68:災厄が襲来しました。
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それは、朝日とともに石矢魔町に、ゆっくりと人知れず流行病のように蔓延ってくる。
登校してくる石矢魔の不良達の中に、長身の私服の男が訪れる。
男の傍らには、黒いコートを着たオールバックの男もいた。
見慣れない男達に、周囲の視線が集まる。
長身の男は、挑発的な笑みを浮かべ、石矢魔の不良達に問いかけた。
「なあ、男鹿辰巳ってどこだ?」
*****
午前8時過ぎ、神崎の家にて。
制服に着替えた神崎は欠伸をしながら自室から縁側を渡っていた。
わずかに目の下に隈が出来ている。
今日はいつもより遅く起きてしまった。
(普段通りだったな…、あいつ…)
告白の事を忘れたかのように、姫川はいつもの日常を送っていた。
このまま見送りでもいいのではないかという思いが浮かんだが、はっとして首を横に振る。
(一応返事は返さねえといけねえのか…? つか、もうすぐ卒業だってのに、あいつ、なんつーことを…)
悩みの種を増やしてくれるものだ。
ふと顔を上げると、二葉の後ろ姿を見つけた。
ただそこに立ち尽くしている。
何を見ているのかと二葉の先を見るが、何もない。
「二葉」
声をかけたが、二葉は無反応だ。ピクリとも動かない。
「おい、どうした」
しゃがんでその頭を触ると、冷たく、髪の感触がまったくしなかった。
「!!?」
それもそのはず。
二葉は、全身石になっていたからだ。
「な…っ」
しゃがんでいた神崎は思わず尻餅をついた。
「なんだこれ…、親父の奴、ついに孫可愛さに像まで作っちまったか…?」
無理に笑みを浮かべようとするが、スズメの声ひとつ聞こえない静かすぎる朝に嫌な予感を覚え、すぐに立ち上がって縁側を駆ける。
この時刻ならば武玄は食事処にいるはずだと食事処の障子を勢いよく開けた。
「親父!! …………っ!!」
武玄は食事中に石になっていた。他にも、家にいる組員達も皆石化していた。
「………ど…う……、どうなってんだよっっ!!!」
夢でないことは確かだ。
突然の事に戸惑いを隠せず、神崎はスマホをとって因幡達と連絡をとろうとするが、まったく通じない。
「クソ…!!」
ここにずっといるわけにもいかず、靴を履いて玄関を飛び出した。
「神崎君!!」
「神崎さん!!」
「おまえら…!」
その時、門に現れたのは夏目と城山だった。
わずかに神崎の心に安堵が生まれる。
「よかった、無事だったんだね…! 家の前にいる組員達が石化してたから神崎君まで石になっちゃかと…」
「何が起きてる!? なんであいつら全員石になってんだ!?」
城山の両肩を揺すって現状を問い詰めた。
城山は苦い表情をして答える。
「……ここだけじゃありません。ウチも、夏目の家もやられました…。それだけじゃなく、町も…」
「因幡ちゃんも無事かな…」
「若っ!!!」
「「「!!」」」
クラクションとともにこちらに近づいてきたのは、神崎の家の自家用車だ。
運転席には組員のヤスが乗っていた。
「ヤス!!」
「若、ご無事で…!! ちょっと町に買い出しに出てみりゃ、えれぇことになってて…!! とにかく…っ、早く乗ってください!!」
立ち止まって話し込んでいるわけにもいかない。
石化とした原因である黒い霧がすぐそこまで迫っていたからだ。
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