60:あけましておめでとうございます。
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賽銭を入れ、鐘を鳴らして手を2回叩く。
「新年、あけまして…」
「「「「「おめでとうございまーす!!」」」」」
因幡、神崎、夏目、城山の4人は一斉に挨拶する。
「今年も喧嘩一筋! たくさん転がす!」
「ヨーグルッチ! ジャマする奴は殺す!」
「面白いことが盛りだくさん」
「兄弟たちが今年も元気で過ごせますように」
(善良が1人…)
その前の3人は不穏だ。
「おしるこ!」
「おしるこ!」
参拝が終わるなり、神崎と因幡が子どものように邦枝に要求する。
「わかったからちゃんと並びなさい」
「甘酒もあるよー」
おしるこを手に入れ、因幡、神崎、夏目、城山は納札所の傍で立ち食いしていた。
はふはふとおしるこの餅を食べ、因幡達は先程男鹿達が来たことを邦枝から聞く。
「そっか。男鹿達とはすれ違いか」
新年の挨拶はしておきたかっただけのことなので肩を落とすほどではない。
また学校で会えるだろう。
「石矢魔の校舎復活の話はオレも聞いてる」
神崎はそう言って息を吹きかけながら餅を食べる。
「素直に喜んでいいのかわからないよねー」
「石矢魔だからな。不穏は避けられないだろう」
「また悪魔野学園みたいに乗っ取られてなければいいけどな。…せっかく、同じクラスだったのに…。まあ、またそっちに顔出すけどな」
因幡は2年なので、3年校舎に移動しなければ神崎達とは会えない。
面倒だが、また石矢魔に通っていた時のように過ごそうと心に決める。
だが、因幡は忘れていた。
それを思い出させたのが邦枝の言葉だ。
「神崎達は絵馬は書かないの?」
「絵馬?」
神崎が不思議そうな顔をしたので邦枝は目眩を覚え、肩を落とした。
「あなた達ねぇ…、3年なんだから今年で卒業でしょ? 絵馬に卒業祈願とか合格祈願とか書かないの? もしかして、さっきの参拝も、まったく別のこと……願ってそうね…」
卒業、と聞いて因幡は「あ…」と思い出す。
(そっか…。こいつら…、今年で卒業…するんだ…)
つまり、石矢魔校舎が復活したとしても神崎達の教室に通えるのは、残り、2・3ヶ月限りだ。
神崎はもうすぐで卒業する実感がないのか、絵馬を書くことを渋っている。
「面倒くせぇな」と。
「そういえばそうだよね。この先のこと、うまく決まってないけど」
「だが、確かに祈願は大事だな。せっかく神社に来たからには書きましょう! 神崎さん!」
「……いくらだよ?」
仕方なく絵馬を書くことにした神崎に、邦枝は早速商売っ気を出して絵馬を持ってきた。
「これが500円で、これが1000円、これが2000円…」
「「「500円で」」」
こだわりはないので、神崎達は一番安い絵馬を購入した。
「…邦枝、オレにもくれ」
因幡も1000円札を邦枝に渡す。
「あなたも書くの?」
「オレの分と姫川の分。代わりにな」
「そういえば、姫ちゃんには声かけなかったの?」
「連絡したけど来なかった。…つか、あいつ、クリスマス以来連絡してもシカトしやがる。せっかく誘ってやろうとしたのに、あのぼっち! ぼっち! ぼっち!!」
思い出したら怒りが込み上がってきて、因幡は使い終わった割りばしを片手でへし折った。
「わー、怒ってるねー。どんだけ連絡したの;」
「神崎は? なにか連絡来てねーの?」
「……来てるわけねーだろ…」
おしるこを飲み切る神崎だったが、その視線は宙を見つめていた。
気にはしている様子だ。
絵馬には“卒業できますように。”とそれぞれの文字で書かれ、絵馬掛けにかけられた。
因幡は自分のが見えないように姫川の絵馬の後ろに隠すように掛ける。
「叶ったら、ちゃんとお礼もするのよ」
邦枝は念を押すように教えながら、甘酒を配った。
「わかったから」
因幡が甘酒を受け取り、息を吹きかけ冷ましてから飲もうとした時だ。
「ハニ―――!! あけおめ―――!!」
「!!」
突然現れたなごりに後ろから抱きつかれ、甘酒が因幡の顔にかかってしまう。
「熱っ!! あっつ!! あっつ!!!」
「あ、ごめ」
ゴッ!
「ふぐッ!!」
謝る前に因幡にアゴを殴られ、因幡は急いで手水舎に走り、酌を手に取って自分の顔に水をかけて冷やした。
「またおまえかよ」
「懲りないな」
なごりの登場にさほど驚かず、神崎達はアゴを押さえてうずくまるなごりを見下ろす。
「バッドタイミング…」
「大丈夫?」
邦枝は顔に火傷を負ったんじゃないかと因幡を心配し、その背中に声をかけた。
すると、なごりはすっくと立ち上がり、邦枝に駆け寄った。
「レベル高い巫女キタコレ―――!! ちょっと一緒に写真撮っても…」
「煩悩退散っっ!!!」
スマホのカメラを構えたなごりのあまりのウザさに、因幡は酌で水をすくって勢いよくかけた。
「冷たい!!」
「またてめえは懲りもせずにオレの前に現れやがって!! 他に友達いねえのかよ!!」
「…。いませ――ん。ハニーがいるからいりませ――ん!」
舌をベッと出して挑発してくるなごり。
因幡は一瞬見えたなごりの表情が気になったが、挑発されたからには喧嘩だとばかりにコブシを鳴らす。
「ムカつくから転がす」
「だから境内でケンカはやめてってば!」
邦枝がストップをかけた時だ。
「年明けでも騒がしい奴らだな…」
「どこへ…行っても…な」
「「「「「!!」」」」」
聞き覚えのある声にはっと振り返ると、稲荷、伏見、豊川、寿、明智の5人―――黒狐がそこにいた。
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