61:魔窟が復活しました。
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城山を病院に届け、因幡、神崎、夏目は神崎の家で神崎の手当てをした。
城山を運んだ時から頭に包帯を巻かれている間もずっと黙ったままだ。
何を考えているかは察しはつくが、それについて話しかけはしない。
火に油を注ぐと理解しているからだ。
それからしばらくして、3人のスマホが一斉にメール受信を知らせた。
邦枝から召集がかかったからだ。
時間を確認すれば、あの騒動から半日も経っていない。
聖組全員に召集のメールが届き、集合場所である邦枝の神社に集まったのは男鹿、古市、因幡、神崎、夏目、姫川、相沢、陣野、烈怒帝留、下川だ。
クリスマス以来、姿を見せず、連絡を無視し続けた姫川に因幡は目を大きく見開き、眉をひそめて近寄った。
神崎はそれを遠くから見つめ、何か言いたげに姫川を見つめる。
「姫川、なんで今まで連絡よこさなかったんだよ。オレのメールはシカトで邦枝のメールには応えるんだな?」
姫川は因幡を一瞥し、素知らぬ顔をして目を逸らす。
「連絡を返す義務もねーだろ」
反省の色も含まれていない返しに、カチン、と小石を頭にぶつけられた気分になる。
「んだコラ。こっち見ろや。てめぇ、オレがどんだけ心配したと…」
ガン垂れていると、後ろから夏目が肩を叩いて「ほらほら、クイーンが来たよ」とそちらを向かせる。
言い足りず因幡は唸りながら姫川を睨みつけ、仕方なく邦枝に振り向いた。
「これで全員……?」
集まったのは聖組の強者ばかりだ。
「ここに来てない者はやられたと考えた方がいいね」と夏目。
「―――って、ええっ!? 東条先輩もっスか!? パネェッ」と花澤。
「マジかよ。あの怪物が一体どーやって…」と飛鳥。
「あぁ…、そういや彼囲まれてたよね。みたみた」と下川。
「おまえは無事なんだ」と相沢。
遠くで隠れて見ていたから無事だったいう。
「虎なら問題ない。バイトだ。ピンピンしてるよ」
囲まれたあとの東条の安否は陣野が知っていた。
「あ…、なんだそーなんスか」
花澤はホッと胸を撫で下ろす。
「にしてもおまえら、こっぴどくやられたようだな」
陣野に指摘された男鹿と古市の左頬には、半裸で手当てされている邦枝の姿を間近で見てしまい、殴られた痕が残っていた。
「……いや、これは…」
「……………」
そこで突然、ガンッ、と近くにあった一斗缶が蹴飛ばされ、派手な音を立てながら石畳を転がり、その場にいる全員の視線がそちらに向けられた。
蹴飛ばしたのは神崎だ。
「んなこたぁどうでもいいんだよ。今オレ達が潰さなきゃなんねーのは騒霊のなすびだろ」
自分を庇ったことで城山がやられてしまい、神崎のはらわたは煮えくり返っていた。
雑談をしに来たのではないと初心を思い出させる。
「あぁ…。実際間近で見ると、あいつのヤバさは他のヘッドとは一味違ったよ」
「……………」
夏目の言葉に、男鹿は「その赤ん坊をいただくナリ―――」と不気味な笑みを浮かべた奈須を思い出した。
「実力は未知数だが、筋は通しそうな火炙の赤星や鯖徒の市川と違って、あの奈須って男は言うなればジョーカーだ。次の瞬間、何をするかわからない危うさがある。後手にまわると、取り返しのつかないことになるぜ」
淡々とした口調で夏目が説明すると、姫川はサングラスを指先で押し上げて同意する。
「……確かにな。藤・鷹宮はまだ目立った動きをしてねぇ。となると今一番ヤバいのは奈須だ」
「いや…、つっても、騒霊だけじゃないでしょ。邦枝先輩を狙った魔女学だって……」
魔女学の林檎は烈怒帝留の2代目総長だ。
後回しにすることもできず、油断はできない。
「えぇ。男鹿…、彼女の狙いもあなたよ。―――でも、まかせて。魔女学の『タバコ』は私達が引き受ける。烈怒帝留の名にかけてね。だからあなた達は奈須を……」
「…そんなもん、最初っからそのつもりだっつの」
男鹿は口元に不敵な笑みを浮かべて返した。
作戦会議が始まり、古市は作戦を口にする。
「総力戦!?」
「はい。先手をとるなら、まずは相手の動きを知ることです。そのために必要なのは密な連携」
「なるほど。おもしろいね。情報で制してしまおうってわけだ」
「えぇ。その上で理想を言えば、大将同士の戦いのみに持ち込むこと。男鹿、おまえだ」
「あ? 冗談じゃねーぞ。こっちは仲間がやられてんだ。奈須だけ叩いて終わりなんてあるかよ」
反対したのは神崎だ。
城山は奈須の手下である塩入にやられたのだから、報いを受けてもらわなければならない。
「他の勢力も目を光らせてます。派手に戦えば、そいつらの恰好の的になります」
ヘタに動けないのはわかるが、神崎には納得できないものがあった。
「つーかそもそも男鹿が大将だなんて認めてねーしっ!!」
「修学旅行の時、言ってたじゃない、あなた。大将だって…」
「あれは面倒くさかったから男鹿におしつけただけだしっ。石矢魔に戻ってきたら話は別だしっ!!」
「同感だな。オレもてっぺんとることを諦めたわけじゃねぇ。そもそも、聖組なんてもんに入った覚えもねぇしな。オレはオレで好きにやらせてもらうぜ」
姫川はそう言って男鹿達に背を向けて神社から出て行こうとする。
「待てこら姫川っ!! てめぇ勝手言ってんじゃねーぞ!! おいっ!!」
神崎は怒鳴るが、姫川の歩は止まらない。
「どーしたいんだおまえは…」
陣野は呆れて言う。
「姫川先輩、絶対一人にはならないでくださいよ」
古市の忠告に一度立ち止まった姫川は肩越しに一瞥し、
「知るか」
冷たく言い返して鳥居をくぐった。
「お゛ぉいっ!! 待てっつってんだろこのフランスパン!!」
「アイダブ」
ベル坊は慰めるように神崎の肩を叩く。
「もうほっとけよ、あんな勝手な奴」
「因幡ちゃんもへそ曲げないで」
因幡は頬を膨らませ、腕を組んでそっぽを向いた。
気持ちがバラバラだ。
そこで花澤は提案を出す。
「そーだっ!! 神崎センパイ!! ジャンケンっス!! こーなったらジャンケンで大将決めましょうっ!! オニ公平っスよ!!」
「あぁ!?」
「ジャンケン…?」と大森。
「ってあのなぁ…」と飛鳥。
「いいんじゃなーい」と下川。
馬鹿馬鹿しいが、公平に決めるにはそれしかなさそうだ。
「最初はグーっスよ!?」
「マジかよ」
円になって集まり、花澤は掛け声をかける。
「最初はグー。ジャーンケーンポン」
勝負は一発で決まった。
ベル坊がグーで、他は全員パーを出していたからだ。
「というわけで、ウチのボウズが大統領に決まりました。夜露死苦」
“えらい! えっへん!!”とタスキがベル坊の代わりに男鹿にかけられる。
(まさかの一人勝ち)
神崎はまさかの結果に言葉も出ず、その場に膝をついた。
夏目と因幡はすぐにフォローに入るが、こちらもどんな言葉をかけていいのかわからない。
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