51:地下へ参ります。
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3人組に案内されるままに校舎を出てやってきたのは、校舎裏にある地下に続く階段だった。
「こっちだ」
アゴヒゲは男鹿達に声をかけてから階段を下りていく。
男鹿達もそれについていった。
もちろん、距離を置いて因幡と神崎もそれを追いかける。
階段は直線なので、慎重に間を取らなければならない。
下から聞こえてくる男鹿達の会話。
「まぁ、見てろ。交渉事はオレの十八番だ。昔なじみにもあいさつしとかねーとなんねーしな」
((昔なじみ…))
それを聞いて、因幡と神崎は坊主頭の言っていた「久我山」という名前を思い出す。
「…!」
先を歩く男鹿達が下まで到達して扉を開けたのか、階段の下からいきなり群衆の喚声のようなものが聞こえ、思わず足を止めた。
扉が閉まり、再び静寂になったので、因幡と神崎は顔を合わせてから一気に階段を駆け下りる。
到達したのはやはり扉の前で、因幡はおそるおそる扉を開けた。
「!!」
扉の隙間から再び聞こえる耳をつんざくような喚声。
ゲームセンターに入った時の騒音に似ていた。
どうやら扉と壁が防音になっているようだ。
鍵がかけられていなかったことにホッとし、中の様子を窺う。
神崎も因幡の頭上からそれを見た。
そこには、大きな空間の中、スタンドを埋め尽くす大観衆と、その中心に設置されたフェンスの箱型リングがあった。
そこで殴り合っている2人の男性。
それだけでここがどういう場所なのかは一目瞭然だ。
「地下…闘技場…!」
学院の地下に、と因幡は驚きを隠せなかった。
姫川達は扉からさほど移動しておらず、因幡と神崎は、喚声の中、その会話を聞き取ろうと耳を傾ける。
坊主頭の生徒が姫川達にここがどういうところなのか教えているところだった。
「サンマルクスFCアンダーグラウンド。元々、有事の際に使う地下シェルターを改造してつくった。久我山さんが主催する、地下闘技場だ。参加は自由。飛び入りもアリ。まぁ、ほとんどの奴は賭けと血とバトルが見たいだけのジャンキーばかりだが…。今、闘ってるのは、元K1ファイターとケンカ屋だな」
そこまで言うと、男鹿を見て挑発的に言葉を続ける。
「どうだ、小僧。なんならあそこでオレと一戦やってみるか? …まぁ、五体満足で終わる保証はねーけどな。ククッ」
「わかったか、姫川。今やおまえと久我山さんとの間には、天と地ほどの差があんだ。てめーがつるんでた頃とはちげーんだよ」
アゴヒゲの生徒が姫川にそう言った時だ。
「やめろ。そんなつまらん自慢のために呼びつけたわけじゃない」
背後から聞こえた声に、姫川達はそちらに振り返った。
そこには、後ろに大柄の使用人2人をつけた、端正な顔立ちをした、長く癖のある金髪の生徒がいた。
「久しぶりだな、姫川…」
「久我山…」
姫川としては、懐かしい顔なじみとの久しぶりの対面だった。
(なんだあのイケメン!!)
(どういう関係だ!? 本当にただの昔馴染みか!?)
突然現れた、ノットリーゼント姫川張りのイケメンに落ち着きがない神崎と因幡。
(あれ? でもあいつどこかで…)
だが因幡は、久我山と初めて会った気がしなかった。
「なにをしに来た? 今さら。こんな学校には興味がないんじゃなかったのか?」
冷たく言い放つ久我山に、姫川は小さく笑って答える。
「別に…。今でも興味ねーよ、こんなクソ学校。ただ後輩に頼まれちまったもんでな。『悪魔の肖像』を取り返しに来た」
ここにきて、男鹿達の目的が発覚する。
悪魔、と聞いて因幡の顔つきも変わった。
ただの肖像というわけではなさそうだ。
久我山の視線が男鹿達に移る。
「後輩…? つまりそちらは、キミが通う石矢魔の…」
「舎弟ーっス。アホアホ石矢魔でーす。もんくあんのか、あん?」
喧嘩腰の男鹿とベル坊の態度に、久我山はため息をついた。
「―――…。あきれたな。あの絵のことを、こんな程度の低そうな者にまで喋ったのか」
「あ? なんだこら。こっち見て喋れや」
声を荒げる男鹿に構わず、久我山は言葉を続ける。
「とり返しに来た―――…か。なるほど…、私は悪者か…。断っておくが、あれは2人で手に入れた物だ。もともと奪ったつもりもない。―――が、まぁ、それもおもしろい。いいだろう。ついてこい」
そう言って階段を上がり、肩越しに姫川達を見下ろした。
「ここにはここの流儀がある。欲しい物があるのなら、闘って、勝つことだ」
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