05:本日も空回り。
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昼過ぎ、因幡はいつもの近道を通って学校に向かっていた。
母親は3日徹夜の末熟睡したところで、他の家族は当の昔にそれぞれ出かけていた。
誰にも起こしてもらえず、昼まで爆睡していた因幡は学校をサボらず、学ランに着替えて向かったのだった。
授業をするためではなく、遊びに行くために。
「あー、完全に遅刻だ;」
近道といっても、それは彼女にしか通れないルートだ。
塀を飛び越え、住宅街の屋根を飛び移って行く。
当初はその住宅街だけで小さく騒がれていたが、今では公認されている。
「あ、おばさーん。屋根にTシャツ落ちてますよー」
立ち止まり、足下の白のTシャツを拾い、ちょうど新聞を取りに出ていた奥さまに声をかける。
屋根を見上げた奥さまは「まあ」と驚き、嬉しげな表情をした。
「昨日は風が強かったから…、そんなところにあったのね」
「ここに引っかけとくから」
「ありがとう、因幡君」
ベランダの欄干にそれを引っかけたあと、因幡は再び次の屋根に飛び移る。
感謝されて機嫌が良さそうだ。
ポケットからパイン味のポップキャンディーを取り出し、口に咥え、自作の鼻歌を歌った。
「因幡君、今から学校?」
「うっかり遅刻です」
「いってらっしゃい」
このルートの住人はほとんど因幡に対して親しげに挨拶をしてくれる。
(名前まで知られてるのはなぜだろう;)
おそらく、母の御近所付き合いかもしれない。
このルートを通らなければ30分のところを、わずか10分で石矢魔高校に着く。
石矢魔高校はもう目と鼻の先だ。
「あ」
到着前に、因幡は校門前にたかる他校の不良達を見つけ、手前で下りて電柱の陰に隠れてそれを窺った。
2日前に喧嘩を売られ、撃退した奴らだ。
あの時より明らかに数が多い。
「面倒だな…」
喧嘩は好きだが、相手にしていたら夕方になってしまう。
え、なにしに学校きたの、って誰に思われるわけでもないがそうなる。
「夕方なら相手してやってもいいが…、今はそういう気分じゃねーんだよ」
因幡は一度踵を返して走り、学校の裏に回って校庭から入ることにした。
(オレも寛大になったもんだな。前なら、学校なんて関係なく暴れてブッ転がしてたのに…。今日は雪が降るかもしれない)
ふふん、と鼻を鳴らし、校庭を走る。
ガシャンッ
「!」
窓ガラスが割れる音が聞こえ、ああまた喧嘩か、と呑気な気持ちで見上げてみると、赤いカーテンが落ちてきた。
どこかで見たことあるカーテン。
割れたのは、これから向かおうとしていた教室だ。
そこから飛び出してきたそれは因幡のすぐ目の前に落ちた。
「!!?」
ポロリとキャンディーが口から落ちる。
「か…、神崎―――!!?」
神崎が降ってきたことに仰天した因幡はその場であたふたしていたが、まずは救急車と携帯を取り出して電話する。
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