52:許嫁って何それ美味しいんですか?
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その頃、とある屋敷では、なごりがフユマの部屋へと急ぎ足で向かっていた。
扉の前に到達すると、その扉を勢いよく開ける。
「親父!! ユキにやられたって…」
目の前の光景に、なごりは言葉を止めた。
ベッドに寝かされたフユマに、鮫島がキスしていたからだ。
「「あ」」
部屋に入ってきたなごりに2人が気付いたとき、巻き戻しのように、なごりは後ろ歩きで扉まで戻り、一礼して扉を閉める。
「お邪魔しました」
「待てなごりっっ!!」
フユマが叫び、鮫島は次元転送でなごりの目前に先回りして強制的に部屋に連れ戻し、フユマは渋い顔で事情を説明した。
「クロトを失って、自己回復力が格段に落ちたから、鮫島から生命力を分けてもらっていただけだ」
「だからって、なにが悲しくて自分の父親とその召使のホモォ…なシーンを見なくちゃいけないんだよ。後生だから目を洗わせてくれ」
「そんなことよりだ…。ユキがどこに行ったか知らねえか?」
「……わからない。一昨日から見てないし…。親父、なにが…」
「見たとおりだ」
言い切る前にフユマは答える。
喉と体中には包帯が巻かれ、ユキが容赦なく、眠ったフユマを襲ったのが頭に浮かんだ。
フユマは宙を見つめながら、喉を擦る。
「文字通り、寝首を掻かれたってわけだ…。その一撃で起きて反撃をしようとしたのはいいが…」
フユマはユキに襲われたことを話す。
ユキに喉を浅く掻き切られた痛みで目を覚まし、眠気の中で反撃を試みたが、腹に一撃を食らい、自ら傷つけた右手で喉をつかまれ、そのままクロトを奪われ、ついでに屋敷を出るための鍵も奪われてしまった。
「教えた通り、クロトは…、シロトもそうだが、宿主より素質が上の契約者に受け継がれる。受け継ぐ対象が、クロトが男。シロトが女。それ以外は共通点が一緒だ」
「じゃあ、このまま22代目クロトがユキに…」
鮫島の言葉に、フユマは首を横に振る。
「22代目クロトが定着するのは、受け継がれて5日目を迎えた時だ。それまでになにもなければな…。…絶対定着させるな。受け継がれる代は同時進行だ。もしそのままユキが22代目に定着しちまえば、ユキの婚約者が桃ちゃんに移行することになる。ユキはそれを望んでないどころか、逆恨みに任せて桃ちゃんを殺すつもりだ。それに、定着してしまい、遅れておまえが23代目になれば、今度は桃ちゃんが誰かにシロトを継承させなくてはならない。だが、桃ちゃんより上の契約者(女)は、もうどこにもいないんだ。23代目のシロトがいなければ、その女が卯月から生まれるまで、桃ちゃんは老いることもなく眠り続けることになる」
「―――な…に!?」
初耳なのか、鮫島は大きく目を見開いた。
どういうわけか、クロト・シロトの継承のシステムは大昔からそうなっていた。
受け継がれるたびに進化していく卯月の契約者たち。
それに、なんの意味があるのか。
ただ、途絶えることは一族全体が許さなかった。
それに唯一逆らったのが、コハルなのだ。
「…親父、オレ…、ユキを迎えに…」
「おまえは留守番だ」
「は!? なんで…」
声を上げるなごりに、フユマは「おまえが出てくると、あいつは余計に出てこなくなる」と身を起こした。
「…オレ様と鮫島が行く。だから待ってろ。…あいつの行く先は大体見当がついてることだし…」
体を起こした拍子に傷口から痛みが全身を駆け巡り、顔をしかめて小さく呻く。
鮫島はすぐにベッドの傍らに立ち、フユマの体を支えた。
止める様子はない。
「それにな…、なごり…、ジジ様に言っちまったんだ…。なにかあれば、オレ様がユキを……」
「……………!!」
「なごり、絶対に…、おまえと桃ちゃんを婚約させてみせる…。過去の契約者ができなかったことを…。オレ様と、コハルちゃんができなかったことを…。ジジ様も望んでることだ…。オレ様は、その望みの先を知りたいし、父親として、それを祝ってやりたい。ま、その前に、あの男勝りな女をどう落とすか見物だけどな…」
その瞳には強い意志が宿っていた。
なにかにしがみつくような執念。
傍らでフユマを支える鮫島は、そんなフユマをずっと傍で見てきた。
そして、早くそれを終わらせてやりたいとも思い続けている。
「あ、そうだ、さっき監視で見たとこなんだけど、因幡桃、別の男と付き合いだしたよ?」
「「は!!?」」
突然の報告に、フユマは鮫島は衝撃を受けた。
そのショックで血反吐を吐き出すフユマ。
婚約者候補だというのに、なごりは平然としていた。
「えーと…」とスマホを操作し始め、監視用の画面を見せる。
「ほら」
そこには、
“オレを女にしてくれよ。ダーリン”
血反吐を吐く神崎の腕に絡み、ほぼ棒読みと真顔でそんなことを抜かしいてる因幡の姿があった。
「どういうことだ…?」と血反吐を吐くフユマ。
「どういうことだ…!!」と血涙を流す鮫島。
「どういうことでしょー?」と首を傾げるなごり。
.To be continued