50:金持ち学園に潜入です。
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神崎の呪符が使い物にならなくなってしまい、因幡と神崎は校舎裏に身を潜めていた。
どちらも私服を着ているため、学院関係者に見つかればすぐに不審者として追い回されてしまうだろう。
だからといって正門に戻りたくても戻れない。
「いきなり行き詰ってんですけど。おまえが足を挟みさえしなければ…」
「ぐしゃぐしゃにしたのはてめーだろがっ」
言い合っても仕方なく、2人はため息をついた。
「今、HRの時間だぞ。姫川達はすでに到着してる頃だろうし…。オレ達だけここに取り残されたら笑い話にもなんねーよ」
「それだけは絶対ヤなオチだな…」
茫然としていた時だ。
男女の話し声が聞こえ、2人ははっと顔を見合わせてから、茂みに隠れた。
やってきたのはカップルのようだ。
ひとりは眼鏡をかけた短い金髪の男子生徒、もうひとりはヘアピンで前髪を留めた黒髪ショートヘアーの女子生徒だ。
髪を染めたり、ブレザーの前ボタンを開けたり、上流階級学校にしては校則が緩い。
「いいのー? 勝手に抜け出して…」
「気にしない気にしない」
HRの時間だというのに、登校早々、2人で抜け出したようだ。
女子生徒はクスクスと笑いながら「お父様に叱られちゃーう」とブリっ子混じりに言った。
因幡と神崎にとっては好印象最悪だ。
「ねぇ、今度の休日、一緒にグアム行こうよ。ボクのプライベートビーチで楽しんでほしいな。また新しいクルーザー買ったんだぁ」
「んー…。それこの前行ったしー、今度はスウェーデンに行かない? お父様がまた新しい別荘を建てられたそうで…」
世界観が違う。
因幡と神崎は豪勢な休日にショックを受けていた。
同時に、怒りも湧いてくる。
「神崎…、オレ一度アレやってみたかったんだけど…」
「奇遇だな。オレも考えてたとこだ」
2人のこめかみには、今でも、やっぱりオーストラリアだのニュージーランドだの並び立てている、ブルジョアに対する怒りの青筋が立っていた。
「え」
「あ」
茂みを飛び出した2人に気付く男女の生徒。
声を上げさせる隙も与えず、神崎は男子生徒の、因幡は女子生徒の頭上目掛け右脚を振り上げた。
“ダブル踵落とし”っっ!!!
ゴッ!!!
振り下ろされた踵が生徒の頭上に直撃し、哀れ、食らった生徒は気を失ってその場に倒れた。
真面目にHRの時間に参加していれば、こんな目に合わずに済んだだろう。
誰かに見られる前に、神崎と因幡はせっせと、生徒2人を茂みに引きずり込んだ。
「ちょうどいいや。これで間に合わせようぜ」
言うやいなや、因幡は女子生徒の制服を脱がした。
神崎はそれを見ないように背を向けながら、同じく男子生徒の身ぐるみを剥いでいく。
一応、目覚めたあと騒ぎにされても困るので、ガムテープを口元に貼り付けたあと、木に縛っておいた。
姫川達のあとを尾行しようとしていたはずが、本人たちが思っている以上に非道なことをやらかしている。
「おい待て。自然とこっち選ぶな。てめーはどう考えてもそっちだろ」
男子生徒の制服に手を伸ばした因幡の手を軽く叩き落とし、神崎は男子生徒の制服を奪い取って着替え始めた。
「えー」
因幡は女子生徒の制服を着るのを嫌がったが、それしか残ってないのだ。
「学生証見せてもバレねーよーに、ちゃんと本人になりきっとけよ?」
「わっ」
神崎はそう言うと、因幡のオールバックをぐしゃぐしゃにして下ろさせた。
「クソ…」
舌を打ちながらも、因幡は渋々女子生徒の制服を着る。
普段着ている石矢魔の制服は黒の学ランなので、白のブレザーは新鮮だった。
「ネクタイってどう締めるんだっけ?」
「貸せ」
ネクタイに不慣れな神崎に、因幡は呆れた顔をしてネクタイを結んであげた。
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