58:クリスマスがやってきました。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
参加者のカップル全員、配られた紐で互いの片足首を結び合っていた。
ステージから古奈が説明する。
“さて皆さん、全員足は結べたでしょうか!? 紐が解けたら失格ですよー。一回戦の種目はそうっ!!『二人三脚デスマッチ』!!”
「デスマッチ?」
不穏な言葉に反応する邦枝だったが、古奈は「まあぶっちゃけただの徒競走なんですけど」と付け加える。
“デスマッチの名の通り、妨害ありのラフゲーム!! ただし、それに気をとられてると大抵遅れます!! コースは外周。現在の参加カップル数は104組!! このうち上位16組までが2回戦へと進むことが出来ます!! 恥ずかしがって肩を組まないと負けちゃいますよーっ”
妨害と聞いて「ほう」と反応する東条を七海は「やめてよ」とたしなめ、大森は「触んじゃないわよっ、顔がキモイのよ」と照れながら古市の肩を押し、神崎は花澤の両足首を紐で結んでレースに挑もうとしている。
「神崎先輩!! これアリっスか!?」
「2人で3本足だろーが」
ヒルダは「ベルちゃんベルちゃんでいきましょう!!」と掛け声を決めていたが、男鹿は「やだ」と即答した。
「転んだら転がすぞてめー」
「容赦がないわよ、ダーリン」
脅しをかける因幡にビビるなごり。
“それでは位置について…”
古奈が声をかけると、その場は静かになり、次の言葉を待つ。
“よーい、スタート!!!”
スタートの合図と同時に、いきなり出馬と邦枝ペアが勢いよく走り出した。
「なに…っ」
そのスタートダッシュに誰もが驚きを隠せない。
“おぉ―――っと、一組とびぬけたいいスタート!! あれは出馬前会長と邦枝嬢のペア…っ!! やはり武術をたしなむ者同士呼吸が合うのでしょうか!!”
ぶっちぎりで先頭を走っている。
“そして出だしでつまずいたカップルが一組!!”
スタート地点では、両足を縛られたまま転んでいる花澤と慌てている神崎の姿があった。
「なにやってんだこらっ」
“バカです!! そりゃそーです!! パンツ丸見えです!!”
すると、ステージの天井から6つのモニターが降りてきた。
そこに映し出されているのは、各コースの映像だ。
“さぁほぼすべてのカップルが外に出た!! ここからは送られてくる映像で実況させていただきますっ!!”
大袈裟ともいえる設備に、谷村とともに観戦している飛鳥が「すげーな」と呟いた。
その頃、男鹿とヒルダペアの先を走る因幡は舌を打っていた。
「くそっ、てめーもっと速く走れねえのかっ!!」
「ダーリンが速いって! せめてオレに合わせてほしいんだけどっ」
言い合っていると次々と抜かされていく。
いくら足が人並み以上に速い因幡でも、二人三脚となると相手に気を遣わなければならない。
それでなければ仲良く転んでしまうのが目に見えている。
(まずいな…。この調子だと運良くてギリギリじゃ…)
「ハニー!!」
「今はハニーって呼ぶんじゃ…っ」
突然声を張り上げたなごりに文句を言おうとしたが、その前に後方で漏れた魔力に気付く。
「ゼブル…ブラストォォオ―――ッッ!!!」
「「!!!」」
眩い稲妻が参加者の生徒を巻き込んでこちらに一直線に迫ってくる。
「やば…っ」
「結んでる方の足上げろっ!!」
因幡は怒鳴ると同時に結ばれている左足を上げた。
“フリージングポイズン”!!!
男鹿が放ったゼブルブラストに左足裏で蹴るように当てると、ゼブルブラストがその場に飛散し、消滅した。
「…!!」
なごりは我が目を疑うように大きく目を見開き、因幡とともにその場に転んだ。
「あっぶね―――っ!! 信っじらんねえっ!! なんてことすんだあいつっ!!」
尻餅をつきながらこちらにやってくる悪魔のような高笑いしている男鹿となぜか落ち込んでいるヒルダを睨みながら因幡は罵声を浴びせた。
だがこの状況を勝機と見て、「けど、チャンスだ! 立てコラ」となごりを引っ張り起こして競走を再開する。
なごりは茫然とした表情のまま、因幡とともに走り、2人は無事に16位以内にゴールした。
順位は4位。
そのあと、古市と大森ペアもゴールし、ビリかと思われた神崎と花澤ペアも、神崎が花澤をお姫様抱っこして男鹿が気絶させた生徒達の中を爆走して幸運にもギリギリでゴールした。
「ラッキーだったな…」
因幡は声をかけたが、全速力で走ってきたのだろう、神崎はしばらく立ち上がることもできないほど息を荒くしている。
「おまえ…、痩せろ…」
「何スかーっ!!」
しかし、傍から見ればいいコンビと言えるような光景だ。
「……とにかく、一回戦突破…と…」
複雑な思いが芽生え、誤魔化すように因幡が呟いてふと姫川を見ると、姫川はムスッと不機嫌な顔をしていた。
すると、姫川がこちらの視線に気づき、隠すようにそっぽを向く。
(思うところがある様子で)
「ダーリン、何ニヤニヤしてるの…?」
無事に一回戦を突破した因幡達だったが、このあとは、トーナメント戦が待ち構えていた。
.To be continued