60:あけましておめでとうございます。
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「食事だ」
見張りによって、フユマ達の部屋にトレーに載せられた食事が運ばれてきた。
囚われの人間に与えるものとは思えない豪華な料理だ。
屋敷で食べていた時と変わらない。
そこまで邪険にされているわけではないようだ。
「…おい?」
ユキの部屋に食事を運んだ見張りが、ユキの様子に怪訝な表情を浮かべる。
半日以上、寝るわけでもないのにベッドから動こうとしない。
昼食を運んできた時と同じ体勢なので、不気味に感じた。
「…何か隠しているのか!?」
疑念に突き動かされた見張りはユキに近づき、毛布を取り上げた。
「!?」
現れたのは、右手の甲に形成された、小さな氷の鉤爪だ。
「これくらいで十分か」
ベッと舌を出したユキは、それを自分の左手首に突き刺し、
「っ!!」
自分の血で赤い霜柱を作り出し、出現した衝撃で左手首の手錠を壊した。
「な…っ!」
驚いてたじろぐ見張りだったが、ユキは左手首から突き出ている霜柱を見張りの右の太ももに突き立てた。
「ぎゃあ!!」
「悪いけど、通してもらうよ…!!」
痛みに脂汗を浮かべていたが、その口元はほくそ笑んでいた。
「なにが起きた!?」
「あの失敗作…!!」
他の見張り達が来る前に開かれた鉄格子から抜け出し、対峙する。
「ユキ!?」
「てめーなにやってんだ!? つか、どうやって…」
鮫島とフユマが鉄格子をつかみ、脱走したユキに呼びかける。
「時間をかけて、ゆっくりと内部で魔力を溜めて、徐々に形成したんだ。今にも疲れて倒れそうだけど…。鮫島…、フユマ…。ボク…、なごちゃんのとこに行くよ…」
「バカ言うな!! てめー、自分の立場わかってんのか!? 自分の処分があくまで保留だってこと忘れてんじゃ…っ、うおっ!」
言いかけた時、ユキに蹴り飛ばされた数人の見張りがフユマの鉄格子にぶつかった。
「だって! もしここから出なかったら…、ボク、もう2度と、なごちゃんに会えない気がする…! ずっと…、ずっと胸騒ぎがやまないんだ…!」
ユキは苦しげに自分の胸の中心をつかむ。
日に日に募る不安に、ユキは耐え切れなかった。
なごりと出会い、なごりの口から真意を聞かなければ押し潰されそうなのだ。
「ボクは行くよ」
「ユキ!!!」
フユマは怒鳴り、阻止しようと鉄格子を殴りつけたがビクともしない。
「ユキィ!!」
ユキはフユマの叫びを振り切り、出入口のドアを目指して直進したが、ドアノブをつかむ前にドアが開かれた。
「っ!」
踏み止まることもできず、現れた人物の胸にあたってしまい、尻餅をつきそうになったところで手首をつかまれて支えられる。
「…!! なごちゃん…!」
「なごり…!!」
「ただいま」
現れたなごりは、ユキに優しく笑いかける。
「なごちゃ……」
ズンッ!
瞬間、なごりはユキのみぞおちにコブシを叩きこんだ。
「逃げてもらっちゃ、困るんだよ」
「な……」
ユキはその衝撃に耐えきれず、気を失ってしまう。
「なごり…?」
止めるにしては手荒な手段だ。
フユマは我が目を疑うようになごりを凝視した。
なごりは気絶させたユキを抱え、部屋へと連れ戻し、ベッドへと寝かせる。
「…オレに免じて、ここで起こったことはなかったことにしてくれ。外の奴らには他言無用だ。めんどくせぇことは嫌いだからな」
「は…、はい…っ」
最初にユキにやられた見張りは、脅すように向けられた言葉と赤い瞳に怯み、逃げるように檻を出ていく。
「……………」
なごりは自分のマフラーをユキの、ケガを負った左手首に巻き付けて止血し、その額にキスをしてから右手を当てる。
右手が離れると、ユキの額には、氷の結晶が埋め込まれていた。
2度と魔力が使われないように。
ユキの部屋を出たなごりは、鮫島とフユマに冷たい眼差しを向ける。
「親父、鮫島、2人にも、オレの能力を受けてもらう。やわな拘束のせいで脱走できないようにな…」
「……おまえ、何考えてんだ…?」
フユマの問いに、なごりは、フ、と笑う。
「親父達に…、新しい世界を見てほしいんだ」
鉄格子の隙間から手を伸ばしたなごりは、フユマの頭に触れ、能力を発動させた。
“ホワイトタイム(眠り封す時間)”
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