59:サンタを手に入れるの誰でしょう。
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因幡達の試合が終わると、次に行われるのは準々決勝だ。
ベスト8が揃い、順番に行われるかと思いきや、ペットボトル一気飲みが原因で花澤が腹痛で倒れ、保健室に運ばれてしまった。
それでも棄権扱いはなく、後回しで済まされる。
準々決勝第1回戦は、出馬・邦枝ペアと在原・円ペアの対決だ。
体操着に着替えてリングに上がり、肩車して上に乗った相手のハチマキを取り合う『ラブラブ騎馬戦』。
最初は肩車に恥ずかしがっていた邦枝だったが、意地を見せて出馬の肩に乗り、一瞬で相手のハチマキを奪い取って勝利した。
第2試合は東条・七海ペアと西沢・米原ペアの対決だ。
スクリーンに出される2問のお題でデートのシミュレーションをして得点を競う『わくわくデート作戦』。
清く美しい聖石矢魔の生徒らしい行動をとれたペアに得点が入る。
採点するのは、佐渡原、田浦、木戸の聖石矢魔教師と、正体不明の審議のおじさんだ。
うまくシミュレーションできない東条だったが、七海の見事なフォローと女優並みの演技力でカバーして教師たちの心をわしづかみ、2問とも満点を獲得し、勝利を手にした。
続いての第3試合は、男鹿とヒルダペアと因幡となごりペアの対決だ。
“さあ、お待たせしました!! 続きましては第3試合!! 男鹿・ヒルダペア対因幡・卯月ペアはリングに上がってください!!”
呼ばれた男鹿達はリングに上がり、向かい合う。
腕を組む因幡と軽く睨み合った。
「男鹿、てめーとはあんまり闘りあったことねーよな」
「全然なくね?」
「あっただろが!!」
忘れかけられてショックを受けてしまう。
しかし、まともに喧嘩し合ったことがないのは事実だ。
石矢魔に転校してきたばかりの頃は、神崎の報復でけしかけた時もあったが、勝手にベル坊の親にされそうになった挙句、どちらもベル坊の電撃を受けてうやむやになってしまった。
「サンタは渡さん」
殺気を纏うヒルダに、なごりはたじたじになるが、
「あれれ、雰囲気違う…。だが、それがいい!! オレはギャップ好き!!」
すぐに開き直る。
「黙ってろ」
そのウザさに耐えられず因幡は背中を蹴った。
“火花を散らしているところで競技の説明をさせていただきましょう!! 第3試合はこちら…!!『白ヒゲ危機一発!!』”
リングに運ばれてきたのは、2つの大きなタルだ。
いくつもの縦線の穴が空けられたタルからは不細工なサンタの人形が顔だけ出している。
2つのタルはできるだけ距離を置かれ、よく見ると、サンタ帽子には“男鹿・ヒルダ”“因幡・卯月”と書き分けられている。
自分たちの名前が書かれたタルは傍らに置かれ、さらには何十本ものの短剣が入った緑のウエストバッグが4人に配られた。
首を傾げる因幡達に古奈が説明する。
“ルールは、簡単です!! 相手のタルにひたすら短剣を突き刺し、サンタ人形を飛ばしたカップルの勝ちとなります!! 防御も妨害もアリ!! 短剣と言っても、ゴム製なのでケガの心配はありません!!”
「なーるほどね」
なごりは呟きながらバッグから取り出した1本の短剣の先端をつまんで切れないことを確認する。
「クリスマスなのにサンタ飛ばすとか縁起でもねえな」と肩を落とすのは男鹿だ。
“しかし、勢いあまってタルを破壊すれば、破壊した側が失格となりますので気を付けてください!!”
「だそうだ。気を付けろ、男鹿。繊細に扱え」
「おまえが言うなよ」
「オレが攻めるから、てめーは守れ」
「ケーキ入刀みたいに一緒に刺さないの?」
「先にてめーの口にブッ刺すぞ」
“それでは第3試合…、スタートです!!”
開始の合図とともに因幡達が動き出す。
男鹿が来るかと思われたが、因幡に迫ったのはヒルダだ。
1本の短剣を取り出し、顔目掛けて突き出してきた。
「っと!」
頭を傾けてかわしたが、
「!?」
右頬に赤い一線ができ、しばらくしてそこから血が流れた。
「ゴム製じゃ…?」
切れ味のよさに冷や汗を浮かべる。
ヒルダは冷笑を浮かべると、短剣を手に突きを繰り出してきた。
因幡はそれを目で追いながら避け続ける。
「うわっ、とっ、っ!」
攻撃を与える暇もなく後ろに追い込まれ、ガッ、と背後にあった自分のタルに短剣を突き刺された。
“ここでヒルダ選手が先手―――!! しかし、サンタは飛ばず!! 残念!! ハズレです!!”
「ハズレか」
無反応のサンタ人形に、ヒルダは残念そうに舌打ちし、因幡は取るに足らないと思われたようで額に青筋を浮かべ、バッグから短剣を取り出して足下に落として小石のように蹴った。
ズカッ!
短剣はヒルダの横を通過し、男鹿とヒルダのタルの穴に綺麗な斜線を描いて突き刺さった。
「「!」」
振り返ったヒルダと目撃した男鹿はその神業に驚きを隠せない。
“おお―――っと!! 負けてなるものかとここで因幡選手も反撃!! なんと短剣をキックして穴に入れてみせました!! こちらもハズレでしたが、サッカー部が喉から手が出るほど欲しくなるような特技だ―――!!”
「チッ。ハズレだ」
「貴様…」
「オレだってサンタ欲しいしな」
見せ所はここからだと言わんばかりに因幡は不敵に笑った。
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