05:本日も空回り。
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徒歩で帰ってくるのは初めてだった。
(今日は本当に疲れた)
神崎が落下してきたり、救急車のために不良達を一掃したり、男鹿と喧嘩(?)したり、電撃を食らったり。
今日一日の出来事を思い返して玄関の前でため息をついた因幡は、扉を開けて中に入る。
「ただいまー」
リビングに入ると、因幡の家族はほとんど揃っていた。
「あら、おかえりなさい」
最初に声をかけたのは、席について大学の教材を広げている因幡桜だ。
腰まで伸びた長髪にウェーブをかけているのが特徴であり、次女とは違っておっとりした雰囲気を身に纏っている。
「今日は遅かったな。そんなに石矢魔って楽しいの?」
ソファーに腰掛けて『ごはんくん』を見ながら言うのは、長男であり弟である因幡春樹だ。
中学生の男子にしてはガタイの良い体つきで、ワックスで固めた鳥頭が特徴であり、こちらは不良の匂いを漂わせている。
「具合悪かったから、徒歩で帰って来たんだよ。…父さん、今日は残業なかったんだ?」
「ああ。スムーズに終わった」
桜の向かい側の席に座って『ごはんくん』を見ているのは、因幡父である。
名前は未定。
母親に比べて父親は年相応に老けているが、髪はフサフサで後ろに束ねている、ダンディーパパ。
近所の奥様にも評判が良い。
「おい、ここでオレのファミリーの紹介かよ。大体、オッサンは評判が良いっつーよりただの女たらしだ」
「誰に喋ってるんだ」
「つうか、母さんはどうしたんだ?」
いつもの時間なら、キッチンで食事を作っているはずなのに、今日は見当たらない。
「ああ、なんか、お友達が入院しちゃったみたいで、急いで出かけたわよ。…今日はピザね」
桜の言葉を聞きながら、因幡は冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注いで飲む。
「へぇ。じゃあオレ、ミックスピザ。…こっちに友達いたんだ?」
「ええ。けっこう慌ててたわね…。電話しながら、「まあ、神崎君が!?」って…」
「ブ―――ッッ!!」
盛大に麦茶を噴き出してしまった。
「コラ、汚いぞ」
父親に叱咤されるが、因幡はコップを置いて桜に詰め寄った。
「母さんいつ出てった!!?」
「え…と…、3分前くらい…;」
それだけ聞くと、因幡は家を飛び出した。
玄関のカギを閉め忘れるが、戻っているヒマはない。
全力で走ると、病院へと続く道の途中でフルーツ盛りだくさんの見舞い品を持った母親を発見し、捕獲した。
「いやーっ、放してーっ」
「どこの世界にっ、本人よりも真っ先に同校の生徒の見舞いに行く母親がいるかよ!! つうか誰から聞いた!!?」
「夏目君が電話で教えてくれたのよぅ」
「あのアホか!! いつ携帯のアドレス交換した!? 見舞いならオレが行くからもう帰れ!! 頼む!! ほんと…っ、お願いします!!」
こうして、夏目の思惑通り、因幡は母親が持ってくるはずだった見舞い品を片手に病院へ行くことになってしまった。
「夏目ぇ…」
病院前には、夏目と城山が待っていた。
夏目の笑顔を、因幡は憎々しげに睨む。
「来ると思ってたよ」
「やかましい!!!」
メロンをぶつけてやろうと手を伸ばしかけたが、ぐっとこらえた。
.To be continued