53:私達、付き合ってます。
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次の休み時間になると、因幡はまた席から立ち上がり、神崎の席へ向かった。
「かんざ…、あれ? 神崎は?」
神崎の席はいつの間にか空席になっていた。
「逃げるように帰ってったわよ」
目撃していた大森が教えてくれた。
「はあ!?」
まんまと逃げられてしまい、意味がわからない、と声を上げる因幡は、微かに聞こえた「ぷっ」という噴き出した音を聞き取り、キッと姫川を睨みつけた。
スマホをいじり続ける姫川の背中は小刻みに震えている。
笑いを堪えているようにしか見えない。
「…っ」
そのムカつく背中を蹴飛ばしてやろうかと思った時だ。
“桃”
自分の席の横にかけた、シューズケースに入れたシロトが声をかけてきた。
“安心しろ。…貴様が迷惑で逃げたのではない”
「あ?」
“あるじゃろ。奴にしかない、逃げる理由が…”
「…! まさか」
因幡はすぐさまカバンとシューズケースをつかみ、「おなか痛いんで早退しまーす」と教室に入ってきた早乙女にすれ違いざまに言って、そのまま廊下を走っていった。
それを見届けた姫川は、しばらくしてから席を立った。
*****
放課後、春樹が通う中学校で、春樹は手紙に指定された校舎裏へと来ていた。
一体どんなコが自分に手紙をくれたのだろうか、自分好みのカワイイ女の子ならいいな、と胸を躍らせながら、校舎裏へと続く曲がり角を曲がると、こちらに背を向けた女子の制服が目に入った。
時間もぴったりだ。
「あの…、手紙をくれたコ…だよな?」
相手は背を向けたまま、こくり、と頷く。
背後からわかる、背は女子からすれば平均並みで、セミロングの艶のある黒髪。
ニーハイとスカートの間の太ももの肌の色も白い。
「用って?」
「うん…」
相手はゆっくりとこちらに振り返った。
「!」
その顔は、黒いウサギの仮面が不気味に笑っていた。
思わずたじろぐ春樹。
同時に感じ取った、嫌な気配。
鮫島と初めて会った時よりも、酷い嫌悪感に襲われる。
(こいつ…)
「答えてほしいことがあるの」
相手はそう言って小首を傾げた。
春樹はおそるおそる尋ねる。
「…答えて…ほしいこと…?」
告白でないことはわかっていた。
正体不明の人物から放たれる威圧感に不安を駆り立てられ、その気になればいつでも逃げられるようにと、一歩たじろぐ。
相手はうつむいてクスクスと肩を震わせて笑い、再び顔を上げた。
「問題です。…ボクは、何者でしょう?」
「…?」
不可解な問いに、春樹は怪訝な表情を浮かべる。
「ヒント…」
そう言って、相手は仮面を頭上まで上げた。
「――――っ!!?」
それを見た春樹は言葉を失い、次の瞬間には、至近距離まで距離を詰められていた。
「時間切れだよ」
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