61:魔窟が復活しました。
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なごりは玉座を見上げ、一礼する。
「頼み事聞いてくれてありがとう。これから行くから」
「シロトに関わることだ。そのためなら容易い。…しかし、貴様もまた妙なことを頼んできたものだな」
「必要なことだから」
「そう言ってのけ、なんの進展もないのなら…、わかっておろうな?」
低い声とともに幕越しから伝わる殺気を肌で感じ取り、なごりは口端をつり上げる。
「そうピリピリしなさんなって。オレが本気で作戦立ててしくじったことがあったか?」
「……フン…」
ジジが鼻を鳴らしたあと、玉座の扉が開かれ、ジジ直属の兵士―――“バッドパーツ”のひとりであるフロリダがトレーに豪華な食事を載せて運んできた。
「馳走の時間でございます」
「うむ」
ジジが頷くと、フロリダはなごりを一瞥し、その横を通過して玉座の階段を上がった。
フロリダが幕を少しだけめくり、食事を渡す。なごりは中を見ようとするが、フロリダの背中が邪魔で確認できない。
だが、トレーを受け取る際、人間の指が見えた。
「失礼いたします」
フロリダは一礼し、玉座の階段を降りて真っ直ぐに扉へと向かい、やはり意味ありげになごりを一瞥して玉座の間から出て行った。
「へぇ。アンタでも、食事とかするのか」
「どの生物にも、馳走は必要だ。いくら我とて、例外ではない」
幕越しからナイフとフォークの音がカチャカチャと聞こえた。
ちゃんと咀嚼して食べているようだ。
そこでなごりはふと思った疑問をぶつけてみる。
「……うんこもすんの?」
食事中の質問とは思えないが、ジジは腹ではなく声を立てて笑った。
「はははっ。そんな下卑た質問をされたのは初めてだ」
だが、排便の質問には答えない。
「あともうひとつ」
なごりは人差し指を立て、ジジは「申せ」と許可する。
「“バッドパーツ”について。あいつら、卯月の血も混じってないただの悪魔だろ? オレ、あいつらとあまり関わりねーから…」
「元は荒くれ者どもだ。その凶暴さゆえ、追放されたらしい。だが、もったいないほど強い。情をかけてやれば懐かせるのは容易かったぞ。そして、我の力も少し与えてやったまで…」
まるでペットのような言い方だ。
「なるほど…。今では従順な手下。アンタのお守りも完璧ってわけだな…。許可しない者だけが近づくと、そこにいる細目の兄ちゃんとギョロ目の兄ちゃんに殺されるってわけか」
「「「!!」」」
気付かれていないとでも思っていたのか、玉座の後ろに潜んでいたライラックとダッチが動揺する。
「おい、気配ちゃんと隠してたよな?」
「もちろん。…まさか気付かれるとは…」
「気を落とさないでくれよ。オレは異常なほど匂いに敏感だから…。アンタ達のせいじゃない」
「「……………」」
その慰めが癇に障ったのかダッチは指の骨を鳴らすが、ライラックはその肩をつかんで止める。
「じゃあ、遅れちまうかもしれねーから行ってくる」
なごりは背を向け、玉座の扉へと向かう。
「まったく、妙な男だ…」
ジジの笑みを含んだ呟きを背中で聞き、なごりは目の前の扉を両手で押し開けた。
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