53:私達、付き合ってます。
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「神崎ぃ~」
休憩時間となり、因幡は席から立ち上がって神崎の席に行くと、ゲームを始めた神崎の机に腰掛け、そのアゴに指を添えて妖しい笑みを浮かべた。
「今夜、ヒマか? 朝まで帰したくねえんだけど」
ドカッ!!
即座に脳天にゲンコツを食らい、神崎の机の上に積まれた因幡。
「飛躍しすぎだバカヤロウッ! なに見て覚えてきたそんな言葉っ!!」
ついでに言うと完全に彼氏側のセリフだった。
「だって…、夏目が…、「付き合ってるならこれくらい言わないと」って…」
うつ伏せに積まれた因幡が唸るように言うと、神崎の背後に立つ夏目は「本当に言うと思わなかった」と笑っていた。
「てめぇも嬉々として参加してんじゃねえっ!!」
ゴチンッ!!
渾身の頭突きを食らい、因幡の上に積まれる夏目。
「ひどい神崎君…」
「あの…、神崎さん…」
「あ? どうした城山」
ゲームをプレイしながら城山に尋ねる神崎。
城山は神崎の傍らで言いにくそうに目を泳がせていたが、「その…」と意を決して口にする。
「彼女にお困りなら、因幡じゃなくても、オレに頼んでくだされば女装してでも…っ!!」
バカッ!!
椅子の上に立った神崎は、ゲーム画面を見ながら渾身の踵落としを食らわせた。
そのまま城山は因幡と夏目の上に積まれる。
「なんの話っスか?」
邦枝の席の傍らにいた花澤が気になって尋ねてきたが、神崎は「寒さで頭わいてるだけだ」と適当に答えてゲームに集中した。
「城ちゃん重い…」
「潰れる…っ」
大の男2人分の体重に苦しみながら因幡は姫川をチラ見するが、姫川はこちらを見向きもせず、片手でぽちぽちとスマホをいじっていた。
自分から吹っかけた喧嘩なだけに、それを無視する姫川に因幡は苛立ちを募らせる。
昼休みになると、因幡はまた神崎の席へと向かった。
「かーんざきっ」
因幡は片手に持った弁当包みを神崎の机に置いた。
ヨーグルッチを飲んでいた神崎は目の前に置かれたその弁当を見下ろし、キョトンとした顔をする。
「これ……」
「おまえの弁当だけど? どうせ、今日は購買のパンとかだろ」
しかも、3段重ねの弁当箱だ。
「作ってきたのか」
「当然だろ。…オレら付き合ってんだし」
周りのクラスメイトに聞こえないように控え気味に言う。
城山と夏目もその徹底ぶりに感心していた。
「へー、確かに付き合ってたら、彼氏のためにお弁当作ってくるコいるよねー。彼女らしく」
因幡は「おうよ」と腕を組んで自慢げに鼻を鳴らした。
「…家に帰る前に本屋に立ち寄って、彼氏彼女の基本が書かれたキャピキャピ系の女の子雑誌でちょっとは勉強したからな。……今はオレの血反吐でドログロのホラー雑誌になっちまったが…」
内容を思い出し、口端から血が伝った。
「もう学校休めおまえ」
抗争から帰ってきたあと、雑誌を読んで血反吐を吐いたうえに弁当まで作ってきたのだ。
どこからそんな根性が湧いてくるのか。
「オレのことは気にせず弁当食ってみてくれ」
手の甲で血を拭いながら言う因幡に、神崎は「弁当の中も血まみれじゃねえだろうな」と躊躇いつつも包みを取り去り、弁当の蓋を開けてみる。
1段目は、プチトマト、野菜炒め、アスパラベーコン、きんぴらなどの野菜詰め。
2段目は、可愛らしいデフォルメウサギとハートがケチャップで描かれたオムライス。
3段目は、ウサギリンゴ詰め。
「……………ゴフッ」
本格的な弁当の出来に、今度は神崎が耐えられなかった。
「神崎さ―――んっっ!!」
「コラ。どういう意味だおい!「あーん」してやるから口開けろ!」
因幡は神崎の胸倉をつかみ、オムライスをすくったスプーンを神崎の口元に向ける。
「因幡ちゃん、神崎君を殺す気?」
姫川は、ローストサンドを口にしながら、その光景をちらりと見た。
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