52:許嫁って何それ美味しいんですか?
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久我山が、実は女性だと聞いて事情を知らない面々は露骨に驚いた。
「久我山家を継ぐのは代々男のみと決められていてね。だから私は男として育てられた。よくある話さ」
そんな久我山の話を聞いて男鹿は「わかるぜ…」と頷く。
「オレも男として育てられたからな」
「ダ」
「男だからな」
すかさず、古市のつっこみ。
「くれぐれも、このことは他言無用でおねがいします。万が一、学園の人間にバレては久我山様の地位に影響が出てしまいます」
「キミ達に話したのは、キミ達が学園の人間じゃないからだ」
SPの女子生徒に続き、久我山が言う。
「はぁ…。いやいや…、そんな急に言われましても…。女…」
古市の視線は自然と久我山の胸に移る。
平らには見えないが、ブレザーを脱いだことで小さな膨らみはあった。
視線に気づいた久我山は、別段気にする様子もなく薄笑みを浮かべ、自分の胸に手を当てる。
「胸か? もちろんサラシを巻いている。隠すほどたいそうなものはついてないがね」
すると、ヒルダは冷めた視線を古市に向けた。
それに気づいた古市は慌てて言い訳する。
「なっ…、なんスか!! 気になるでしょ、男として」
「どっかの誰かも同じようなことしてるよな」
「それ今持ち出すな」
わざとらしく言ってこちらを見る神崎に、因幡は顔を逸らして小さく返した。
「他にも肩パッドにシークレットシューズ、喋り方からくしゃみのしかたまで、男として振るまうため、あらゆる努力をしてきたよ」
(オレより徹底してやがる…。オレもシークレットシューズ履こうかな)
男と偽るために徹底した久我山に、同じく男と偽っている因幡は感心を覚えた。
「わかるぜ。オレも肩パッドかiPadかって言われたら肩パッド…、いやっ、iPadだよね!!」
「うるせーよ!」
ムリに話を合わせようとする男鹿に煩わしさを覚える古市。
「そんな私が唯一、女として生きられる方法。―――それが…、姫川!! キミと結婚することだっっ!!」
素知らぬふりをして背を向けていた姫川は、声を上げて指をさした久我山にビクッと肩を震わせ、それでも素知らぬふりを続けようと口笛を吹きだした。
構わず、というか容赦なく久我山は話を続ける。
「男として生きることは嫌いじゃない。むしろ気に入っている。だが私は気付いてしまったのだ。―――女として、キミに恋するこの気持ちに―――…」
久我山からは乙女チックオーラが放たれる。
どこの乙女より乙女。
「わかるぜ…。グフッ」
合わせようとした男鹿も、そのオーラに当てられて血反吐を吐き出した。
「無理するなっ!! 死ぬぞっっ」
「姫川、キミが私に女の悦びを教えてしまったんだ」
「「「ゴプッ」」」
男鹿、神崎、因幡が同時に血反吐を吐き出し、その場に倒れる。
聞き捨てならない発言に、古市は姫川に問い詰めた。
「女の悦びってなんスかっっ!? なんスかそのやらしい響きっ。姫川先輩一体なにしちゃったんスかっ!!?」
姫川は、
「ゴフッ」
こちらも血反吐を吐いていた。
ついでにサングラスも割れる。
「姫川先輩―――っっ!!!!」
姫川もその場に倒れてしまう。
「あぁっ、みんなしっかりっっ!! なんて破壊力だ…っ。今までで最強の敵じゃねーか!!」
次々と倒れる石矢魔最強陣。
ヒルダも油断ならないと顔つきが真剣になる。
「言霊使いか…」
「いや、ただのリアクションなんですけどね!」
「恋をすると女は美しくなるというが…、私は恋をして女になった…」
無自覚で追い打ちをかける久我山。
「もうやめてぇ―――っっ」
そこで、色々思い出した神崎は、むくりと立ち上がって口元の血を拭い、ズボンから金属バットを取り出した。
「どけ、古市」
矛先は姫川だ。
「神崎先輩っ!? 重傷人になにする気ですかっっ!!?」
「………釘もつけるべきだと思う」
因幡は倒れたまま小さく手を上げた。
助ける気は毛頭ない。
「「2人共――――っ!!!」」
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