66:チェックメイトです。
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男が去り、ようやくひと段落ついた。
あとは、古市の魂を元の体に戻せばいいだけなのだが、魂の欠片が別々に合わせられ、3人の小さな古市が出現してしまった。
3人の古市がケンカしている最中、因幡はルシファーを抱える鷹宮に近づき、ポケットあるものを取り出して差し出す。
「これ…、その子に効くかわからねえし、量もそれほどないけど…、魔界の薬だ。使ってくれ」
「……………」
鷹宮は茫然と因幡を見上げ、差し出された魔界の薬を受け取った。
「……すまん」
鷹宮は目を伏せ、小さく呟くように言う。
因幡は、フ、と微笑みを浮かべた。
だが、すぐに口をへの字にしてたまりにたまった鬱憤をぶつける相手に歩み寄り、その背中を蹴る。
「痛ってぇっ!」
バランスを崩した姫川はよろけるも踏み止まる。
振り返ると、怒りのオーラを身に纏い仁王立ちした因幡と目が合った。
「最初に頭撲ってくれたお返しだこんにゃろうっ!」
「おお、お怒りだな」
「ったりめぇだ!」
「因幡だけじゃねえぞコラ」
同じく、神崎も便乗してくる。
敵を騙すには味方からというが、姫川は神崎を撲りすぎた。
そのまま平和的に済ますはずがない。
「ボカボカ撲ってくれやがって!」
「落ち着けよてめーら。おかげで完全に相手の意表を突けたわけでだな…」
「「言い訳なんざ聞きたくねーんだよ!!」」
こちらも完全にハモった。
「もーっ、おまえ転がってろバカ!!」
「バーカ!! せめてオレらにだけでも種明かししとけ!!」
「おまえらにポーカーフェイスなんてできましたっけ?」
「「できるかバァ―――カッッ!!!」」
低学年の子どものような理不尽な罵倒に姫川は困惑の色を浮かべる。
そのまま後ろに下がったので逃がすまいと神崎はその胸倉をつかんだ。
「てめー、オレらがどんだけ…―――」
瞬間、神崎は目眩を憶え、そのまま姫川に倒れ込んだ。
姫川は反射的に崩れる前にその体を支える。
「!」
「神崎?」
何事かと因幡と姫川は目を丸くした。
「か、神崎…」
心配になる因幡に、姫川は「あー…」と空いた手で頭を掻く。
「ムリもねぇか。撲りすぎってのも確かにあるが…、ベル坊のにじみ出た魔力のツケってのが返ってみたいだ。男鹿みたいに常日頃連れてるわけじゃないから耐性もついてなかったみたいだし…」
分析した姫川に、神崎は「冷静に分析してんじゃねえよ…」と弱々しく唸った。
すると、やってきた夏目が、とってもいい笑顔で姫川と因幡の肩をつかんで提案する。
「そうだ。オレは城ちゃんの手当てするから、因幡ちゃんは姫ちゃんと神崎君の手当てをお願い」
「え?」
「や…、オレ軽傷だし…」
口答えする姫川に、夏目のドアップが近づく。
「あっれ~、姫ちゃん…。相談もなくオレ達を巻き込んどいて自分はとっととひとりで帰るつもり?」
グサッ、と笑顔の夏目の棘のある言葉が姫川のわずかな良心に突き刺さった。
「チッ」
舌を打ち、仕方なく動けない神崎を背負う。
「おいっ! いいってっ」
神崎は抵抗しようとするが、姫川は顔をしかめながらその抵抗を無視する。
「いくぞ因幡!」
「え。あ、待てよ!」
ほとんどヤケクソに声をかけ、因幡も慌てて先を行く姫川を追いかけた。
「ほんと…、手がかかるよね…」
そんな3人の後ろ姿を眺めながら、夏目は肩を竦ませ呟いた。
.To be continued