58:クリスマスがやってきました。
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そして、その日はやってきた。終業式が終わった体育館にはほとんどの全校生徒が集っていた。
“さぁっ!! 皆さんお待たせしましたっ!! 終業式も終わり、明日から待ちに待った冬休み!! まったり観戦するもよし、気になるあの子と挑戦するもよし!! 聖石矢魔のイベント!! 恋人達の祭典…、『聖セントXmas』、間もなく開催ですっ!!”
バレー対決の司会役を務めていた古奈が、今回も司会役を務めるようだ。
マイクを片手に、体育館のステージから開催宣した。
終業式の時は静かにしていた生徒達も大いに盛り上がっている。
出場する大勢のカップルの中、注目を集める一角があった。
男鹿とヒルダ、出馬と邦枝、東条と七海、神崎と花澤、古市と大森、そして、因幡となごりが出場しているのだ。
プレゼントのため、意中の者を射止めるため、仲間外れが嫌なためなど、それぞれの目的のために。
因幡の要求通り、なごりはちゃんとスカートを履いてきている上に、黒髪をツンテールし、厚化粧もしている。
さすがに180センチの身長までは縮められないのか、悪目立ちしていた。
「あれ女…?」
「でけぇ…」
要求したのは因幡だが、早くも居た堪れなくなってしまう。
そんな気持ちも知らず、終業式が終わると同時にやってきたなごりは大きな欠伸をした。
「因幡…、そいつ…、どこかで…」
男鹿にも怪訝な目で見られる始末だ。
「…知り合いの卯月なごりだ…。一緒に参加してくれることになった…」
「大きな方ですね」
記憶喪失中の大人しいヒルダも困惑した様子で、自分より大きななごりを見上げた。
なごりはヘラヘラと笑って「なごりんでーす」とヒルダに手を振っている。
「リア充は気に入らないけど、この学校は美人ばっかでマジオレ得ー♪」
「本当に出るかよフツー」
神崎もドン引きしていたが、なごりは舌を出し、ピースを額につけてカワイイポーズをとって見せた。
「ムカつくからやめろ」
もう一度殴ってやろうかとコブシを握りしめると、「怖いわダーリン」と因幡の背中にそそくさと隠れるが、癇に障ったのは神崎だけでなく因幡の額にも青筋が浮かんでいた。
「ていうかその人…、ノーネーム事件の時の…」
化粧していることもあって男鹿は少し忘れているようだが、棄見下町で会っていることを覚えていた古市は声を潜めて言い当て、同じく因幡も苦渋に満ちた顔で声を潜めて言い返す。
「こっちにも色々あってな…。とりあえず危なくはないと思う…。いや、脳内は危ねーけどな」
「因幡」
その時、神崎が小さく手招きしたので呼ばれた因幡は近づく。
「なに?」
「仕方なくあいつと組んでるみたいだが、油断はすんじゃねーぞ。プレゼントはやらねーが、なんかあったら声かけろ。姫川も観客サイドで見張ってるみたいだしな」
指さされた方向を見ると、ギャラリーからこちらを見下ろしている姫川がいた。
わざと夏目達と離れているのだろう。
「父兄参観のお子さん気持ちだ…。…あんな状態になってんのに警戒する方も馬鹿馬鹿しくなりそうだけどな」
女装している上に、張り切っている様子だ。
「プレゼント何にしよーかなー、やっぱパソコンかなー」とウォーミングアップしながら歌うように呟いている。
「まあ…、オレなりには気を付けるつもりだし…。二葉ちゃんには悪いがプレゼントは渡す気はねーし…、おまえと姫川以外ベストカップルにさせる気はさらさらねーしな…っ!!」
(びっくりさせやがって…!! 一緒に出るからマジで花澤と付き合ってんじゃないかと思ったじゃねーかっ!!)
「最後だけスゲー小声で聞こえなかったが、燃えるに燃えてるな」
因幡には譲れないものがたくさんあった。
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