51:地下へ参ります。
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「あ? なんで神崎と因幡妹が来てんだ?」
男鹿達も神崎と因幡の存在に気付く。
観念した神崎は、素直に因幡を指さして答えた。
「オレはあいつについてきただけだ。おまえらがコソコソと、面白そうなことしそうだったからな」
「今までついてきてたのか…」
久我山は、今までSPの目からも逃れていた2人に逆に感心していた。
すると古市は、素早い動きで因幡の目の前に移動し、その手を握りしめて目を輝かせた。
「あなたは!! 因幡先輩…の妹さん!! 桃ちゃんでしたね!?」
「ひ…、久しぶりぃ…」
(桃ちゃん言うなゴラァ)
女子の格好をしている時はそれで通していることを思いだした因幡は、できるだけ女キャラを作り、引き笑いだが古市に微笑んだ。
「なぜここに!?」
「兄に…、姫川さんが心配だから見に行ってあげてほしいと頼まれまして…。本人は用事で来られないから…、神崎さんと一緒に…。ていうか放しやが…、放してください」
いつまで握りしめてんだ、と因幡は自分と古市の両手ごと、ぶんぶん、と煩わしそうに振った。
「オレは「来んな」って、てめーの兄ちゃんに言ったんだけどなぁ?」
刺々しい姫川の言葉に「うっ」と唸る。
「あとで話があるから逃げるなよてめーら」
「「……………」」
ひぃっ、と因幡は姫川の迫力に戦慄した。
「せっかく心配してきてくださったのに…」
古市は、未だに水の滴るイケメン姫川に振り返り、「ぶっ」と噴き出した。
口元は笑っているが、目は激怒している。
「てめぇこら。誰がリーゼント燃やせっつったよ。見ろ。おかげでこんな髪型だ」
「姫川先輩…、いや…っ、あの…」
(イケ川になってる……)
思わず噴き出しそうになり、とっさに口元を手で押さえる。
「何こらえてんだっ。オレは絵を燃やせっつったんだよ!! 絵っ!! 髪じゃねーんだよ!! 紙だ!! ボケがっ。ライターももう濡れて使えねーじゃねーか!! ちっ…。もういい!! とりあえず持って帰んぞ!! 男鹿!!」
まくしたてたのち、舌打ちをした姫川は男鹿を指さして命令した。
「あ?」
「ボサッとしてねーでとっとと運べ!!」
「いや、あの、イケ川先輩、ムリっスよ」
「誰がイケ川だ、コラ」
睨まれた古市は、絵画を指さす。
「この大きさじゃ、扉から出せません」
「あぁ!?」
絵画に振り返った姫川は首を傾げ、入ってきた扉に振り返った。
扉の高さは2mと少し。
絵画をそこから出すのは無理難題だ。
そこで久我山の魂胆が見え、「久我山…、てめぇ」と久我山に顔を向けて睨む。
「そういうことだ、姫川。絵はキミのものだ。好きな所にもっていけばいい。持っていけるならね…」
腕を組み、不敵な笑みを浮かべる久我山に、姫川は引き笑いを浮かべる。
「……っ。つーか…、どーやって」
初めから、絵画を渡す気など毛頭なかったのだ。
その汚いやり方に、思わず感心してしまうほどだ。
「どうやって入れたんだよ、まず」
神崎は絵画と扉を交互に見ながら呟いた。
久我山は、フ、と笑う。
「この学園のてっぺんと言ったな…。姫川、この学園のてっぺんは、そう簡単じゃない」
それを聞いた姫川は真顔になり、久我山の話に耳を傾ける。
「あと少しで、私はこの学園の頂点に立てる。あと少しで、全てがこの手に納まる。その為にも、私にはこの絵が必要なんだ。そこでだ、姫川。もう一度、私と組まないか?」
「「―――!!」」
その誘いを聞いた因幡と神崎の顔色が変わる。
「はぁ?」
「この学園に戻ってこい。今度はゲームなんかじゃない。本物の、国を動かす力だ。キミとなら必ず、そこまでいける」
その場がしんと静まり返る。
その勧誘に乗ってしまえば、姫川は石矢魔を去ることになってしまう。
因幡は姫川と久我山を交互に見、落ち着かない心音を感じながら、姫川の名を呼ぼうとした。
その時、姫川は「はっ―――…」と嘲笑し、邪悪な笑みを浮かべて舌を出した。
「やだね。オレが興味あんのは石矢魔のてっぺんだけだ」
その返答に久我山は「なっ」と驚き、神崎は、姫川らしい答えに自然と口元を綻ばせる。
「邪魔したな」
「ばかなっ…」
久我山は、背を向けて扉に向かう姫川に声を上げる。
「キミはっ…、そんな不良高校の頂点が、国よりも価値があるとでも言うのかっ…!!」
「久我山…、この世には金じゃ買えねーもんがあるんだぜ」
サングラスをかけた姫川は肩越しに久我山に振り返り、薄笑みを浮かべたまま言った。
金では買えないものだからこそ、価値がある。
そのセリフに、男鹿と因幡は小さく笑った。
「行くぞ、てめーら」
「へーい」と男鹿。
「柄にもない…」と因幡。
「待てっ!! 絵は!? 絵はどうする!! ここまで来てあきらめるのか!? 姫川竜也ともあろう者が、それでいいのか!?」
必死に引き止めようとする久我山に、姫川が立ち止まり横目で見ると、久我山は不敵に笑って言葉を続ける。
「……私なら運び出せるぞ。どうだ? もう一勝負しないか?」
「もう興味ねーよ、そんなもん。なんか、おまえの話聞いたら急に冷めたわ。欲しけりゃくれてやる」
「…………っ」
「せいぜい、国盗りでもなんでも頑張りな」
冷たくそう言い放ち、姫川は再び背を向けて歩き出した。
「あ? 何言ってんだ。持って帰んぞ」
そこで男鹿がキョトンとした顔で言い出し、全員がそちらに顔を向ける。
「ベル坊の大事なもんだ。当然だよなー」
「アイ?」
男鹿は胸に抱いたベル坊に視線をおろし、目を合わせて言った。
「よ…、よし…、じゃあ勝負の内容を決めようか」
「あ? 何言ってんだ。もうオレ達のもんだ。どうしようが勝手だろ」
闘技場の戦いに勝ち、絵を返してもらう約束を、久我山の手を借りずにそのまま実行しようというのだ。
邪悪な笑みを浮かべる男鹿に、交換条件を出そうとした久我山は驚いた。
「姫川……さん? もいーよなっ…すよね!? いらねーならオレが貰って」
一応、この学園にいる間は姫川の舎弟という設定を貫くため、男鹿は絵画を指さし、言葉遣いに気を付けながら姫川に振る。
「……構わねーが、どうやって持って帰んだ?」
出入口は、先程入ってきたところしかない。
「決まってんじゃねーか」
男鹿は天井を見上げ、懐に手を入れた。
「おいおい、まさか…」
男鹿の意図を読んだ古市が言うと、男鹿は懐から取り出した、ミルク入りのスキットルを取り出し、口に含んだ。
「その、まさかだ」
手の甲で口元を拭った男鹿の顔面に、紋様が浮かび上がった。
そのまま、絵画を壁から外して背負い、コブシに雷を纏う。
「あ、離れた方がいいかも」
嫌な予感がした因幡は、神崎、姫川の袖を引っ張って男鹿と絵画から離れた。
“ゼブルブラスト”
ドゴォッ!!!
.To be continued