように肩を落とした。
「ごめん…、動けないんだ…」
「「!!」」
夏目の脚を見ると、足先から徐々に石化していた。
やがてそれは瞬く間に首まで進行してくる。
それでも夏目は慌てることも、命乞いをすることもなかった。
「2人とも…逃げ……」
その言葉を最後に、夏目は完全に石化してしまった。
「夏目…!!!」
「逃げられねえよ。もう、どこにもな」
「!!」
因幡が手を伸ばした瞬間、至近距離まで近づいた藤が立ち塞がる。
冷めた目で見下ろされる因幡はすぐに反応することができなかった。
「因幡!!」
因幡まで石にされると察した神崎は思わず叫ぶ。
だが、離れる前に藤は手を伸ばして因幡の頭を押さえつけるように触れようとした。
「!」
その時、異変を感じて藤は怪訝な顔をし、手を止めた。
急に身体が重くなったからだ。
そのあと、因幡達が一度聞いたことのあるサイレンが鳴り響く。
ドッ!
「!」
隙を突いて因幡は一歩後ろに下がって右脚を突き出して腹に食らわせた。
効果があったのか藤がよろめく。
「なんだ…?」
藤は自身の掌を見つめ、何かを探すように辺りを見回した。
「サタン。おい…」
(サタン…!?)
有名な大悪魔の名前に因幡は目を大きく見開いた。
「間に合ったな」
降ってきた声に校舎を見上げると、屋上にはサーベル型のスイッチを握りしめた姫川が立っていた。
「姫川!!」と神崎。
「あのスイッチ…」と因幡。
神崎と因幡が同時に思い浮かべたのは、男鹿とベル坊のリンクを切るために使用した『魔力遮断結界発生装置』だ。
「オレに何した…?」
藤は無表情で姫川に問う。
まったく慌てている様子が感じられない。
それが不気味だ。
サタンとのリンクが切り離されたとはいえ、わずかな勝機が生まれただけだ。
「!」
「!?」
どこからか炎が弾丸のように飛び出し、因幡と藤の間を隔てた。
見ると、校舎の3階からこちらに指を向けた赤星の姿があった。
燃え盛る炎の向こうにいる因幡達を見据える藤は、フ、と笑みを浮かべ、背を向けて歩き出す。
「男鹿がいねーなら話にならねえ…。おまえらは後回しにしといてやるよ」
捨て台詞を残し、石化した不良達の間を通って正門から堂々と出て行ってしまう。
石化した者にはもう興味ないのか、見向きもしなかった。
自身のその手で石にしておきながら。
それが、神崎と因幡の怒りの火に油を注いだ。
「てめぇ…」
「待…てコラァッッ!!!」
2人は炎を突き抜け、藤を追おうとする。
姫川は阻止しようと「おい!!」と声を張り上げるが激昂した2人には届かない。
「!!」
正門を出る前に、力強く、神崎は右腕を、因幡は左腕をつかまれて止められる。
「迂闊に出ない方が賢明ナリよ?」
「!?」
「奈須…!?」
奈須に続いて鷹宮と林檎も現れ、門の向こうにいる藤の背中を見つめた。
「装置には結界範囲がある。正門を出たら最後、霧にやられて石にされるか、藤とサタンに直接石にされるかだ」
「頭冷やしな。あたしだって、ウチのモン全員石にされて頭きてんだ…!」
林檎は藤の背中を睨み、口に咥えているタバコを噛んだ。
止められた2人も、その背を睨むことしかできなかった。
.To be continued