06:病院ではお静かに。
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数日後、姫川が入院した。
「…ぶっ(笑)」
「「笑ってんじゃねーよ」」
入院している病室を見るなり、因幡はその光景に噴き出した。
見知った2人が病室のベッドで寝ているのは滑稽極まりない。
石矢魔高校の生徒だからなのか偶然なのか、姫川は神崎と同じ病室だ。
面白かったので、因幡は携帯を取り出し、その光景を写メに収めた。
「撮ってんじゃねーよ」と神崎。
「病院内は携帯禁止だぞこのヤロウ」と姫川。
母親に添付メールを送ったあと、因幡は姫川のベッド脇にあるパイプ椅子に座った。
「姫川、自分ならできるっつってエラそうなこと言ってたわりには、随分なやられっぷりじゃねーか」
からかうように言う因幡の言葉に、姫川は青筋を浮かべ、平静を装って言い返す。
「オレはこの馬鹿と違って、一撃ではやられてねーよ」
「んだとコラァッ。てめーなんか、対策まで作ってたクセにあっさりやられたそうじゃねーか」
「あぁ?」
「今すぐ石矢魔最強決めるかクソリーゼント。オレの黄金の左コブシ食らってみっか?」
「てめーこそ、丸1年入院させるように医者に金つかませていいんだぜ?」
胸倉をつかみあい、睨み合いをする2人。
因幡は止めもせず、見舞い品からリンゴをとってナイフで皮むきしている。
(個人部屋にした方が平和だろうに…)
医者もなぜこんなライオンとトラを一緒の檻に入れるようなマネをするのだろうか。
(神崎だけでなく姫川までやられたんだ。男鹿の強さは半端じゃない…。卑怯な手も通用しなさそうだな)
「因幡、学校の方はどうなってる?」
不意に姫川に聞かれ、ナイフの手を止めた因幡だが、また同じ動作で皮を剥き始める。
「変わんねーよ。こっちは気にせず、おまえらは治すことに専念するんだな」
切ったリンゴを2枚の皿に分けて載せ、立ち上がり、2人に手渡した。
2人はそのリンゴの形を凝視する。
「…なに?」
まるで未確認生物を目撃したかのような2人の目に、因幡は眉をひそめる。
「おまえ…、無意味に器用だよな」と神崎。
「完璧だ」と姫川。
2人の皿には、ウサギの形に切られたリンゴが並べられていた。
姫川はそれを食べながら、「そういえば…」と切り出す。
「邦枝の話は知ってるか?」
「邦枝? 東邦神姫の?」
「夏目の話じゃ、戻ってきたらしいぞ。…知らねえの?」
「ここんとこ、学校行く気がなくてな」
「じゃあ、石矢魔の女子全員が戻ってきたことも知らねぇわけだ」
「…マジ?」
つまようじの尖端を向けながら言う姫川の言葉に、因幡は嫌な汗をかいた。
共学なのは知っていたが、戻ってくるとなると面倒な話になる。
今までは隠れて女子トイレを使っていたが、今度は堂々と汚い男子トイレに入るしかないではないか。
それと、勘の良い女子も出てくるかもしれない。
「てめぇはどうするつもりだ? いっそ、そのカッコやめて女子トップの邦枝の下につくか?」
リンゴを食べながら言う神崎に、因幡はムスッとした顔をし、口を尖らせる。
「女の下につけるかよ」
「おまえも女だぐっ」
つまようじを取り上げられた神崎は、その口にウサギリンゴを突っ込まれた。
「オレは男で通してんだ」
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