65:裏切りですか?
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『遮断結界発生装置』を壊そうと神崎達は水のないプールに着地した。
鷹宮の王臣紋を見せつける姫川、姫ラー、そして傍で観察していた宇多川までも動き出す。
フ、とほくそ笑む宇多川は頭のシルクハットを取り、シルクハットの中から手品のようにステッキを取り出した。
「終わりにしましょう。今夜は冷える」
瞬間、目に見えない動きで、夏目、陣野、因幡にステッキで攻撃をしかけた。
「「「!!」」」
反射的に夏目と陣野は両腕で、因幡はデッキブラシで自分の身を庇ったが、付近にいた姫ラー達は巻き添えを食らい、吹っ飛ばされてしまう。
「っ!」
デッキブラシの柄も砕けてしまうほどの威力だ。
宇多川が次の攻撃を仕掛けようとしたとき、横から神崎が踊りかかる。
「らぁっ!」
「!!」
宇多川の頭目掛けて殴ろうとした神崎だったが、反射的に構えたステッキで防がれててしまう。
「…………っ」
だが、神崎の力に押し負け、吹っ飛ばされまいと持ち堪えるが靴底をすり減らした。
「強いじゃねぇか、……おまえ」
傍に立つ宇多川に姫川は賛辞を贈った。
宇多川は口元に小さな笑みを浮かべていたが、顔には冷や汗が浮かんでいる。
「いえいえ、私など…。それにしても、遮断装置を置いたあなたの判断は正解でしたね…、姫川」
宇多川は視線を神崎とベル坊に向け、言葉を続ける。
「神崎に流れる魔力…、あれは滲みでたほんの一部です。にもかかわらずあの強さ。おそらく、赤ん坊の中では途方もない魔力がせき止められ溜まっている。以前にも似たようなことがあったと聞きます。まだ石矢魔が昔の校舎だった頃、男鹿と東条の戦いでリンクが切れ、限界まで溜められた魔力は一気に校舎を消し去ったと…。とてつもない…。あれが外に出れば、鷹宮とルシファーでも手に負えません」
きっとダムが決壊するように魔力が放出されるだろう。
それだけはあってはならないと忠告し、姫川に振り返ると、姫川はすぐ近くにあった『遮断結界発生装置』に肘をかけていた。
「へぇ~」
姫川が相槌を打つと同時に、宇多川は目を疑った。
装置に姫川のスタンバトンが突き刺さり、漏電していたからだ。
「え?」
ボン!!
見間違いでないと証明するように、装置は煙をあげた挙句爆発した。
「え?」
目を丸くしたのは、神崎達も同じだった。
一体姫川が何をしたのか把握できない。
「な…、なな…、何を…、姫川…」
「ん? だから、せき止めてたもんを流してんだろ」
あからさまに動揺する宇多川に対し、姫川はこともなげに言う。
「壊したのですか!? 遮断装置を…っっ、なぜっっ」
「うん。だって最初からそのつもりで買ったんだし」
「そ…、そのつもり…!? ど…、どういう事ですか…、まさか…っ、赤ん坊に魔力を溜めさせる為だけに何十億というお金を…!?」
国が傾くほどの大金で買われた品だ。
それを買った本人が躊躇いもなく破壊するなど夢にも思わなかっただろう。
「あー? はした金だ、そんなもん」
「…………っ」
言い切る姫川に宇多川はようやく理解する。
同じく神崎も現状がつかめて思わず笑った。
そしてやはり自分が知る姫川だったと安堵が生まれる。
「……ハハッ、このクソ裏切り野郎が」
姫川が、鷹宮を裏切った。
すべては男鹿を完璧に勝たせるため。
裏切ったと見せかけるためにここまで手を込ませるとは鷹宮でも思わなかっただろう。
何より、忠誠の証である王臣紋まで見せつけられてしまっては。
はっとした宇多川は姫川の腕の王臣紋を見る。
印は間違いなく鷹宮のものだ。
「し…、しかし、王臣紋は…、それは鷹宮に忠誠を誓わないと出ないはず…」
「あ? あ―――、これ?」
腕の王臣紋を見せつける姫川は、
「そういや、はがし忘れていたな」
しれっとした態度で、鷹宮の王臣紋を剥がした。
ずっと見せつけていたのはシールだったのだ。
その下から出てきたのは、男鹿の王臣紋だ。
「3」と数字があった。
その印を目にした因幡は、目を大きく見開いて「あ…」と漏らす。
次の瞬間、ベル坊とのリンクを強制的に切っていた装置が破壊されたことによって、再び男鹿に魔力が供給された。
それから、魔力の噴出とともに、装置が発動される前に見せたものよりも巨大なゼブルスペルが上空に展開された。
その規模は石矢魔町を覆うほどだ。
そして、魔力を取り戻した男鹿とベル坊の反撃が開始される。
.To be continued