67:スキです、アイしてます。
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「Zz…」
「……………」
戻ってきた因幡は、自室の光景にため息も出なかった。
神崎はベッドで熟睡し、姫川はベッドに背をもたせかけて呑気にジャンプを読んでいる。
「毛布は?」
姫川が平然と聞いてきたので脱力した。
「……おまえら…、その…、話はどうなったんだよ……」
「やっぱり聞いてたのか」
姫川は取り繕うことなくジャンプを閉じた。
「…夏目達には」
「言わねーよ」
どうなるか目に見えているので即答し、姫川はジャンプをローテーブルに置いて話す。
*****
唇が重なる寸前、姫川は動きを止めた。
硬直した神崎は怪訝そうに姫川を見つめる。
姫川は、フ、と笑い、顔を離した。
「返事は?」
「オ…レは…っ」
突然の告白にしどろもどろになる神崎に、姫川は苦笑する。
「今じゃなくていい。ゆっくり考えてから答えてくれりゃあそれで……」
「…………そ…、そうさせてもらう…」
「…とりあえず寝とけ」
ベッドを指さすと、神崎は複雑な顔になった。
「襲わねえから」
「ったりめぇだよコラァ!!」
*****
「……………」
因幡はこちらに背を向けて眠る神崎を見つめた。
どっと疲れが出たのか、安らかな寝息を立てている。
「そんなことあってすぐに眠れるこいつもどうなの!!」
「あー…、それオレも思った。図太いよなぁ、こいつの神経…。オレ、いつでも高跳びする気持ちでコクったのに…;」
胡坐をかいた膝に肘をつき、掌で顔面を覆う姫川。
背中に圧し掛かる重い空気が目に見え、心底同情する因幡。
「気を遣って1時間ほど家出たのに、せめて『B』まで済ませとけよ…」
(自分の部屋なのにそれを許すのか。つか、『B』って…)
舌打ちする因幡に姫川は内心でつっこんだ。
「オレは気持ちを伝えたし、あとは…神崎がそれに応えてくれるか…」
「……………」
「―――で、おまえは1時間も何してたんだ?」
顔を上げた姫川に問われ、因幡は「あー…」と視線を逸らして咄嗟に嘘をつく。
「散歩ついでにキャンディー買いに行ってた。…姫川、おまえも寝ろよ。オレは下で寝るから」
「いいのか?」
「おまえが妙な気を起こした時のために邪魔にならないよう避難しとく」
親指を立てて言ってのける因幡に姫川は青筋を浮かべた。
「さらっと野獣扱いしやがって」
「じゃあごゆっくり!」
「寝るわ!!」
コブシを握りしめる姫川を見て、因幡は逃げるように部屋を出る。
階段をおりながら、去り際のなごりを思い出した。
(ゆっくり…か)
階段をおり切るとスマホを取り出し、なごりから送り付けられた契約書を見つめる。
『1、卯月なごりとの婚約を承諾する。
2、石矢魔町を離れる。
3、―――――』
簡単にできるわけがない。
それを承諾してしまえば、神崎達から離れなければならないのだから。
(契約してたまるか…。自分でなんとかしてやる…!!)
それでも脳裏をかすめるのは、やはり、なごりの寂しげに笑う顔だ。
.To be continued