61:魔窟が復活しました。
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「おお…」
ひとりで裏門から入った因幡は新校舎を見上げ、初めて石矢魔高校に来た時のことを思い出す。
破壊される前は春から夏にかけて登校していたが、懐かしさがこみ上げてくる。
「久々だな…。誰が直したんだろ…」
姫川かな、と推測しながら校舎に入ろうとしたところで、
「!」
目に飛び込んできたものに、足を止めた。
校舎裏の地面には、真田兄弟、阿部、その他、同じく聖石矢魔学園で日々を暮した石矢魔生が転がされていた。
それを冷たい目で見下ろすのは、他の学校で暮らしていた石矢魔生達だ。
片手には得物を持ち、つい先程までいたぶっていたのか、金属バットや角材には血が付着していた。
因幡がやってくると、意識のある真田兄弟と、奇襲をかけた石矢魔生がそちらに振り返る。
「因幡…」
「…仲良く、久しぶりぃってわけには…いかねーよな」
目つきを鋭くさせる因幡に、立っている石矢魔生は怯むことなく下品な笑みを浮かべた。
「よう、因幡…」
「相変わらず、神崎達のカバンザメかよ」
「コバンザメだ。ていうか、誰がコバンザメだよ。オレはオレで好きなとこにつるんでるだけだ。調子に乗って聖組に手ぇ出しやがって…」
「聖組に手を出すのは当然だろ。かつては石矢魔最強と謳われた、東邦神姫、冷酷兎、そしてアバレオーガ…。もうてめーらは時代遅れなんだよ。だから、オレ達が新しく塗り替えてやるんだ。仲良しこよしの生ぬるい学生生活送ったてめーらと、てめーらをブチのめすために力をつけたオレ達との格の差がどれほど開いたか教えてやる。これは、てめーらに対してのほんの見せしめだ」
宣戦布告を言ってのけた石矢魔生が足下にいる真田弟の背中を踏みつけた。
「ぐ…っ」
呻く真田弟に構わず、敵対心を見せる石矢魔生は「ぎゃはは」と声を立てて嘲笑った。
「…どけろよ、その臭ぇ足」
「あ?「どけてください」だろ。誰が臭い足…」
ゴッ!!
「…っ!!」
一瞬にして間合いに入り、顔面に膝蹴りを食らわされた石矢魔生はその場に仰向けに倒れ、ぴくりとも動かない。
顔面の膝の痕を見た石矢魔生達は驚きを隠せず、思わずたじろいだ。
「全員まとめてかかってこいよ。格の差ってのを、教えてくれるんだろ?」
嘲笑する因幡だが、その瞳には怒りを纏わせていた。
数分後、今度は嘲笑っていた石矢魔生が地面に転がされていた。
それだけでは怒りは収まらず、引きずって移動させ、「バカです。」と人文字をつくる。
それでようやくすっきりした。
「よし」
(((((悪魔…)))))
気絶しきれずとも動けない石矢魔生は同時に思った。
「…っ、因幡…」
「立てるか?」
倒れた真田兄弟に尋ね、手を貸して起こしてやる。
他の聖組の石矢魔生もだ。
とても登校できる状態ではない。
動ける者は動けない者に肩を貸し、因幡は裏門の前まで真田達を見送った。
彼らの帰路が心配だが、すでに登校している神崎達を気に掛ける。
「…ふう…」
(…このくらいで疲れるとは…。やっぱり、変だぞ、ここ最近のオレ…。あいつらが本当に力をつけたからか…、それとも、オレが弱く……)
考えながら校舎裏から中庭に出ようとすると、
「!?」
後ろの気配に気づいた。
「ハニ―――!♪」
「は!?」
振り返る前に後ろから抱きつかれてしまう。
「な、なご…?」
「イエス! あなただけのダーリン、なごちゃんです」
相変わらずうんざりするほどのウザさだ。
因幡は抱きついたまま離れようとしないので、後ろに飛んで壁にぶつける。
「ふぐっ;」
離れた因幡はすぐに背を向けないようになごりと向かい合わせになる。
「どっから湧いて出やがったんだ。なんでてめーがここにいるんだよ」
その目は冷たい。
なごりは強打した背中を擦りながら答えた。
「なんでって…。石矢魔生徒がここにいちゃいけないのかい?;」
「石矢魔生徒?」
「じゃ~ん。よく見てよく見て」
「…!」
赤いツナギの上から学ランを羽織っていた。
石矢魔高校の学ランだ。
「入学した。オレも今日からピッカピカの石矢魔生! あ、これでも一応18歳だけど、学校行ってなかったから1年生からスタートなんだ。よろしく、先輩」
突然のことなので因幡は目眩を覚えた。
他の石矢魔生から狙われている身なのに、この男からもずっとちょっかいをかけられるのかと思うと頭痛がした。
とりあえず一言言えることがある。
「ダセェ」
「な…!!」
「ツナギの上に学ランとか…。近寄らないでください」
「ハニーは今日も、瞳も態度も言葉も極寒だねぇ」
「だが、それがいい!」と親指を立てるなごりにはもうなにもつっこまない。
「シーカト?」
なごりを放置してスタスタと歩き出したところで、
バガァン!!
「!!」
中庭から、校舎の一部が破壊されたのが見えた。
「なん…だ?」
「あー、男鹿氏辺りが、殺六縁起の誰かと当たったかなぁ…」
因幡の後ろからそれを見たなごりはのんびりとした口調で言った。
肩越しに振り返った因幡は「殺六縁起?」とその意味を問う。
「うん? ハニーは知らないか…。まあ、今後は知っといたほうがいい相手だよ」
なごりは殺六縁起について教えた。
意味ありげに笑みを含めながら。
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