62:特攻隊長の出番です。
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奈須が悪魔の契約者という可能性だけで、ここにいるはずのない奈須の仲間達がいることの説明がつく。
(こいつが…、何か悪魔の力を使ったって事か…?)
「ちぃっ…」
罠にはめられてしまったが、逆に好都合だ。
奈須達が雁首そろえてその場にいるのだから。
舌を打った神崎は、先手必勝と床を蹴って大きくジャンプし、
ゴッ!
城山を倒した張本人である塩入の頭上に踵落としを食らわせた。
「まずはてめーからだ、デブ。城山のかたき…」
「おおっ!!」
誰が見ても渾身の一撃に古市は期待の声をあげる。
(そーだよ…。奈須はともかく、その手下達なら神崎でも…)
だが、神崎に視線を上げた塩入は表情を歪めてすらいなかった。
まったく攻撃が効いていない。
「!!」
神崎が驚くと同時に、
バキャ!
顔面に塩入の張り手を食らい、後ろに吹っ飛んで床を滑る。
「がは…っ」
「神崎!!」
黙って見ていられることができず駆け寄ろうとする因幡だったが、その前に騒霊組の不良達に数人がかりで取り押さえられてしまう。
「ぐっ」
床に体の前面を打ち付けた因幡だったが、すぐに顔を上げて激しく抵抗する。
「放せコラァッッ!!」
神崎が床に倒れ、因幡が取り押さえられたとき、日野は高くジャンプして神崎の腹目掛け落下し、強烈な両足蹴りを打ち込んだ。
ズドォ!!
騒霊組の中で一番小柄なのに反し、その衝撃に、神崎を中心に床がひび割れる。
「……っ」
目を見開いた神崎は、ごぼ、と吐血した。
辺りは土埃が舞い、日野は神崎を見下ろして嘲笑う。
「よわっ」
その光景を目の当たりにし、耳に入ったその言葉に因幡は頭にカッと血をのぼらせ、湧き上がる衝動のまま取り押さえていた不良達を蹴散らして床に転がし、立ち上がった。
「ブッ転がす…!!」
最初の狙いは、神崎を嘲笑った日野だ。
弾かれるように床を蹴り、その仮面ごと蹴り割ろうと右脚に勢いをつけると、間に入るように現れた鬼束の右腕に塞がれてしまう。
「!?」
目に入ったのは、奈須の左胸にあった紋章と「1」という数字だった。
次の瞬間、因幡は鬼束に頭をつかまれ、床に打ち付けられる。
「うぐ…っ!!」
「因幡先輩!!」
はっと上を見上げると、鬼束、亀山、日野、塩入がこちらを見下ろしていた。
4人の体の一部には、紋章が浮かんでいる。
鬼束は右腕に「1」、亀山は胸元に「2」、日野は首筋に「3」、塩入は額に「4」の紋章。
先程までなかったものだ。
追跡中もそれらしいものは見かけていない。
なのに、今ではあらじめそこにあったかのように存在し、わずかに光っている。
(なんだよこれ…。ゼブルスペルみたいなものが他の奴らにも…。あの数字は…「1」?「1」ってなんだ!?)
(まるで力を分け与えているような…)
紋章を目にした古市と因幡はほぼ同じ事を考える。
因幡は鬼束に首根っこをつかまれ動きを封じられると、そこに奈須がふらふらとおどけるような足取りで近づいてきた。
「聞いた通りだっちゃ。やっぱり、魔力が使えなきゃ、オレ達と渡り合うのは到底ムリムリ」
「聞いた通り…? 魔力が…使えないって……」
考えたくはなかった。
自分がただの人間になっているなんて。
「えーと…、んん? 誰から聞いたんだっけ…?」
名前は聞いたはずなのに、名前どころか顔も思い出せない。
だが、聖組の情報と引き換えたものははっきりと覚えている。
頭を揺らして思い出そうとする仕草をしていた奈須の動きが止まり、わずかに右足を上げた。
「うーん…。ま、いいっちゃ☆」
ボキ…ッ!!
「―――っっが、ああああ!!!」
奈須の右足は因幡の右脚を勢いよく踏みつけ、その骨を折った。
生々しい音が鳴り、すぐあとに教室に因幡の絶叫が響き渡った。
最初は何が起きたのかわからず、激痛のあまり叫ぶ因幡に、見ていた古市の顔がみるみると真っ青になる。
そして、一度は意識を手放しかけた神崎の指が、ピクリと動いた。
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