60:あけましておめでとうございます。
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こちらも無事とは言い難いが、新年を迎えていた。
「あけましておめでとうございます、フユマ様」
「あけおめー。……って、何が悲しくてこのオレ様が寒い檻の中で新年迎えなきゃなんねーんだ!!」
フユマは目の前の鉄格子を蹴り、鉄格子の先に立っている卯月家の見張りに「静かにしていろ!」と怒鳴られる。
「ツラが見れないのが大変残念です」
フユマの隣の部屋にいる鮫島はため息をついた。
目の前は毎日交代しながら立っている数人の見張りと、左右後ろは互いの顔も見合わせることもできないコンクリートの壁だ。
声は聞こえるものの、ヒマさえあればしりとりか古今東西などの言葉遊びしかできない。
部屋は広々としてベッドや個室のトイレとシャワー室はあるものの、手首には魔力を封じる手錠がかけられているので、魔言も次元転送も使えない。
「鮫島~、何か面白い話してよ」
鮫島の右隣の部屋にいるユキにリクエストされ、鮫島は顔をしかめる。
「では、フユマ様が昔ご自分で開発された、ユキとなごり様のあやし方の話を…」
「おおおい!!! 面白い話で全部オレ様の話題にするのはやめろおおおおお!!! おいコラ見張り!! こいつらを別々の部屋に移せよせめて!!!」
鉄格子をつかみながら訴えるフユマに、見張り達は呆れて宙を見つめる。
(((((騒がしい奴らだな…)))))
「……………」
関わりたくないのかこちらに振り返らない見張り達の様子を窺いながら、ユキはベッドに腰掛け、「ここ寒いねー」と呟きながら毛布を膝にかけて両手をつっこみ、手首の手錠を見張りから見えないようにする。
(そろそろ頃合いかな…)
*****
因幡は目の前の光景にうんざりしていた。
神社の鳥居の前で神崎達を待っていると、ガラの悪そうな男が5人に絡まれたからだ。
絡んだ理由は単純なもので、因幡は言葉も出ないほど落胆している。
「あけおめー」
「オレ達にお年玉をめぐんでちょーだい」
「親からたんまりもらってんだろ? 福岡さん何人いるんだよ」
「福沢さんな。福沢諭吉」
つっこむところはつっこむ。
「因幡、何やってんだよ」
そこで遅れた神崎、夏目、城山が一緒に石段をのぼってやってきた。
不良達はそちらに振り返り、ぎょっとする。
「な!? もしかして、東邦神姫の…!!」
「神崎一!?」
「ちょっと待て! 因幡って…」
「冷酷兎の…っっ」
冷や汗を浮かべた不良達がおそるおそる振り返ると、笑顔の因幡がそこにいた。
「てめーらが落とし玉になってろ」
ゴッ!!!
因幡は躊躇なく長い石段の上から一蹴りで不良達をまとめて落とした。
「オレは悲しい。年が明けても、オレの顔を知らない奴がいるとか…。しかも、さっきの、冬休みの間になまったのか、蹴りがイマイチだったし…」
鳥居の前でしゃがみこむ因幡。
「落ち込んでる…」
「ちょっと、ウチの神社でケンカしないの。バチが当たるわよ」
そこで声をかけたのは、巫女の姿で実家の神社の手伝いをしている邦枝だった。
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